第6話【スカウト騒動】
服や下着類は後で通販を使えばいい。俺はそう割り切り、とりあえず一緒に見て回れる生活用品から買い揃えることにした。
「ちょっとトイレに行ってきていいか?」
「いいよ」
俺はアイスに念を押す。
「ここを動くんじゃないぞ」
「はーい!」
元気な返事だったが、どこか不安を感じる。しかし、我慢できないものは仕方ない。俺は急いでトイレへと向かった。
用を済ませて戻ってくると、悪い予感は的中していた。アイスは、大勢の人に囲まれて、人だかりの中心にいたのだ。
「何があったんだ…!」
俺は焦りながら人混みをかき分ける。そして、アイスの悲痛な叫び声が耳に飛び込んできた。
「だから私は今はもうAVじゃないって言ってるでしょ!」
うん、大体の予想はついた。俺はもはや慣れてしまったかのように、ため息をつきながら人だかりを抜けた。
アイスの前に立っていたのは、いかにも怪しげな、胡散臭い雰囲気の男だった。スーツは着ているが、どこか脂ぎった印象を受ける。
「君みたいな見た目幼い子がAVを引退するなんて勿体無い、ぜひうちの事務所で再活動を…」
「おい」
俺は静かに男の肩に手を置いた。
「この子はまだ中学生なんで。そういう話は、ちょっと」
男は一瞬、きょとんとしたが、すぐにニヤリと笑った。
「兄貴?ああ、売れてる女優の家族を口説くのも、最近の流行りですからねぇ」
「話が通じないな」
俺はこれ以上関わるのも面倒になり、男から離れ、アイスの手を引いて早足でその場を去った。
「お兄ちゃん、あの人、しつこかったよ!」
無邪気にそう言うアイスの手を強く握りしめ、俺はショッピングモールから逃げ出すのだった。どうやら、俺たちの生活は、俺が思っていた以上に、前途多難なようだ。
続く




