二〇一二
私はもう口を閉ざすことに決めていた。
ソレが怖くなってしまって以降、もうそこに留まることはできないと悟った。
私の羞恥や懺悔をそれ相応の物と知りながらも、軽蔑など滅多にしない友人に何度助けられていたことか。
環境が変われど人も変われど、友達のままでいられると思っていた。
私が初めて、地に足がついていないことを知ったのは、もうここに来てから2年近くも経っていた。
足のふらついた私の唯一の歩行手段は、飯のおこぼれを頂くこと。
偶像で作り上げていた能力は、やはり偶像でしかない。本当の私の能力は、この偶像にはかすりもしていなかった。
私が頼っていた彼女は、何でも1人でできていた。
誰も必要なかった。寂しさなんて言う感情は無いに等しい。だって、彼女には素晴らしい友達がいた。その子もまた同じように、私を友達としていた。
あの子のことを考えると辛い。
私は偶像で在りたがるから。有益なことをしようとする。
在りたがるくせに、本当の自分を認めてもらいたくて、ムダなことをする。
返事をしないソレらが、黙々と箸をストロークさせている姿は、権利を遂行しているよりかは義務のようだった。
私はソレを見ることが怖かった。もうそこに留まっていては、偶像で在りたい私と、自分で在りたい私が喧嘩を始めるだろう、そんなことをうっすらと感じてしまっていた。
大まかに経緯を説明したところで、口下手な私の物言いが相当不愉快だったに違いないのだろう。
目の前の彼は全部聞き終わると「寂しいやつだなぁ」と言った。
私は、その言葉を聞きたくはなかった。
今までひたすら隠し通してきた実像を、彼が羞恥に変えてしまったのだから。
しかし、私は初めて、地に足がついた気がした。
それと同時に、何故隠していた羞恥を彼に晒したことを後悔した。
彼なら分かってくれると、思ってしまった。
また私は怖いものを増やしてしまった。
怖い、近寄れない。
彼と接触することで、実像が現れるのかもしれない。
それでも。
怖いと思ってしまった。
無条件に人を受け入れることほど、バカなことはない。
そして、その道理で行くならば、食料を提供しなくなったソレらから離れたことも説明できる。
寂しい人間、…私はそうなのかもしれない。
それでも、新たな居場所が私の糧となり道を成す。
その行く末にまた否定が起きたら、私はまた怖がり続けるだろう。
しかし。
きっとまた、明日の友人のお弁当は美味しいのだろう。
それを想像するだけで、今日の私は満腹になってしまった。
また明日もキミと。