第3話【新居と新たな誤解】
俺たちは、燃え尽きた家を後にして、父に電話をかけた。
「もしもし父さん?青斗だけど……信じられないかもしないけど、父さんが作ったIMOUTOが、人間になったんだ」
海外の研究機関にいる父は、最初は冗談だと思ったようだが、俺が必死に状況を説明するうちに、次第に言葉を失っていった。にわかに信じがたいことだが、息子がこんな嘘をつく理由もない。
「わかった。詳しいことは後で聞く。とりあえず、東京にマンションの一室を契約した。場所はメッセージで送る。そこに住むんだ」
父は冷静に指示を出し、俺は安堵した。さすがに世界的な科学者だけあって、動揺している場合ではないと判断したのだろう。
翌日、俺は彼女と二人で、父が用意してくれたマンションへと向かった。新居の鍵を受け取るため、大家さんに挨拶をしに行く。
「はじめまして。今日からこちらに越してきました、青斗です」
俺が深々と頭を下げると、大家さんは優しそうな笑顔で迎えてくれた。そして、その横に立つ彼女に視線を移す。
「そちらが、妹さんかな? 可愛いねぇ」
「どうも、元AVの妹です。よろしくお願いします!」
彼女は元気いっぱいに、満面の笑みで自己紹介をした。
俺の頭が、真っ白になる。
「元AV」という言葉の、あまりにもストレートな響き。大家さんの笑顔が、わずかに凍りついたのが分かった。おいおい、その自己紹介の癖はなんとかならないのか?
「あ、いや! その、この子ちょっと変わってまして、いや、あの、そのー…」
俺は言葉を詰まらせ、しどろもどろになりながらも、なんとか状況を誤魔化そうと必死だった。
大家さんは、俺の汗だくの顔と、何一つ悪びれる様子のない見た目中学生くらいの彼女を交互に見つめ、不思議そうな顔をしていたが、やがて「まぁ、若いってのは色々とあるからねぇ」と、妙に納得したような笑みを浮かべてくれた。
結局、真実を話すこともできず、俺は新たな住まいと、さらなる誤解の種を確保したのだった。
そして、始まる新しい生活。俺と、元アンドロイドの妹。これから、どうなってしまうのだろうか。
続く




