第3話:砂漠の砂の中の一粒
どういうことなんだろうか。
100点は俺が画像生成で作った傑作だ、実在するわけがない。
たまたま似てただけなんだろうか。
確認のためにスマホに保存している画像をいくつか確認する。
いや、似てるなんてレベルじゃない。
急いでPCを起動させる。
ソフトを立ち上げ、記憶の中にある帽子、メガネ、マスクがある状態で100点の生成をかける。
画像が表示されるまでの時間が今日はかなり長く感じる。
まだか……、まだか……。
「あっ……」
画面に表示されたのは今日見た人物そのものだった。
椅子とモニターの高さを今日の感覚を思い出しながら調整し、顔を見たときの自分の動きを何度も何度も再現してみる。
信じられないが、間違いない。
確かに今日、小さい机を挟んだとても近い距離で、俺はこの子に会った。
対戦中に浮かんだ疑問は解決できたが、同時に次元が違うレベルの疑問がでてきてしまった。
こんなことは起こり得るんだろうか。
AIのことはAIに聞くしかない。
【画像生成したときに実在の人物と全く同じ顔を生成することはあるのか?】
ストレートな質問をAIにぶつけてみた。
すぐに回答が表示される。
答えは大きく2つに分かれていたが、どちらも回答の方向はYESだった。
まずは生成する可能性が高い方の回答、意図的に実在の人物を学習させて特徴をAIに記憶させる方法だ。
確かにこの方法なら実在の人物の見た目を再現させることは可能だ。
"全く同じ"というのは難しいらしいが、近い状態には持っていけるようだ。
ただ、今回の100点はこれには当てはまらない。
俺は実在している人物を目指してなかった。
目指したのはあくまでも自分の理想。特定の誰かを思い浮かべながらやっていない。生成された画像の点数付けと、気になった部分の改良だけで高みを目指していった。
残るもう1つの回答は、"生成する可能性が0とは言い切れない"というものだった。
赤の他人がまるで双子かのように似ている事例は実際に世界中でまれに確認されている。
ただ、画像生成は技術の特性上可能性はかなり低いようで、“砂漠の砂の中から特定の1粒を見つけられるぐらいの確率"との回答だった。
たしかに0とは言い切れないが、そんな確率のことなんか発生するのか?
ひと通り調べてはみたものの、なんともスッキリしない気分になった。
あと、いくら思い出しても2戦目が始まったであろうタイミングから部屋のベッドで横になるまでの間が全く思い出せない。
あの後、どうなったんだろうか?
確認のためにもう一度デュエルスペースに行くには時間が微妙すぎる。行ったとしてももう開いていない可能性が高そうだ。
次に行けるとしたら、早くて来週か。
それまではKywitterで情報収集するしかなさそうだな。100点そのものだったあの子の情報も、もしかしたらフォロワーから得られるかもしれない。
【そういえばこの前フォロワーさんに教えてもらったデュエルスペースに行ってきたよ。
最初だからちょっと覗いただけだけど、めっちゃ綺麗だった!】
適度に嘘を入れた内容をKywitterにポストする。
性別からして嘘ついているアカウントだから、変なところでボロが出ても困る。特定に繋がりそうな部分は変えておくぐらい用心しておくべきだろう。
少し時間が経ったころから通知が届くようになった。フォロワーが何かしらの反応をしてくれているのだろう。
この中に"そういえばこの前似た人見たよ"的なリアクションがあると助かるんだが。
もしあったとしたら、あの辺りであの子にまた会える可能性が少し高くなる。
通知が少し収まったので、ドキドキしながら全ての内容を確認していった。
「やっぱ無いかー……」
思わず独り言がでるぐらいガッカリした。
コメントはけっこう来ていたが、目撃談のような内容は一つも無かった。
まぁ俺もマスクを外すまではわからなかったし、もしフォロワーがあの子を見てたとしても100点と結びつかなかっただけかもしれない。
しかしまぁ、俺のフォロワーは良い人が多いな。コメント見てても嫌な感じが全然しない。
目撃談が無いのは残念だったが、ちょっと落ち込んでしまった気分はフォロワーとの会話で戻すことにしよう。
来週またあの子に会えるだろうか。
◯
服装のことで悩んでいたら出発するのが遅れてしまった。
先週と全部同じ服にした方があの子にも気づいてもらえるかもしれない。でも服装きっかけで気づいてもらうと、同じ服ばかり着る人というイメージがついてしまうかもしれない。
実際はまぁそうなんだが、あまりマイナスの印象を与えるのは嫌だな。
先週どんな印象与えたかも未知数なんだ、これから更に下がっていくのはヤバい。
悩んだ末、結局は先週と同じ服にした。
“まだ相手の印象とか考える次元じゃなくないか“と一瞬思った後は早かった。
デュエルスペースに到着し、不自然にならない程度に中を見渡す。
前回と同じぐらいの混み具合だ。
相変わらず女の子も数人いるが、あの子はいないようだ。
ちょっと残念な気持ちになったが、待っていればもしかしたら来るかもしれない。
前と同じ席が空いていたので席に座り、カードの準備を始めた。
「こんにちは。もしよかったら対戦しませんか?」




