第35話【計画】
軍事用の空港から少し離れていたところで待機していた俺は、ユウリさんと待ち合わせをしていた。俺の計画は、もう始まっている。
「ユウリさんですね、青斗です」
「それで、二人は?」
「ついてきてください」
俺はユウリさんを車に乗せると、アイスとキャンディが戦った広場へ向かった。今は人通りもない。広場には、古い倉庫がポツンと建っている。俺は倉庫にユウリさんを案内した。
そこにいたのは、ボロボロの二人。もはや顔もわからないくらいにぐちゃぐちゃだ。
「青斗君、これは!?」
ユウリさんは、その惨状に声を失った。
「これは、ノゾミとミライだったものです」
「そんな……あの子たちには高性能な修復プログラムがある。たいていの傷は自己完治できるはず……」
「戦いの際に、根幹から壊れてしまったのかもしれないですね。実際に目の前にあるのが真実です」
「そんな……じゃあ、私はなんのために?この二人には幸せになってもらいたかったのに」
「まだ二人はかろうじて生きています。でも、これ以上苦しむ二人を見たくない。この二人をあなたの手で解放してあげてください」
「どうしろと?」
「俺が離れたら、この倉庫を燃やしてください。記憶だけじゃなく、姿も跡形も残らないほうが二人のためでしょう。治療用に持ってきてもらったDNAのサンプルも一緒に燃やしてください」
俺は、感情のない機械のようにユウリさんに指示した。
「……それがあの子たちのためなら」
ユウリさんも気が動転しているのだろう。俺の思うままに動いてくれそうだ。
「俺は離れた場所で待ちます。火が上がったら消防を呼ぶので。ことが終わったら、わかってますね?」
「ええ、自首するわ。加重誘拐罪か、もしかしたら国家反逆罪で死刑も有りうるかも……」
「違います。ユウリさんの自首先は、自分の国じゃなく、日本の警察です。罪名は、現住建造物等放火致死罪」
「それって?」
「裁判では、放火は二人の解放が目的だったって言ってください」
俺は、その場を離れて住宅街に向かった。広場のあたりから煙が上ったのを確認すると、近くの子供に声をかけた。
「あそこで煙が出てる。火事かもしれないから、お父さんかお母さんに消防車を呼んでもらって」
「わかったー!」
よし。これで俺とユウリさんの接点も無くなった。
(ユウリさんは、無期懲役だろうな)
すべてを終わらせた後、俺はただ、空を見上げるのだった。
続く




