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異世界召喚ですり抜け扱いされた俺が、実は魔王であることは誰にもバレていない  作者: コータ


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13/15

相手にしない

「本番いきまーす! 五……四……三……二……」


 アシスタントディレクターのカウントが終わり、百木リリはテレビ向けの笑顔で番組の進行を開始した。


「さあ、今日も始まりました。月に一度の大ニュース祭り。タダオチャンネル最新ニューーーーース!」


 スタジオに集まったダンジョン界隈のインフルエンサー達が、彼女の声と共に大声で騒ぎ出す。


「ウェーイ!」

「始まったぜえええええ!」

「タダオさん、今日もよろしくっす!」


 十個ほど用意された丸椅子に腰掛ける面々は、いずれもタダオの息がかかっており、彼を持ち上げることにかけては配信界随一である。


 こうして月に一度数字が取れるメンバーを集めては、自分達の活動を宣伝し、かつチャンネル登録者の増加やグッズ販売を狙っていた。


 タダオの右隣には百木リリがおり、左隣には江古田エイリーンがいる。両手に華という図であり、彼のこだわりの一つ。


「あー、ごめん! いつものコーナーの前にさ。ちょっとだけいいかな」

「え? どうしたのー?」


 画面の前で好青年を演じるタダオと、わざとらしく首をかしげるエイリーン。周囲の取り巻きは一瞬固まっていた。


「俺、どうしても言いたいことがあるんだよね。最近のダンジョン探索界隈はさぁ、なんかおかしいよ」

「おかしい、というと?」


 リリが続きを促している。


「実力もないのに、話題性だけで人気を得ちゃってる奴がいっぱいいる。俺は地道に頑張ってきて、そういう風潮が強くなってるのが納得いかないんだよね」

「分かる。俺もそう思う時あるわー」


 すかさず黒道マサが同意した。


 どの口がそれを言うのか、という反論が喉まで上がっていた者が数名いたが、必死に抑えている。


 他ならぬタダオこそが、話題性と周囲の力で成り上がってきたようなものであった。


「でもさ……今回。俺が原因になっちゃったヤバイことがある。ほら、あいつのこと」

「え? 誰ー?」


 本当にわからない、と言う様子でエイリーンが訪ねてくる。


「お前と一緒に召喚された、ギルスとかいう奴だよ。あいつ、マジで最近調子に乗ってるじゃん」

「ギルスって、あー! 知ってる知ってる。超話題になってるよね、あの人」


 他のメンバー達も、誰もが驚いた顔をしている。


 実はこの時、エイリーン以外のスタジオメンバーは皆、まさか冒頭からギルスの件について、ここまで敵意剥き出しで語り出すとは思っていなかった。


 番組開始前にあった宣戦布告という言葉を、どこか軽く捉えていたのである。


「アイツが活躍してる動画とか、全部合成だから。俺には分かってんの。ダンコレとか前もやらせくさいことしてたじゃん。そういうの一番良くない」

「前もありましたっけー」


 リリは自分は分からないという様子で苦笑いをした。この配信はきっと炎上する。自分に火の粉がかかることを恐れていた。


「あったんだよ! 今回はあのギルスとかっていう奴を使って、バズろうとしてるに違いないんだ。アイツらのメッキを、俺はすぐにでも剥がしてやることが、ダンジョン探索界に必要だと思う。みんなのために、俺はあいつらと戦うつもりだ」


 この発言はやり過ぎた、とタダオの後ろに座っていたインフルエンサー達は直感で分かっていた。


 そのせいか、自然と彼らの顔は引きつっている。タダオは気づいておらず、エイリーンは楽しそうに笑っていた。


「戦うってどうするの? 決闘はダメだよー捕まっちゃうから」

「違うって。真っ当に競うんだよ。ギルスがダンジョンに潜る時、俺たちも同じところに潜ってやるのさ。そして、奴よりもずっと奥深くに到達して、本物と偽物の違いを分からせてやる。探索者みんなの為に」


 リリは進行する立場にあったが、ただ苦笑いするしかできない。


 黒道は相変わらずタダオを持ち上げる発言を繰り返しており、当初の番組進行スケジュールより大幅に遅れがでていた。


 そういった事情を、エイリーンは一切加味することなく、火に油を振りかける。


「すご! やっぱタダオっち天才。でもでもー。いつギルス君がダンジョンに潜るかなんて分かんないでしょー」

「だからギルスと、ダンコレの奴らに話をつけるのさ。いつ俺と勝負するのか。逃げるなよってな。なあギルス、お前この配信観てるよな。化けの皮が剥がれることを恐れて、生まれたての子鹿みたいに震えてやがんだろ。俺は今日だってやってやるぜ。次にお前が潜る時がいつか、DMでもなんでもいいから教えろや!」


 この発言に、エイリーンは盛大な拍手を送った。


「かっこいいー! 本当にやっちゃうの?」

「ああ、男に二言はねえ!」


 この生放送は、配信されてからすぐに拡散され、瞬く間に大きな話題を呼ぶことになった。


 ◇


:昨日のニュース見ました?? ギルスさん、ダン鳩しちゃう感じですか!


 目が覚めて朝食まで終えたギルスは、アオハからのLINチャットを開いた。


(ダン……鳩?)


 彼女だけではない。ダンコレのリーダー影山からもチャットが届いている。


 開いてみると、そちらでもダンバトを挑まれているという内容だった。


:朝ニュースはみたが、なにかあたのか。ダン鳩て? 新しゅのはと?


(俺がいない間に、新しい鳩でも現れたか。いや、そうだとしても意味不明だな)


 ダン鳩とは、ダンジョンバトルのネットスラングであり、ギルスは知る由もなかった。


 ダンバトについてはアオハも返信で説明してくれたが、影山のチャットがギルスには分かりやすい。


:ダンバトっていうのは、探索者チーム同士で、どちらがより深くまで潜れるかを競うバトルのことです

:タダオの奴、俺たちが襲われたのをフェイクだなんて、失礼極まりないことを言っていて、メンバーも怒り心頭ですよ

:ギルスさん、ダンバトするなら相談してください。俺たちでよければ、いつでも力になります


 ギルスはスマホを読みながら感心していた。


(俺が昔潜っていた時にはなかったな。……ん? そうだ、俺はダンジョンに潜っていた!)


 ふと思い出した記憶。うっすらとだが、薄暗い洞窟の中を誰かと歩いていたような。


 少しずつだが、記憶のピースは集まってきている。それも、特にダンジョンに関わることがある時に。


 しかし、彼はユリカとの約束を守らなくてはならない。


:ありがとうございますたいへんありがたいです。半年後にもぐるつもりなので、その時もあるならならおねがいします


 ギルスにとって半年などすぐという感覚だが、世間では半年はずっと先のことであった。


 だからダンコレのリーダーはチャットを見て苦笑したが、誠実に返信をして今日のところはやり取りを終えた。


 続いてアオハともチャットをしている。彼女は学校の休憩時間に返事をしてくれていた。


 LINの交流がひと段落した後、続いてユリカから電話が来た。


『ギルスさん……なんだかとっても話題になっているようですけれど』

「えーと。ああ、タダオのことですか」

『はい。お分かりかとは思いますが、くれぐれも誘いに乗らないようにしてください。ダンバトって本当に危険なんです』

「分かりました」


 ギルスの聞き分けが良いので、担当職員である彼女はホッと胸を撫で下ろした。


 先日の雑談配信のこともあり、心配をかけていることに後ろめたさがある。そのため、ギルスは彼女に対しては、重ねてお礼を伝えていた。


『とんでもないです! お役に立てているなら、私も嬉しいですから。では、明日またお会いいたしましょう』


 電話を切った後、そういえば今日は買い出しに行っていないことに気づいた。


 ギルスはここで、先日アオハからもらったドローンを起動させる。


 ドローンの横には液晶画面があり、なんと周囲のスーパーなどの位置を確認できるマップを表示することが可能だった。


 使い方はある程度、プレゼントしてくれた機械に詳しい学生から聞いている。


 そのおかげで、彼は少しずつだがドローンが分かってきた。


(要するに喧嘩を売られたのか。相手にする必要はない。それより……)


 ドアに鍵をかけた後、チラリと空を見上げる。


 以前見かけた白い風船と、それを手にしている熊が、また空に浮かんでいた。


 しかも、以前より高度が下がっているようで、熊はこちらに向けて手を振っているような仕草を見せた。


(……まさかな)


 ギルスは少しのあいだ摩訶不思議な現象を見つめていたが、やがて何事もなかったかように買い出しに出かけた。

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