第16話【プールサイドの誤解】
「おーい、走ると危ないぞ!」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん!心配しすぎー!」
今日はアイスとリゾートプールへ遊びに来ていた。なんでもテレビでCMが流れているのを見て、アイスが「あのお姉さんが着ているビキニが着たい」と言い出したのだ。さすがに中学生の見た目のアイスにビキニは早いと判断し、フリル付きのセパレート水着を買ってやった。
このリゾートプールはかなり規模が大きく、大型のスライダープールや子供向けのエリアも充実している。今日の客層も実際子連れの家族がほとんどだ。
俺たちはまったりと流れるプールでぷかぷか浮いていた。
すると、プールサイドで従業員たちがざわつき始めた。何人かの従業員が、熱心にお客さんたちに声をかけているようだが、何か探し物だろうか?
休憩時間になり、プールからあがると、一人の女性従業員がまっすぐに俺たちの方へ歩いてきた。
「すみません、ちょっと困ったことがあって、ご協力をお願いできないでしょうか?」
「お断りします」
俺は用件も聞かずにキッパリと断った。アイスが絡むと、ろくなことにならないと経験から知っている。特に、人目につく場所でのトラブルは避けたい。
「えー、困ってそうだし、話だけでも聞こうよ、お兄ちゃん」
アイスがおせっかいを焼きだす。
女性従業員は、気を取り直したように俺たちに尋ねた。
「えっと、お二人はご兄妹ですか? 妹さん、お名前は?」
「はい!わたしは元AV嬢のアイスです!」
またこれだ。俺は思わず天を仰いだ。せっかく遊びに来たというのに、やはり厄介事の神様は俺から離れてくれないらしい。
女性従業員は一瞬、言葉を詰まらせ、顔を引きつらせたが、すぐにぶつぶつと独り言を言い始めた。
「元AV嬢?……流石にまずいか? いや、でも、もう引退してるなら関係ないし、むしろ抵抗は少ないはず……」
何を一人で納得しているんだ、この人は。俺は不安に駆られながら、早くこの場を立ち去りたい衝動に駆られた。
女性従業員は突然、顔をパッと明るくし、俺たちの方を向き直ると、満面の笑みで告げた。
「あの!二人とも、テレビ出演してくれない?」
「何ぃぃぃぃーっ!」
俺は思わず叫び声をあげた。
続く




