日常 その4
「で、何がしたい?」
遊んでやると言った以上、約束は守る。それが漢だ。
「ベーゴマやろーぜ、ベーゴマ」
実はこの世界でベーゴマは密かなブームとなっている。
ブームの火付け役はこの俺、モーブ・キャラダだったりする。
ハージマリは小さな町で人口も少ない。当然子供も少なく、退屈そうにしていたフイゴの(ハグチの好感度を上げる)ために、鍛冶職人であるフイゴの父親にベーゴマの作成を依頼し、ベーゴマを教えた。
ベーゴマに興じる俺たちを見て、子供のみならず大人たちも興味を持ち、娯楽の少ないこの町にベーゴマが広まった。
鍛冶屋にベーゴマが並ぶと町に立ち寄ったハンターたちが買って帰ったのをきっかけに、王都にも広まり、今では国中にベーゴマファイターが存在しているらしい。しかも、そこで一番強い者はキングと呼ばれているという。
何を隠そう、この俺もハージマリのベーゴマキングとして君臨している。
ベーゴマにハマったフイゴは、事あるごとにキングである俺に挑んでくるのだが、これまでの戦績は俺の全勝。幼い頃より爺ちゃんにベーゴマ道を叩き込まれた俺と、つい最近ベーゴマを始めたフイゴとでは年期が違うのだ。
子供相手に大人気ないと言う奴もいるが、否、獅子は兎を狩るにも全力である。
ベーゴマ勝負は互いのベーゴマを賭けて戦う。ベーゴマを失えば当然購入することになる。俺はフイゴの家の売上げに貢献していると言っても過言ではないのだ。
言っても、ベーゴマは子供の小遣いでも買える安価なものではあるのだが。
「準備するから、外で待ってろ」
床に傷でも入ろうものなら隊長からどんな目にあわされるかわかったものじゃない。俺は外で待つようフイゴに告げると、隊長に見つからないように隠している革を弛めに張った小さな樽を手に取ると外に向かった。
「今日は負けねーぞ」
準備が整うとフイゴは意気揚々とポケットからベーゴマを取り出した。
「おっ、だいぶ上手くなったな」
ベーゴマを見てそう言うと、「まあな」と素っ気なく返したフイゴだったが、その顔を見れば照れ隠しだと一目でわかった。それもそのはずフイゴのベーゴマはフイゴ自身が作ったものなのだ。
負けず嫌いのフイゴは、ベーゴマについて研究し父親に細かく注文をつけたところ「鍛冶屋の息子なら自分で作れ!」と一喝され、理想のベーゴマを作るため日々精進している。
余談だが、ベーゴマ作りはフイゴの修行にもなっているとハグチに聞いたことがある。
最初は形も歪で回すことすら難しかったが、何度も挑戦し徐々にベーゴマとして遊べるものになっていった。
そんな努力の結晶であるベーゴマを褒められて嬉しくないはずがない。
だが、
「ふっふっふ」
不敵に笑いながら俺はベーゴマを取り出した。
フイゴの丸いベーゴマと違い、俺のは上面が八角形になっている。
角がある方が攻撃力が増すのだが、今のフイゴには八角形を作るのは難しいらしく、重心が崩れると回らなくなるのでフイゴのベーゴマは丸なのだ。
更に俺のベーゴマは背が低い。基本的にベーゴマは背が低い方が強い。つまり俺のベーゴマは攻撃に特化したベーゴマだ。
対してフイゴのベーゴマは回しやすく、長く回すことに長けたものといえる。
だが、忘れてはいけない。これは相手のベーゴマを弾き飛ばす喧嘩独楽である。
言っておくが、これは卑怯でも何でもない。確かに俺のベーゴマは強いが、扱うのが難しい。この世界でまともに回せるのは俺くらいのものだろう。もっとも特注品のため持っているのも俺だけだが。
回せない独楽を作っても売れないのだ。
「勝負だ!」
互いの意地がぶつかる真剣勝負の幕が上がった。




