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第30話【双子の記憶】

「よろしくね」


ユウリが優しく手を差し出すと、二人の少女はビクッ!と怯えた様子で一言も発しない。


(まあ、感情的になると、こちらもやり辛い。あくまで研究対象としておいた方がいいだろう)


私はそう頭を切り替える。しかし、人体実験なんてものは、そう易々と行っていいものではない。


「ユウリ君、まずはマウス実験に切り替えよう。二人には最終段階に備えて精神的・肉体的共にじっくりとサポートしていこう」


「はい、先生。わかりました」


二人の詳しい素性は聞かされていないが、ユウリは二人に「ノゾミ」と「ミライ」という名前をつけて呼ぶことにした。私はあまり二人に情を移さないようにと、ユウリに注意していた。


それから十年の時が流れた。我々の研究も最終段階へと迫っていた。結果として、脳への記憶の消去、新しい記憶の書き込みは可能となったが、実験に耐える肉体を作るために、二人の体内には肉体強化のためのチップを大量に埋め込む形になってしまった。


ノゾミが青斗の妹として生まれ変わる最終調整を行っている最中、国側の担当者が研究室に現れた。


「やあやあ、どうだね、研究の方は」


私は、ただ無機質に眠っているノゾミを見ながら、研究成果を説明する。


「もう最終段階だ。予定通り、この子はうちの息子、青斗の妹として生まれ変わるだろう」


「そうか、そうか。では、もう一体は国の方で預からせてもらおう」


その言葉に、私は強く反発した。


「何っ!?そんな約束はしていなかったはずだが!」


「しかし、今のところ、こちらの方には使い道がないのだろう?」


確かにミライの方はどうするか決まっているわけではない。しかし、国に渡して幸せになれるだろうか?記憶を消去可能な少女なんて、悪いことに使われる予感しかしない。


「まあまあ、そんな難しい顔をしなくてもいいだろ。国としても、ちゃんとこの子の幸せを保証するさ」


その爽やかな笑顔が、逆に怪しい。だが、国の機関として研究している以上、断ることはできない。


「まだ時間はある。それまで、しっかりとお別れをしておくんだな」


担当者が去った後、ユウリはノゾミとミライを交互に見つめ、じっと黙り込んでいた。


数日後。


ノゾミを青斗の元へ送り届けた後、研究室に戻ると、私は絶句した。


研究室には誰もいない。ミライが寝かされていたカプセルも空だ。


「ユウリ!?ミライ??」


辺りを見回しても、二人の姿はない。


(予想はできていた……!)


ユウリは、ミライが国に利用されるのを避けるため、ミライを連れて失踪したのだ。しかし、これは国家反逆と言われても仕方ない行為だ。


「くそっ、なんとしてでも見つけ出さねば……!」


私達の夢と良心から始まった研究は、ついに取り返しのつかない事態を引き起こしてしまった。


続く

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