差別試行
昼時。ファーストフード店で俺たちは食事をしていた。
というか、休日のバーガーチェーンを舐めていた。ここまで人がいるのか。右を見ても左を見ても家族連ればっかりだぞ。
慣れた手つきで歩美がポテトを食べている。
目が見えないのにどうやって食事を食べているのだろう。
そんな疑問を抱いたことを恥じて、かぶりを振った。
なに考えてるんだ。俺。
こんな思考、差別じゃないのか。
*****
帰りの電車の中で歩美は眠っていた。
俺の肩に頭を乗せて。少しのいびきを立てている。
美しいナターシャの様を思い出せた。
腹の中心からふつふつと沸き上がる感情に。これが性欲だと認識してしまったことに、言い表せない醜態を感じる。
俺の手で彼女に欲の行使をしたい、という渇望に。
なんでこんなにも。なんでこんな感情を抱いてしまうのだろうか。
彼女は純潔なのに。ここまで俺色にこの子を染めることになんの意味があるのか。
それが恋慕なのか?
◇◆◇◆
電車から降りて白杖を突きながらカツーン、カツーンと歩き去っていく彼女。その背を眺めながら俺は思う。
彼女は、彼女の幸せとはなんだろうか。歩美にとっての幸せ。
普通なら目も見えて、友達や家族の笑っている姿を知れるものなのに。そういった情報が遮断されて。
もう一度思う。なにが幸せなのだろうか。
アニメの副音声で喜んで。自分のことよりも彼氏のことを心配して。
だからこそ、俺は決意した。
歩美を裏切るような、悲しませるようなことはしない、と。
◇◆
「ただいま」
靴を脱いで玄関に上がると仁王立ちの女王様がいた。否、姉貴の友利。
「あんた、恋人できたでしょう」
形の良い眉を引くつかせながらそんなことを言いのける友利。俺はきっと変な顔をしていることだろう。
「あのさぁ、俺ももう中坊。十四才なんだよ。恋人ぐらい出来るよ」
「普通の恋人なら干渉しない。でもあんたの彼女は――」
「あ?」
俺は姉を睨んだ。面食らった友利は言い淀みながら。
「駅で見たのよ。白杖を突いて歩いていたあんたの彼女。いい? 辞めときなさい。障がい者の子と付き合うのは簡単じゃない――」
「姉ちゃんになにが解るんだよ!」
怒号を発したあと、自室に閉じこもった。




