第36話【回想】
アイスとキャンディの戦いの後の話
「父さん、いっぺん死んでくれないか?」
俺の言葉に、父は電話口で絶句した。
「な!?」
「ユウリさんの居場所はわかるか?」
「いや、見当がつく場所はあるが、捜索していると気付かれるとまずい」
「ユウリさんの失踪はまだバレてないんだよな」
「ああ。国の人間は間隔はバラバラだが、一度来たら一ヶ月は来ないからな。前回来てからすぐにノゾミを送っている。もうすぐ一ヶ月になるが……」
一ヶ月か。この一ヶ月、本当にアイスには振り回されっぱなしだったな。
「時間がない。父さんはユウリさんのいると思う場所に向かってくれ。父さんの話では、ユウリさんは悪い人ではない、父さんに被害が及ばないようにユウリさんも準備してくれてるはずだ」
父の視点:ユウリの隠れ家
「この辺で隠しラボを作るなら、ここしかあるまい」
私はユウリがミライを連れて隠れそうな場所に向かっていた。ここだな。茂みで隠された扉を見つけ、ノックする。当然返事はない。
「ユウリ君、いたら返事をしてくれ。私一人だ」
「先生……」
ユウリはそっと扉を開け、私を中に通してくれた。私は何も聞かず、しばらく黙っていた。
「すみません、先生。でも、先生に迷惑はかけません」
ユウリが出してきた資料には、今回の件はユウリが独断でやったということだけではなく、私を亡き者にする計画まで記されていた。
「これなら先生は共犯者でも監督不行き届きでもなく、一人の被害者だったと証明できます」
「青斗の言った通りだな」
「え?」
「いや、こちらの話だ」
「あとは、この仮死状態になる薬を打ちます。私が国に発見される頃には、先生の元にも救助がくるでしょう」
「それなんだが、ユウリ君。君には日本に向かって青斗に会ってほしい」
「どうしてですか?」
「ノゾミとミライが気になるだろう?こちらからは『ノゾミのメンテナンスが必要になった』と言って、日本に渡る許可をとってある。君たちが失踪したという事実が露見する前に、すぐに行ってくれ」
「でもそれだと先生が……」
「日本に行く前に私を仮死状態にするんだ。それなら許可をもらった後でミライと共に失踪したことにできる」
(これが青斗の計画だ……!)
まさか「いっぺん死んでくれないか」と言われた時は、青斗の精神状態を心配したが、「いっぺん」というのがこういうことだったとは。そして、ユウリの行動をここまで正確に読んでいるとは。
これでユウリは安全に日本に行ける。残された私は、被害者として罪は軽くなる。
青斗視点:青斗と父の会話の続き
「しかし、日本に行った後のユウリの処遇は?どちらにせよ、国に強制送還されて死刑だぞ」
父の問いに、俺は冷静に答える。
「ユウリさんは日本の監獄で守る」
「監獄で守る?」
「こっちで無期懲役の罪を着せる。釈放されなければ、強制送還されることはない。日本の監獄という名の鉄壁のシールドで、ユウリさんを守る。多少強引だが、拷問の末に死刑よりマシだろ」
ユウリさんには辛いだろうが、これが俺にできる精一杯だった。
続く




