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森の中のホテルに監禁された私。しかも、部屋にもう一人女の子がいる。  作者: 宮野ひの


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第27話 トレーニングルーム





「ねぇ、アイリス。わたし外に出て運動したいんだけど!」


 ルカが食事終わり、お皿を回収しに来たアイリスに向かって、お願いをした。

 健康的な女子が二人、部屋に押し込まれている状況はやっぱり良いことではない。


 ふと部活に励んでいたことが懐かしく思えた。みんな何しているかな。

 ああ。バドミントンのラケットを思い切り振って、スマッシュを打ちたい。


「——承知いたしかねまス」


「ケチ! ここにずっといたら、贅肉がついちゃうんだけど」


「そう言われましてモ……」


「ねぇ。凪沙もそう思うわよね? この部屋にいたら、運動するためには……」


 ルカが言葉を切った。顔が赤くなる。

 もしかして、よからぬ想像をしているでしょ。

 私も彼女の赤面が移る


「どうされましたカ?」


「「なんでもないっ!」」


 声が被ってしまった。


「運動したいのでしたら、ダンベルやルームランナーなどがあるトレーニングルームにご案内することができますガ」


「何それ!? そんな場所があるの!? しかも、わたし達行くことできるの!? もっと早く教えてよ!!!!」


「だって、お尋ねにならなかったのデ……」


 アイリスは、ロボットらしからぬ言い訳をする。


 ——知らなかった。てっきりこの部屋から一歩も出してくれないものと思っていた。

 もっともな正論を言ったら、代用案を考えてくれることもあるんだ。


「どうしますカ? 今から行きますカ?」


「もちろんよ!」


「行きたい!」


 とんとん拍子に話が進んだ。

 でも、大丈夫かなぁ。少し不安だ。

 

 私たちはミネラルウォーターとタオルを持って、アイリスの後に続いた。


 廊下に一歩、足を踏み入れた瞬間、いけないことをしている感覚があった。それだけ、この暮らしぶりに慣れてきたということだからゾッとする。

 大地に見られたら怒られないかな。


 赤い絨毯の上を慎重に歩く。先を行くルカも緊張しているように見えた。

 いくつもの部屋を横目に歩いていくと、廊下の奥にトレーニングルームがあった。


 アイリスがドアを開けてくれる。中には、一人の女性がいた。えっ。


 ふわふわロングの髪をひとまとめにしていて、グレーのタンクトップと、黒色のジャージを着ていた。ルームランナーをゆっくりめのスピードで走っていたが、私達の姿を見るなり機械から降りた。


「わぁ。こんにちは〜」


 アニメの声優のように、丸く優しい声をしていた。20代かな。私たちより年上に見えた。


 彼女はタオルで額の汗を拭くと、私たちの元に駆け寄ってきた。


「アイちゃんのお友達ですかぁ?」


 "アイちゃん"とは、きっとアイリスのことを指しているのだろう。あだ名で呼ぶくらい付き合いが長いのだろうかと勘ぐってしまう。


「お友達では、ありませン」


 アイリスは冷たく言い放つ。瞬殺だ。


「そっかぁ。ウチね、運動するの好きなんだ〜」


「そ、そうなんですね」


 目の前の彼女は名乗りもしない。まるで昔からの友達みたいに、気さくに話しかけてくる。


「——あなたは誰なんですか?」


 ルカがビシッと言った。


「誰って……えっとぉ〜。鬼原(おにはら)だけど」


「下の名前は?」


「……真里(まり)


「軽く自己紹介しましょ。わたしは羽本ルカ。この子は……」


 そこから先は、順番に自分のことについて話していった。


 彼女は鬼原真里。24歳。A型で、獅子座。好きな食べ物は鯖の味噌煮。延々と、たわいもないことは教えてくれるけど、私たちが知りたい情報については語らない。


「鬼原さんは……」


「二人とも高校生なんでしょ? 鬼ちゃんでいいよ! イェーイ♪」


「は、はぁ……」


 調子が狂う。

 24歳って、もっとしっかりしているものだと思っていた。これじゃ妹の雫よりも、幼い気がする。


「——"鬼ちゃん"は、このホテルにいつからいるの?」


「ずーーーっといる! 楽しいよ!」


 明るく花が咲くような笑顔を見せてくれた。


「——私たちは、連れ去られてここに来たんです」


 一世一代の告白のつもりだった。しんとした空気が広がる。


「——ウチも! 気づいたら、ベッドの上にいた!」


 しかし、鬼ちゃんはひょうひょうとしている。共感できる相手ができて嬉しいという感じだ。


「最初はね、寝心地悪いベッドだなって思ったけど、そうでもなくて! あっ。そうそう昨日は、悪夢見ちゃってね〜。大変だったんだよ〜」


 話が脱線する。

 なんだかイライラする人だなと思った。


「——鬼原さんって処女ですか?」


 ルカが直球で聞いた。まるで距離を置くみたいに彼女をさん付けで呼ぶ。


「……」


 おしゃべりだった鬼ちゃんが黙る。目を逸らして俯いた。

 これは……。


「秘密!」


 鬼ちゃんは強めに言い返した。ムキになっているようにも思えた。

 直感だけど、ビンゴだろう。


「あのですね。私とルカに共通することが、その……性行為の経験が無いということだったんですよ。それで鬼ちゃんにも、つい聞いてしまったんです。気分を害してしまったら申し訳ないです」


 私はフォローするように口を挟んだ。


「そっか。二人ともまだ経験ないんだ〜。なら言っても良いかなぁ。ウチも、まだしたことないよ!」


 鬼ちゃんは素直になる。軽く舌を出して、おどけるように答えてくれた。


「そうなんですね。やっぱり大地は……」


「大くんがなに!?」


 鬼ちゃんが食ってかかる。勢いよく肩を掴まれて、思わず固まる。怖い。

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