第27話【父からの依頼】
「次こそはこうは行かないんだからねー!」
プールの一件から数日後。定期的に現れては、毎回アイスにやられて帰っていくキャンディの姿は、もはや俺たちの生活のお決まりの展開となりつつあった。
「なあ、なんでお前は俺を狙うんだ?」
俺が尋ねると、キャンディは悔しそうに答える。
「そんなの決まってるでしょ。あなたがわたしのお姉ちゃんを奪ったからよ!」
「お姉ちゃん?」
聞くまでもない。ここでいう「お姉ちゃん」とはアイスのことだ。しかし、アイスは父さんの作った元AV機器、キャンディが自らを「現役AV」と名乗っていることから、彼女は姉妹機に当たるのだろう。
しかし、妙だ。元々誰かの妹になるべくして作られたはずのアンドロイドに、その持ち主に対して「奪われた」という感情が生まれるだろうか?
「アイス、お前はキャンディのことを知ってるか?」
「んー、知ってるような知らないような?」
こっちはこっちで、はっきりしない。
「と、とりあえず今日はもう帰るわ!もう我慢の限界だから!」
そう言って走り去るキャンディ。
(あ、今日はセーフだったんだな)
と思ったが、完全にスカートが濡れてるじゃないか。何が「我慢の限界」だ。完全にアウトじゃねーか。まあ、黙っといてやるけど。
次の日、俺は海外にいる父さんに電話で事情を聞いてみた。
「もしもし、父さん」
「青斗か。あれからどうだ? IMOUTOの様子は」
「まあ、ぼちぼちかな。それよりも、あのIMOUTOって、姉妹機とかある?」
父さんの声が一瞬、固くなる。
「……なぜそんなことを聞く?」
「いや、うちに届けてもらったIMOUTOに、アイスって名前つけたんだけど、アイスの妹を名乗るキャンディって別のやつが現れてさ。なんか、俺が狙われてるんだよ」
「そうか……そんなことになっていたとは」
「なんか知ってるのか?」
「ああ。我々の研究は秘密裏に行われていたのだが、研究員の一人が突如失踪してしまってな。警察に捜索依頼を出すこともできずにいるのだが、どうもその研究員が実験データを持ち去った可能性があるんだ」
「つまり、キャンディはそいつが生み出したIMOUTOの2号機になるわけか」
「青斗。こんなことを頼むのは忍びないが、そのキャンディを捕獲してくれないか?」
「まあ、黙ってても向こうから出向いてくるけど、俺の身の危険が……」
俺はため息をついた。キャンディはただのバグアンドロイドではなく、機密データが絡む研究対象だったってことか。俺たちの日常は、もはや完全な非日常だ。
こうして、キャンディ捕獲計画が始まった。
続く




