第18話【現役アイドルの裏戦略】
「それでは、『新人アイドルVS素人カップル対抗 水着でサバゲー対決』、開始します!」
番組のディレクターらしき男性のハイテンションな声が、閉館後の静かなプールサイドに響き渡った。
「いいか、アイス。始まる前に言っておくが、勝つためとはいえ、人間離れした能力は使っちゃダメだぞ」
「うん、わかった!」
(まあ、せいぜい視聴者が楽しめるように全力を出そう。こういうのは、強すぎても弱すぎてもダメだからな)
俺はそう割り切る。アイスの人間離れした身体能力を使えば一瞬で勝てるが、それでは番組にならないし、何より騒動の元だ。
「それではルールを説明します。今回はロータリープールを使ってペイント弾で撃ち合いをしてもらいます。」
(ロータリープールは昼間に入っていた流れるプールのことだな)
「二人一組で、二人乗りのモーター付き浮き輪に乗り、一人が操縦士、もう一人が射撃士となって相手に攻撃してもらいます。この時、操縦士への攻撃はカウントされず、射撃士へのヒットのみカウントします。射撃士が撃たれた場合、操縦と射撃を交代してください」
なるほど、なかなか良くできたルールだ。
「でもなんで、水着の上にパーカーを着せられたんだ?」
「なお、被弾した場合はパーカーを脱ぎ捨てることにより、ライフを一回だけ回復できます」
「つまり、ライフは一人二個ずつってことか。パーカーを脱ぎ捨てる演出が、視聴者を喜ばせそうだな」
その説明を聞きながら、アイスがキラキラした目で俺を見上げた。
「お兄ちゃん、わたし操縦士やりたい!」
「おお、いいぞ。それなら、アイスのビキニ姿を晒させずに終わらせてやる」
とりあえずいろいろと問題が起こる前に俺が射撃士となって、一気に勝負を決める。
試合開始のホイッスルと同時に、二つのモーター付き浮き輪がロータリープールを回り始めた。
「こういうバトルの場合、後方から狙う方が有利だろう」
「アイス、なるべくロータリーの外側を回るんだ」
「はーい!でも、なんで?」
「大回りした方が、走行距離が伸びる分、後ろをとりやすくなる」
「りょーかーい!」
俺たちはアイスの操縦で外側を回り、アイドルチームの浮き輪の背後を狙った。射程圏内に入ったことを確認し、俺はペイント弾を構える。
「もらった!」
俺はスズネにペイント弾を向けた、その瞬間。
突然、スズネの姿が目の前から消えた。
「おおっと!キティキャットチーム、転倒だぁー!」
実況らしき声が響く。
「いやーん、びしょぬれー!」
ミミカが操縦を誤ったのか、アイドルチームの浮き輪がひっくり返ってしまったのだ。
「なんだよ、そんな操縦じゃ話にならないな」
俺が呆れていると、体勢を立て直した二人が後ろから迫ってきた。
「!?、これが狙いか!」
そう、二人は「転倒による美味しい演出」と「後方確保」を同時に取るため、わざと転倒したのだ!
「くらいなさい!」
浮き輪の上では避けることもできず、俺はスズネに背後から撃たれ、ペイント弾が俺のパーカーの背中に炸裂する。
「……ッ、こいつら、結構やるな」
俺はそう呟き、すぐに射撃士の役目をアイスに交代した。
続く




