表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年銀河は魔王です  作者: 小林晴幸
魔王即位
3/67

1.少年の始まり1

 


 その少年は、毎日が不安だった。生活に息苦しさを感じていた。


 少年は少し人から同情される家庭環境にある以外は至って普通(?)の、どこにでもいるようでいそうにない十五歳の少年だった。

 両親はいなかったけれど、少年は不幸ではなかった。

 彼には愛する兄姉がいた。

 彼にとって親代わりでもある年の離れた兄と姉。

 二人に養われている生活は心苦しかったものの、それでも少年は幸福だった。

 心の中は一点の曇りもなく、不安などなかった。


 そんな彼が不安を感じるようになったのは、つい最近のことだ。

 一年前の彼の誕生日前日、彼の兄姉が姿を消した。

 少年に何の一言もなく、二人が消えたことなど初めてだった。

 少年は勿論のこと誕生日どころではなく、必死に心当たりを当たり、一日中探し回った。

 学校も休んで街中を走り回っていた。


 眠れぬ夜は、五日間続くこととなる。

 そして六日目の朝、少年の待つ家に二人は帰ってきたのだ。

 更に二人の、同伴者を連れて。

 珍しそうに家の中を見回す二人は、少年の知らない人間だった。

 綺麗な顔をした自慢の兄と姉。

 その隣にいて少しも見劣りしない人間など、見たのは初めてだった。

 見知らぬ二人は親しげに、少年へ笑みを向けてくる。

 まるで少年のことをよく知っているとでもいうような笑顔。

 二人は、少年の義理の兄と姉になったのだという。


 ――巫山戯るなと、少年は思った。


 人が五日もの間、どれほど心配し、探し回り、どれほど悲しみや苦しみ、不安や寂しさに振り回されたことかと。

 それなのに少年の兄と姉は、今まで一言も少年に話したことのない交際相手を・・・それも結婚したという相手を連れて笑顔で戻ってきたのだ。あれほどの怒りや悲しみを感じたのは初めてだと、少年が思っても仕方のない話だと誰もが思うだろう。何しろ、相談すらなかったのだから。


 そしてその日から六週間もの間、少年は一言も口をきかずに生活した。

 本気の怒りで拗ねた少年は一月以上怒り続けた。

 しかし怒りもいつしか冷めていくもので、やがて少年は義兄や義姉と打ち解ける。


 だが彼の心に、少し黒いものが残ったのだ。

 真白なシーツについた一点の黒い染みのように心に残ったもの・・・それは自分が兄姉の邪魔にならないかという不安だった。

 その不安は日に日に大きく育っていき、抱えているのが苦しいほどに、辛くて泣いてしまいそうなほどに少年を悩ませる。


 彼がその不安に耐え難くなってきた頃、彼はその本を見つけた。

 素材が何か分からない黒革の装丁に、白い文様が書き連ねてある不思議な本。

 見ただけで年代物と解るその本を、何気なく少年は手に取った。

 少年は、祖父の遺品であるソレが開いてはならない本だと知らずに・・・開いてしまったのだ。


 本を開いた少年の前に・・・見知らぬ世界が開かれる。

 少年の名前は、如月銀河といった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ