日常 その14
「ここです」
一軒の民家の目で立ち止まる。どうやらこの家が彼女の家らしい。
「ご家族は?」
「今は外出中です」
一応確認するもやはり家族は留守のようで、心の中でガッツポーズをする。
「中に」
彼女を残し俺だけ家に入るよう促される。
もしかしてそういシチュエーションが好みなのだろうか? それなら俺は彼女が満足するよう全力で応えるのみだ。
ドアに鍵はかかってなくすんなり開いた。不用心だとは思うが田舎ではこういう家も少なくはない。俺の実家もそうだったので王都に来たときは逆に驚いた。
もっとも、前世の記憶を思い出した今の俺は田舎とはいえ施錠しないなんてことはない。
「え?」
ドアを開け飛び込んできた光景に更に驚く。
木箱の蓋や棚の引き出しは開けっぱなしで、周りには中に入っていたであろうものが散乱している。
お世辞にも片付いているとは言い難く、散らかり放題だ。
俺はこの光景に違和感を覚えた。
はたしてこんな散らかっている家に人を誘うだろうか? 普通、誰かを招くときは片付けておくものだ。
だがしかし……。
彼女は先に俺を家の中に入れた、そのうえこの散らかりよう……。
彼女はそういった願望があるのかもしれない。
そうだ! そうに、違いない! 彼女の期待に応えるよう俺も獣になるしかない!
「ん?」
そう思った時、奥の部屋から物音が聞こえた。
家には誰もいないはずだ、空耳かとも思ったが一応確認することにする。
用心のため静かに歩を進め部屋の前にたどり着くと、開いていたドアから中を覗き込む。
(!!!)
俺は驚愕した。
部屋の中に派手な格好をした見知らぬ男がいたからだ。
(もしかして3P?)
一瞬そんな考えもよぎったが、そんなことはないと考えを消した。
理由は男の容姿だ。年の頃なら16,7だろうか、思春期のせいか、食生活の乱れかニキビ面の太った男。
彼女は俺やマチオに惚れるような面食いだ。しかし、目の前の男はお世辞にもイケメンとは言えない。絶対に彼女のタイプではないだろう。
「ぐふふふふ」
男は引き出しから取り出した純白のそれを広げ下品に笑う。その姿はまるでガマガエルの様だ。
「いい仕事してますな」
俺は男に近付き背後から覗き込むと、男が眺めているそれを見ながらそう言った。
「なっ?!!!!」
突然かけられた声に男は驚きの声を上げる。
「んなことあるかー!」
「ぐぶう」
振り返る男の顔面にパンチを入れると、男はひっくり返った。
たぷたぷの腹と蟹股の足を伸ばし仰向けに倒れている様はガマガエルそのものだった。
「な、なんだ、オマエは?」
ガマ男は殴られた頬を押えながら上体を起こすと、俺を見上げそう言った。
「俺か? 俺はモーブ・キャラダ。ハージマリの兵士だ」
別に隠す必要は無いし、俺は普通に答えた。
ハージマリは小さな町だ。住人の顔は大体知っている(女性は完璧)。だがこんな奴は見たことがないし、相手も俺を知っている風ではない。つまり、こいつはハージマリの住人ではない。
それにハンターでもないだろう。
素行の悪いハンターはいるが、ハンターなら白昼堂々空巣などするはずがない。犯罪行為をすれば、資格は剥奪され狩る側から狩られる側になってしまうからだ。
だとすれば……。
嫌な予感がする。
白昼堂々盗みを働く太った男を見て俺はある結論に達していた。




