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第29話【国の依頼】

「この二人を、君たちの研究に使って欲しい」


突如言い放たれた言葉に、我々は驚愕した。


目の前に差し出されたのは、おそらく三歳くらいの双子の少女だった。二人とも感情を失ったかのように無表情で、虚ろな目をしている。


「この子たちを研究に?どういう意味ですか?」


「なーに、簡単なことさ。完全自立型AIアンドロイドは今はまだ難しい。ならば、人間を実験に使えば簡単じゃないか」


その言葉に、私は全身の血の気が引くのを感じた。


「そんな、この子たちを研究に使うなんてできません!」


ユウリも強く反論する。


国側の担当者は、私達を落ち着かせるように静かに続けた。


「まあまあ、落ち着きなさい。実は、この子たちの親は人の心を持たない極悪人でな。この子たちは毎日酷い目に遭わされてきたんだ。君たちの研究成果は素晴らしい。この子たちの辛い記憶を消し去って、新しい人生を歩ませてあげたいんだ」


辛い過去の消去――それは、ユウリの研究における最大のテーマだった。


ユウリの研究では、人間の記憶は電気信号から成り、神経細胞同士が情報のやりとりをしている接点「シナプス」にアクセスすることによって記憶の改ざんが可能になるというものだ。


しかし、人間の脳は生まれる頃にはほぼ大人同様に完成されているため、既存の記憶を消し去っても、新たにいろいろ覚えたりするのは難しいかもしれない。そこで私の研究における人工知能の出番というわけだ。


「君たちの研究成果によっては、心を閉ざしたこの二人が、また笑って過ごせる日が来るかもしれないんだ。もちろん、これが人の理に反していることは分かっている。でも、人の幸せは理屈だけじゃない。わかってくれるだろう?」


私達は悩んだ。人の心を持つ妹を生み出すという目的のために、人間の少女を使っていいわけがない。


だが、目の前の、生きる希望を失った幼い双子の少女の姿に、私達は心を動かされた。人を幸せにするための研究――そう信じて、私達は承諾することにした。


続く

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