プロローグⅢ
「わかればよい。それでだ、貴様の行先なのだが」
「天国だな、天国に美女はいるのか?」
「最後まで聞かんか、早〇野郎!」
「はい!」
また雷に打たれては敵わんと、姿勢を正す。
「これを見ろ」
「天秤?」
何もない空間から突如出現したその天秤は、金色に輝いており右には白い皿、左に黒い皿が乗せられていた。
「これは善悪の天秤だ。これで天国か地獄かが決まる」
生前積み重ねた善行が白い炎、悪行は黒い炎となりそれぞれ同じ色の皿の上に現れ、その結果、白い方に傾けば天国、黒い方なら地獄と行き先が決定される。
善行と悪行の差を貯魂、借魂と言い、天国では貯魂を使って夢のような生活ができ、地獄では借魂を返済するまで過酷な労働を強いられるそうだ。
俺は……
「どっちにも傾いてないぞ」
天秤はどちらにも傾いていなかった。傾く以前に皿の上には何も無い。
「貴様は、計るほどの善行も、悪行もしとらんのだ」
「悪行をしてないなら天国でいいだろ!」
当然行くなら天国がいい、悪いことをしてないのに地獄に行くなんてまっぴらだ。
「そうもいかんのだ」
「なぜだ?」
「空きがないのだ」
「は?」
空きがない? 空きがないってなんだ?
「天国には今空きがないのだ」
「なんじゃそりゃ?」
思わず素っ頓狂な声を発してしまう。
「地獄ならまだまだ空きがあるがどうだ?」
「イヤだ―!」
空きがないから地獄行きって、納得できるはずがない。
「まあ、そうだろうな」
予想通りの答えに神は頷き言葉を続けた。
「そこで提案だが、特別に異世界に転生させてやろう」
「異世界?」
神が言うには、神が創造した世界は多数存在し、転生とは天国で貯魂を使いきった者、地獄で借魂を完済した者が生まれ変わることだそうだ。つまり、転生というのは天国の住人からすれば贅沢三昧の暮らし(かはしらんが)から堕とされ、地獄の住人からすれば過酷な労働からの解放といった対照的な意味を持つ。
ちなみに、転生先はランダムだそうだ。
「今回はこちらの都合だ。転生先を選ばせてやる。どんな世界を望む?」
「女しかいない世界!」
俺は即答する。女の中に男が一人、これぞ漢の浪漫だ。
「そんな世界があるかー! そもそも種が滅んどるわ!」
「じゃあ、どこでもいいや」
(男女比が変わらないならどこでも同じだ)なんて考えていた俺はあることを思いつき、自然と口角が上がった。
「さっき言っていたが、今回はそちらの都合で俺は悪くないわけだ」
「そうだが、何が言いたい?」
「転生先はどこでもいいから、一つ願いを聞いてくれ」
異世界転生と言えばチートだ。無双でハーレムだ。
「勇者にでもなりたいのか?」
「勇者なんて興味はない。俺の願いは……」
魔王を倒すための旅をする戦いばかりの勇者なんてありえない。
モンスターより美女に囲まれた人生を送りたいのだ。
それに俺は、ジャンルを問わず勇者が主人公のゲームを一度もゲームオーバーにならずクリアしたことはない。
『ゲームオーバー=死』
ゲームだからいいが現実なら人生が終わる。そんな危険な職業に就くのはまっぴらだ。なるなら公務員がいい。景気に左右されない安定した仕事が一番だ。だから俺は勇者などいらない、俺の願いは……。
「チ〇コの大きい男に転生させてくれ!」
『七法全書 強欲の法 小金持ちより大金持ち、小屋に住むより大きい屋敷、満足するな、デキる男は大物になれ』とある。大きいことは良いことなのだ。
「使い道が無いものをデカくしたって、粗大ゴミにしかならんわ! この粗〇ンが!」
無情にも俺の願いは一蹴された。




