第5話【ショッピングモールは戦場】
燃え盛る家から救出された際、ポケットにあったスマホと財布だけは無事だった。不幸中の幸いというべきか、連絡手段と身分証、カード類は失わずに済んだ。しかし、それ以外はすべて燃えてしまった。
当面の衣類や寝具、家具などを買いそろえようと、俺はアイスを連れてショッピングモールにやってきた。
「お兄ちゃん、何から買うの?」
目を輝かせるアイスに、俺は少しだけ疲れた顔で答える。
「まずは服だ。お前の服を選んでこい」
アイスは中学生くらいの見た目だ。俺が女性服売り場に踏み込むのは、さすがにハードルが高すぎる。ただスマホもクレジットカードも俺しか持っていない。仕方がないので、近くで待っているから見繕ってこいと言った。
「わかった!」
元気な返事とともに、アイスは女性服売り場へと消えていった。
だが、数分と経たないうちに、店員とアイスの声が聞こえてきた。
「元AVのアイスに合う服をくださいな」
その言葉に、俺は血の気が引いた。
「元AV」という言葉が、ショッピングモールの開放的な空間に、くっきりと響く。周囲の女性客の視線が、一斉に女性服売り場に注がれる。そして、その視線は俺にも向かっているように感じられた。
「おいおいおい!」
俺は慌てて女性服売り場に突入した。服を試着しようとしていたアイスを、周りの女性客の視線を浴びながら強引に引っ張った。
「いったい何やってんだ!」
「お兄ちゃん、だって服を選んでって……」
悪びれる様子もなく首をかしげるアイスを連れて、俺は逃げるようにその場を後にした。
一体どうすれば、この強烈すぎる自己紹介の癖を直せるのだろうか。俺とアイスの新しい生活は、前途多難なようだ。
続く




