第11話【その名はキャンディ】
「あなた、キャンディって言ったわね。それに『現役AV』だなんて…」
アイスは、今も地に伏せる少女を睨みつけながら言った。
「驚いた? 大人しくお兄ちゃんを渡してもらえれ――」
「違う! ちゃんと『嬢』をつけなさい。現役AV嬢よ!」
「現役AV嬢?」
キャンディは一瞬動きを止め、戸惑ったように首をかしげた。またアイスがわけのわからないことを言っている。しかし、キャンディは俺が思っていたよりも少しは賢いのかもしれない。アイスの勘違いに気づいて、この滑稽なやり取りは終わるだろうか?
すると、キャンディはフッと笑い、高らかに叫んだ。
「そうか! わたしは現役AV嬢のキャンディ! そこの男を昇天させるためにやってきたわ!」
やっぱり、ただの天然だったー!
周りにはどんどん人が集まってくる。「何だ何だ? 撮影か何かか?」と、好奇の視線が俺たちに突き刺さる。キャンディはそんな状況を意にも介さず、さらに続ける。
「さあ、青斗。大人しくわたしにイカされなさい!」
もはや発言に悪意を感じるのは俺だけだろうか?
「だめ! お兄ちゃんはあなたにはイカさせない!」
アイスは、どこまでも真剣な顔でキャンディに反論する。二人にとっては超シリアスな戦いの始まりなのに、周りの誤解は広まっていくばかりだ。社会的に俺が昇天しそう。
「とりあえず場所を変えよう! お前の目的は俺だけなんだろ? 周りに被害が及ぶのは避けたいんだ!」
俺が叫ぶと、キャンディはニヤリと笑った。
「そう言って、逃げる気だろ? みんなが見ている前で、盛大にイクがいい!」
だめだ。これ以上、喋らせない方が良さそうだ。
「アイス、任せていいか?」
「もちろん! 何があっても妹としてお兄ちゃんを守るのが、元AV嬢のわたしの役目だからね!」
いや、アイスにもあんまり喋らせない方が良さそうだな……。
こうして、公園の真ん中で、戦いの火蓋は切って落とされた。
続く




