第10話【現役AV、公園に降臨】
ある日の夕方、俺とアイスは近所のコンビニに買い物に出かけた。帰り道、公園を通りかかると、数人の子供たちがボール遊びをしていた。その傍らでは、母親たちがベンチに座っておしゃべりに興じている。
すると、子供が投げたボールが、公園の大きな木に引っかかってしまった。子供たちは残念そうにしょんぼりしている。それを見たアイスが、笑顔で言った。
「わたしが取ってあげるね」
俺が止めようと手を伸ばす間もなく、アイスは二メートルほどジャンプし、木の上のボールを軽々と掴んで子供たちに返してやった。そういえば、人間になったとはいえ、火事の時に俺を抱えて家から救出したように、人間離れした身体能力は健在だった。
子供たちは目を輝かせ、アイスに駆け寄ってくる。
「すげーお姉ちゃん! 何者なの?」
「わたしは元AV嬢のアイスだよ」
お決まりの自己紹介に、俺はまた頭を抱えた。案の定、近くにいた母親たちが顔を見合わせ、ヒソヒソと騒ぎ始めた。子供には意味がわからないとはいえ、このままでは不味い。どうにかしてこの場を収めなければと焦った、その時だった。
上空から、突如として女の子が降ってきた。いや、降ってきたというより、正確には真っ直ぐに俺をめがけて蹴りを放とうとしている。
「お兄ちゃん、危ない!」
アイスが即座に気づき、俺を抱えてその場を飛び退いた。俺がいた場所に、少女の蹴りが地面をえぐる。
よく見ると、その少女はアイスと瓜二つの顔立ちをしていた。もしや、そう思った瞬間、少女が叫んだ。
「わたしは現役AVのキャンディ! 青斗、あなたを昇天させるためにやってきたわ!」
その声に、周りの母親たちの騒めきが、ざわめきに変わる。
いったい何がどうなっているんだ。平穏な日常は、唐突に終わりを告げた。
続く




