残像
あの日の残像が――
消えてくれない
.
自分を庇って死んだ幼なじみ
あの事故から5年
時は過ぎ、少年はいつしか高校生になっていた
土砂降りの雨の中、交差点の真ん中で少年は一人何を思う
.
残像は言った
――過去を変えたくはないか?
.
記憶は駆け巡り、時は戻る
"俺"と"彼女"の物語
――"残像"より
土砂降りの中、傘もささずに交差点の真ん中に立ちすくむ、"俺"
「今日で丁度5年か……」
今日は、5年前に事故で死んだ幼なじみの命日
"彼女"は道路に飛び出してしまった俺の代わりにトラックに当たって死んだ
いや、俺が殺した
俺さえいなければ、彼女が死ぬことはなかった
今だってほら、視界の片隅にあの日の残像が
消えてくれない残像が揺らめいている
そんな残像が、口を開いた
――過去を変えたいとは思わないか
!?
――もう一度、彼女の笑顔を見ることができる
本当に、そんなことができたなら……
――できるさ。全ては貴方次第。さぁ、目を閉じて……
残像の言うがままに目を閉じた。
――――――
「……ってば、……ってば!!!」
「え……?」
「どうしたの? 大丈夫?」
「あ、うん……」
目の前には……え!?
どうして彼女が?
「もう、行くよ!!」
彼女の無邪気な笑顔は俺の記憶の5年前の彼女と変わらなかった
「~でさー!!」
「うん」
たわいもない話をする
全てが5年前と同じ
一体何が起きたんだ?
――過去を変えたいとは思わないか
!!
そうか、過去に戻ったのか
ということはあの事故も……
喋っているうちに、あの交差点に着いた
何もかも変わってない
それにしても暑いな
急にめまいに襲われ前方に倒れ込む
――ザワッ
――キィィィィ
!!
まずい
このままじゃ同じ事を繰り返す
彼女は絶対に死なせない
倒れ込みひかれそうになる俺を助けようとする彼女を逆に突き飛ばし、ブレーキのきかないトラックにぶち当たる
体が歪む感覚
一瞬にして全身を貫く鋭い激痛
飛び散る血飛沫に眩む視界
俺の名を叫ぶ彼女の声
過去は変わり、"俺"は死ぬ
"彼女"は生き残る
意識が遠のく中
残像は言った
――もう一度チャンスをやる
目が覚めて、夢だったと気づく
外は土砂降り
「……過去を変えるなんて、無理な話だよな」
頭では分かっていた
だけど、どこかに期待している自分もいた
再び交差点まで行くと、交差点の真ん中には救急車
倒れているのは紛れもなく5年前の俺
その前に居るのは残像
――死ぬな
泣いていた
視界の片隅に映ったのは、泣き叫ぶ幼い"彼女"
眩む視界
空間が歪み頭を抱えた
次の瞬間クラクションが鳴り響く
気付けば5年前のあの場面
飛び出してしまった俺と、俺を彼女が助けようと飛び出す瞬間
「来るな!!」
当然彼女は止まらない
間に合わない
彼女を押しのけ再びトラックにぶち当たる
あたり一面に血飛沫が散る
体が軋む
2度目の感覚
残像は言った
――なぜこの道を選んだ
体が悲鳴を上げる中、やっとの思いで俺は答えた
「彼女に生きて貰いたかったからだ」
――二人とも助かる道はあったのに
「彼女が生きるならそれでいい」
――あなたはバカだ
「何とでも言えよ……」
俺の意識は、そこで途切れた
――あなたのその選択が、結局は彼女を苦しめ、彼女を殺すこととなるのに……
自分のせいであなたが死んだと彼女は自分を責めて……
しかし過去は変わった
チャンスは二度きり
もう、どうすることも出来ない
せめて……せめてあなただけは生きてて欲しかった……
だって、あなたは……俺の…………
そして残像は消えた
――――
ここは交差点の真ん中
土砂降りの雨
過去は変わった
より、残酷な方へと
俺はもう、ここから動けない
この景色は青
俺と彼女は赤
二つの色が混ざり合って俺の中で乱反射する
ねじ曲げた過去の、その未来
彼女も同じ空間にいる
陽炎のように原型を歪めながら俺の前にたたずむ彼女は
あの頃みたいに笑ってはくれない
ああ、俺の選択は間違ってたのか?
俺が混線させてしまった
あの瞬間からずっと
あの日の残像が消えてくれない
END




