第9話【保険屋さんの謎】
警察の事情聴取が終わり、次に向かったのは火災保険の代理店だった。落雷による火災も、火災保険の対象になるらしい。
「この度は大変でしたね」
そう言って迎えてくれたのは、とても綺麗で、落ち着いた雰囲気の女性だった。
俺が自己紹介を終えると、お決まりのようにアイスが前に出る。
「初めまして! 元AVのアイスでーす!」
保険屋のお姉さんは一瞬だけピクッと肩を震わせたが、すぐに笑顔に戻り、何事もなかったかのように話を続けた。
「……えっと、お兄さんは20歳のフリーターで、妹さんは元AV嬢、と」
俺は弁解のため言い訳しようとすると、聞き慣れない言葉にアイスがキョトンとする。
「元AV嬢って?」
「そう、元AVのお嬢さんだから、元AV嬢でしょ?」
保険屋のお姉さんは、いたずらっぽく微笑んだ。いや、冗談で焚き付けるのはやめてください。俺が弁解しようと口を開きかけると、アイスはにこっと笑い、宣言した。
「そっか! じゃあ、次からは『元AV嬢のアイス』って言うね!」
「いや、ちょっと待て……」
俺が言葉を遮ろうとするよりも早く、保険屋のお姉さんは真顔になり、アイスに静かに語りかけた。
「あのね、元AV嬢なんて、軽々しく言うことじゃないの。ここでは私も冗談で焚き付けたけど、そういう過去は、消して然るべきものなのよ」
その真剣な眼差しに、アイスは戸惑いながらも反論した。
「でも、私は元AV嬢だったことに誇りを持っています。もちろん、一般的に受け入れられていないというのもわかります。でも、私にとってはお兄ちゃんとの絆のきっかけになった『元AV嬢』であることを、隠す気は毛頭ありません!」
うーん、すごくいいことを言ってるのに、どうして俺が変態扱いされていく未来しか見えないんだろう。
それに、このお姉さんの言葉には、妙な重みがある。もしかして、この人も……?
俺はそれ以上追及することをやめた。ただただ、この時間が早く終わることを願っていた。
続く




