プロローグⅣ
「じゃあ、なんかチートな能力くれよ」
ビッグな願いが却下された俺は、ふてくされるようにそう言った。
「勇者の素質を与えてやると言っとろーが」
「勇者って最初から強いのかよ?」
「あくまでも素質だ。最初は一般人と変わりゃせん。だが鍛練すれば魔王すら倒せるくらい強くなるし、勇者しか使えん特別な武器もあるぞ」
「お断りだ! 成長する前に死ぬかもしれねーだろ。人生のバイブル七法全書にもこうある『七法全書 怠惰の法 働いたら負け。母性本能を擽れ、ダメ男に惚れる女も多い』とな」
そうだ。最初からカンストしているならともかく、レベル1から地道にレベル上げなんて苦行でしかない。
「その本のことは忘れた方がいいぞ」
神は呆れ顔でそう言うと、言葉を続けた。
「転生先はこっちで適当に決めてやる。つでに加護も何か付けといてやろう」
「じゃあチン――」
「黙らんか駄犬がー!」
最後の抵抗も虚しく俺の願いは叶わなかった。
「それにしても世界には善人が多いんだな」
ニュースを見ると良い話題より悪い話題が多く感じるが、単にインパクトの問題なのだろう。凄惨な事件なんかは記憶に残りやすい、天国に空きがないということはそういうことだ。
「いいや、単純に天国が狭いだけだ」
天国は地獄の半分しかなく、現在の人口(?)も地獄が多いらしい。
「自分が創ったものを信用しろよー!」
俺は少し悲しくなった。
「最後に一つ、大事なことを言っておく」
神の真剣な表情に思わず背筋が伸びる。
「貴様の場合、転成しても前世の記憶を覚えている可能性が高い」
通常の転生は天国、地獄で過ごす中で生前の記憶が浄化され、真っ新の状態で転生するのだそうだ。
だが、俺の場合はそれをすっ飛ばし転生するので、前世の記憶が残る可能性が高いとのことだ。
「何か問題があるのか?」
記憶が残った方がなにかと便利そうな気がするが、なぜあんな表情をしたのか気になった。
「昔、記憶を持ったまま転生した奴がいた。そやつは良かれと思い前世の知識や慣習、文化を住んでいた村に広めた」
「良いことじゃないか」
生活を便利にするために異世界の知識を使う転生ものではよくある話だ。
「その結果どうなったと思う?」
「国を豊かにした人物として後世に名を遺したのか?」
新たな技術を広め国を豊かにしたのなら偉人として名を残していてもおかしくない。
「殺されたのだ」
「え?」
神の言葉に驚愕する。
「村は焼き払われ、村人も全て殺された。女、子供、老人関係無く、みんな殺されたのだ」
「なぜ?」
神の話を聞き俺はその言葉を発するのがやっとだった。
「そやつは魔女と呼ばれ、魔女と共に暮らすその村は、魔女を信仰している村だと。よいか、未知の知識や慣習は恐怖なのだよ」
俺は背筋に冷たいものを感じた。
「心しておけ」
オレは静かに頷いた。俺のいた世界でも同じようなことがあったと世界史の授業で習った。
「まさか、その世界って……」
神は静かに頷くと、この話はお終いというように表情を戻した。
「まあ、悪いことばかりでもないぞ、貴様がいた世界でも前世の世界を舞台にた漫画や小説を書いて成功した者もおるしな」
「えっ?」
「じゃあな、よい転生を」
現在では当たり前のようなファンタジー世界の生みの親が転生者だったという衝撃の事実に驚愕したその瞬間、俺の意識は闇に飲み込まれていった。




