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第7話【卒業の背中】

ショッピングモールでの一件以来、俺は外出には細心の注意が必要だと再認識した。とりあえず必要なものはスマホでネットショッピングを使い、急を要する食料や日用品だけは近所のコンビニで済ませることにした。

「ふう、疲れた……」

買ってきたタオルやお風呂道具を置き、俺はどっとソファに沈み込んだ。まだ家具も揃っていないので、今日は床に毛布を敷いて雑魚寝だ。

「疲れたし、俺、先に風呂入るわ」

そう告げると、アイスは「わかった、後から入る」と元気よく答えた。少し心配だったが、とりあえず一人でまったりと湯船に浸かることにした。

すると、ガラガラーッ。

風呂場の引き戸が勢いよく開く音に、俺は思わず振り返った。タオル一枚を巻いたアイスが、湯気の中に立っている。

「お兄ちゃん、お背中流すねー!」

ちょ、おま、何してんの!?

俺が狼狽する中、アイスは当たり前のように俺の背後に回り込もうとする。

「やだなあ、お兄ちゃんの背中を妹が流すってのは、定番でしょ?」

「それは漫画やアニメの話だ!」

「でも漫画やアニメであるってことは、世のお兄ちゃんたちはそれを望んでるってことだよねー?」

うぐっ……。

確かにこの展開は、兄的な願望を大いに刺激する。しかし、この規格外の妹をまっとうな人間に育てるには、ここで我慢せねば。だが、うまい言い訳が思いつかない。

すると、アイスは楽しそうに、そして元気な声でとんでもないことを言い放った。

「じゃあ、この元AV妹のアイスが、お兄ちゃんのお背中流しまーす!」

そ、それだ!

俺は一瞬、天才的なひらめきが降りてきたかのように、力強く声を上げた。

「いいかアイス、現役のAV妹ならそういうこともできたんだが、お前は元AVだろ? もう卒業したんだから、お兄ちゃんの背中流しも卒業だ!」

「え? そうなの?」

俺の苦しい言い訳に、アイスはきょとんとした顔で聞き返した。ああ、ちょっと無理があったか?

「じゃあ、仕方ないね。上がったら教えて」

アイスはそう言って、大人しく風呂場を後にした。

単純でよかった……。元AV設定を逆手に取ったナイスアイデア!

風呂の湯が、少しだけぬるく感じられた。

勿体無いこと、したなぁ……。


続く

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