第23話【計算された奇跡の弾道】
「おおぉぉぉ!」「スズネちゃんかわいい!」
「みんなー、応援よろしくねー!」
ビキニ姿になったスズネに、ギャラリーの注目が一気に集まる。この番組一の見せ場といったところか。番組のためにも、たとえ勝負に負けても、ミミカのパーカーも剥いでやらないとな。
とはいえ、さっきのような奇抜な作戦はもう使えないだろう。操縦士狙いも、相手は強く警戒しているはずだ。俺は考えがまとまらないまま、アイスに牽制だけは続けさせていた。もちろんそう簡単に当たるわけもない、相手も牽制射撃をしてくる。このままでは、後ろから狙っているスズネの一撃が当たる可能性の方が高い。
仕方ない、やや正確性に欠けるが、アイスの能力を信じよう。
「アイス、次の直線に入ったら、真上に数発ペイント弾を撃ってから、牽制弾を撃ってくれ」
「う、うん、わかった」
弾の初速、空気抵抗、空中での弾の滞在時間を考慮して、約十秒後に弾は落下するはずだ。浮き輪の速度を考えると、真っ直ぐ走れば約十四メートル。相手はこちらの約四メートル後ろを走っている、ということは……。
「アイス、撃ち込む時は垂直じゃなく、前方の1.17度傾けた88.83度の方向へ撃ってくれ」
「え、それって……」
「しー」
俺は人差し指で内緒の合図をした。
「任せて、お兄ちゃん」
よし。次のカーブを曲がったところで勝負をかける。
アイスは上空に数発撃ち上げると、すぐにスズネに向かって叫んだ。
「スズネちゃん!有利な後ろをとってるのに、まだ当てられないのー?」
「なっ、言ってくれるじゃない!」
いいぞ、アイス。上空への射撃を挑発でうまく隠したな。
「すぐに、当ててやるんだから!」
スズネがペイント弾を構えた、その時。
「きた」
上空からスズネをペイント弾が襲う。そのうちの一つがスズネの肩にヒット。
「いったー!」
「よっしゃー!」「やったね、お兄ちゃん!」
(まあ、普通の人間が88.83度の角度で撃てって言っても絶対無理なんだけどな)
ギャラリーも、たまたま上に撃ったペイント弾が命中したと思うだけだろう。
「やってくれたわねー!」
スズネは悔しさに顔を歪ませる。
「スズちゃん、後は任せて!」
最後のミミカがパーカーを勢いよく脱ぎ捨てて叫ぶ。
「さあ、決着をつけましょう!」
これで、お互いライフは残り一つずつ。射撃士はミミカとアイスだ。
やっと、追いついたぞ。
続く




