密かに育つ。
「自分のペースでいいんだよ。ゆっくり、ゆっくり、前に進んでいこう。」
あなたがそう言ってくれたとき、すごくすごくうれしかったの。
だけど嘘だったのね。あなたを信じたのに・・・
しょうがないことなのよ。人は自分のことに精一杯で、遅れているもののことなんて知らんぷりだから。
表向きの表情も、その表情の裏側も、もう知ってるけど。
きっとあなたは言葉をまちがえた。あなたは私のことを見て、考えて、言葉をくれた。
うれしい、けど、ごめんなさい。
私はその言葉を素直に受け取れるほど寛容ではなかった。
「所詮あなたも私に雨を降らすのね。」
そう思ってしまった。
自分のペースでどれだけ頑張っても、周りにはついていけなくて。
だから、八つ当たりなんだ。
あなたを理由に、私は自身を少しでも正当化しようとしたの。
ずるいの。
卑怯なの。
・・・だからお願い、私に笑顔を向けないで。
私はまた、あなたを頼ってしまう。
でもあなたは、こんな私がいいと言う。
私の八つ当たりに、ごめんなさい。と言ってくれる。
そして、
涙とともに私を抱きしめてくれる。
ほらね、
私は静かにあなたに勇気をもらってしまう。
また、前に進もうって思ってしまうの。
いつの日かあなたに尋ねた、
「私の長所は・・・何かな・・・?」
言ってしまってから後悔したのだけど、
それにあなたは頬を仄かに染めながら答えてくれた。
「・・・つらいことがあっても、負けないで頑張るところ。」
不覚にも、あなたの答えを聞いて「愛しい」って思ってしまったじゃないか。
・・・気づいているのかしら、私の努力を認めてくれた人はあなたが初めてだってこと。
あのね、
私は、あなたがいつもそばにいてくれるのなら、
どこまでも躍進できる気がするんだ。
だから、また私がくじけたときには
抱きしめて、たくさんの勇気をちょうだいね。
密かに育つ/end*