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第19話【アイドルの狡猾な戦略】

「ふふん、女の子だからって舐めないでもらいたいわね」


スズネが意地の悪い笑みを浮かべる。


「くっ……」


一度後ろをとられると、体勢を取り返すのは難しい。あいつらのように「わざと転倒」なんて演出は、俺たちが毎回やっていては番組的にもつまらないだろう。


俺は浮き輪の前方で蛇行操縦しつつ、アイスに射撃を任せるしかない。


「もう、ぐにゃぐにゃと走行して、狙いが定められないじゃない!」


スズネが不満そうに叫ぶが、横でミミカが冷静にスズネを諫める。


「大丈夫だよ、スズちゃん。狙いにくいのは相手も同じはず。視界はこっちの方が広いんだから」


ミミカの言う通り、俺は背後で何が起こっているか見えないため、狙われにくいように操縦するだけで手一杯だ。


「アイス、狙えるか?」


「んー、ちょっと難しいかも」


やっぱり、激しく蛇行したままでは照準は定まらないか。


「相手はどんな感じだ?」


「こっちに合わせて蛇行してる」


そうだよな。真っ直ぐ操縦していたら、俺たちを追い越してしまうし、狙われやすくなってしまう。こうなると勝負は平行線だ。何か手はないものだろうか?


「さあさあ盛り上がってきました!お互いに狙いが定まらないまま、果たして勝負はつくのかー?」


ナレーションの言葉が突き刺さる。こっちは真剣だが、長時間この状態では番組として良くない。


「ねえ、お兄ちゃん」


「どうした?」


「相手も蛇行してるんだけど、ちょっとだけこっちと違うの」


「どう違うんだ?」


「ロータリーの内側を、小さく蛇行してるんだけど」


「それって!?」


「気づくのが遅いわよ、元AV嬢さん」


気づくと、俺たちの真横にスズネがいた。


「はい、これで2ヒット目」


アイスは横からスズネの攻撃を喰らってしまった。


俺たちは相手の動きが見えないから、とにかく大きく蛇行して回避に努めるしかなかった。だが、相手は初めは同じように動いていたものの、じわじわとロータリーの内側を回ってこちらとの距離を詰めていたのだ。


ずっと大きく蛇行していた浮き輪に乗るアイスは、照準を合わせることができず、息の合ったスズネとミミカの連携にやられ、俺たちは二点も先制されてしまった。


被弾したのはアイスだが、ルール通り、今度は俺が射撃士だ。


「まだまだこれからだー!」


俺は声を上げ、水着の上に羽織っていたパーカーを勢いよく投げ捨てた。


すると、どこからともなく、ギャラリーの罵声が飛び交う。


「ヤローの裸なんか見たくないだろ!」


「さっさとひっこめー!」


(確かに、男がパーカーを投げ捨てるところなんて、番組の中で一番いらないシーンだったな……)


だが、相手はただのアイドルじゃない!俺はドヤ顔するスズネを睨み、逆転の作戦を考えるのだった。


「こらー!スズネちゃんをやらしい目で見るなー!」


くそっ、かっこよく締めたいのに、ギャラリーからの罵声でぜんぜんカッコつかない!


続く

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