第5話:わらしべ長者
話しながら考え始めたあたりで2戦目を行うことになった。
今回は少し余裕ができたから、考えるのとカードのバランスを上手く取りながらやっていこう。
今回は俺が後攻になったので、さっそく考える余裕が生まれた。お互いにカードを引き終わったあと、相手がターン終了を宣言するまではぶっちゃけフリータイムだ。
“100点“とこの子の差がどこかに無いかを改めて確認するためにさりげなく顔を見る。
……真剣な眼差しもとても可愛いです。
今度このパターンも生成しておこうと心に決めた。
◯
雑念が混じりすぎて結局“100点“とこの子の差なんて見つける余裕すら無かった。可愛すぎて数秒ですら見続けるのが難しい。
対戦の特性上向かいあって座っているが、そうでなかったら対面に座る機会すらきっと無かったんだろう。
“100点“は画像だとわかりきっているのでいくらでも見られるから、今度見続ける訓練でもやろうかとすら思えてきた。
カードの対戦の方は途中彼女が波に乗りそうなタイミングもあったが、上手くいなして今回も俺が勝つことができた。
「ありがとうございました」
対戦は先攻でも後攻でもどちらでも良いが、感想戦は先手を取るに限る。
初手の話題を選択ミスしたくないからな。
「ありがとうございました。途中いけそうな部分もあったんですけどね。上手く返されちゃいましたね」
「あー、あそこですね。どこかで来るだろうなと思って早めに予防線張ってましたからね。それが今回は上手くハマってくれました」
想像どおりではあったが、対戦中彼女側が優勢に傾きそうになった場面の話をしてきた。
内容が予想できていたから、こちら側も用意しておいた当たり障りの無い回答をする。もっと自分の意見も出していきたいとは思うが、早すぎるからこんなもんだろう。
「予想されちゃってたんですね、残念だなー。あの、よかったらデッキ見てアドバイスとかもらえませんか?」
まだ会ったのが2回目の人にデッキ見せちゃうのか。けっこう陽キャの子なんだろうか。
ちょっと驚きながらも断る理由など何もなくむしろウェルカムだったので快諾した。
「このカードが主力で、あとこのカードとこのカードの効果を使っていく戦術のデッキにしています」
カードを一枚一枚並べていきながら説明をする姿も美しかった。
これも今度生成しておこう。
説明の序盤は全然カードの方を見ていなかったので、後半で慌ててカード全体を把握する。
「そうなんですね、だいたいは予想どおりなんですが……。ちょっと待ってくださいね」
手持ちの予備カードの束を鞄から取り出し、目的のカードを探す。
おそらく入れておいたはず。
「このカードとか検討したことありますか?」
取り出したカードを相手が見やすい位置に置いて質問を投げた。
「んー、無いですね。というかたぶん初めて見ました。私のデッキに入れた場合どんな感じの使い方になるんですか?」
覗き込むように頭をちょっと前に出す仕草は可愛いが、そこから急に顔を上げて話し出すのはびっくりするからやめて欲しい。
好きになっちゃうって。
そこから“俺だったらこう使ってみる”という使い方を説明してあげた。
理解が早いようで、簡単な説明でだいたいのことはわかったらしい。
「使ってみたいんだったら、そのままこのカードあげますよ。レア度も別に高くないし、いっぱい持ってますし」
「いや、そんな、貰えませんよ。使ってはみたいなとは思ったんで、自分でゲットするようにします」
「探すのも手間だろうし、本当にあげますよ」
その後の数回の押し問答の末、どうにか受け取ってもらえた。
いっぱい持っているのは本当だし、自分の提案に対してちゃんと考えて使おうとしてくれたことが単純に嬉しかった。
彼女も喜んでいて、それはもう半端なく可愛かった。
貢ぎぐせがつくときってきっとこんな感じなんだろうな。ヤバめの沼に片足を突っ込んでしまったのかもしれない。
「あの、Glastagramってやってますか?」
……なんか予想もしてなかったことを突然聞いてきた。
「あ、まだやってないですね。なんでですか?」
精一杯平静を装いながら答えた。
動揺するのはきっと良くない、直感的にそう感じた。
「もしやられてたらフォローしようかなと思って」
……とんでもないことをサラッとおっしゃるな、この子。
あれ? まだ会うの2回目で合ってるよな? こっちは同じ顔の人はけっこう前から知ってるんだけど。
それくらいの関係の人ともサラッと繋がるのがグラスタのスタンダードなんだろうか。
Kywitterよりも陽キャ寄りのSNSって印象だったからこれまで使ったことは無かった。
失敗だったな、一回ぐらい使っておけば良かった。
でもフォローするって言ってるから繋がりを作れるチャンスでもあるはずだ。
「興味はあったんでちょうど始めてみたいなって思ってたんですよ。アカウント作ったらこちらからフォローさせてもらってもいいですか?」
流れるように嘘をついた。
そんな“ちょうど”とか有り得ないだろとは思いながら、このスピード感の中ではこれが精一杯だ。
「じゃあアカウント名お伝えしますね。グラスタに登録されたらこれで検索してみてください。momoってアカウントが表示されると思いますので」




