デート前の準備
恋人が出来た。
はて、どうしよう。
今日は土曜日。初めて出来た恋人とウィンドウショッピングをするのだ。
さて、困ったな。
俺、ショッピングなんてアホな四面楚歌の妹としかやってないぞ。
「お兄ちゃん。プレステ貸して」
遠慮なく俺の部屋に入ってきた八方美人な妹――未来。茶髪ロングを揺らしながらうだる気な雰囲気。
「ちょ、勝手に入ってくるなよ」
「なに、シコってたの?」
「こら。女がそんなお下品なこと言うな」
「理想、願望押し付けてくんなよ。あと、女子、または女性な。女って言うな」
「理想、願望って韻を踏むな。お前はラッパーか。あとお前ごときに女性なんて敬称使うわけねぇだろ。『女』で充分だわ。やーい、女」
「はいはい」
あっ、相手にされてないわ。これ。お兄ちゃん、悲しいぞ。
「って、プレステの『無双乱舞4』が無いじゃん。どこやったの!」
「いろいろあって売った」
すると未来が軽蔑の眼差しを向けてくる。
「あんた、それでもゲーマー?」
「どういう言い草だよ。それ」
「命よりも大事なゲームを売り払うだなんて。そんなの考えられないから」
「いや、そうかもしれんが……命の次に大事なゲームよりも大事なものがあってだな」
ますます蔑視してくる妹。もう耐えられないんだが……
「なによそれ。一応聞いてあげる。どうせしょうもないことだろうけど」
「デートだよ。恋人とのデート」
海外のカートゥーンアニメのように口を大きく開けて茫然としだした。
「お兄ちゃんが、デート?」
「ああ」
「この地球上にお兄ちゃんのことが好きな人が私とお母さん以外に存在するの?」
「ん? 唐突なブラコン発言?」
だが俺の言葉を無視してどんどん顔を青ざめさせていく。
「分かった。なぁんだ、美人局だ」
「おい、今すぐお前のその失礼な思考回路を断ち切ってやるから頭向けろ。泣くまではたいてやる」
「うっ、暴力反対!」
あっかんべーをしながら未来は部屋を出ていった。全く、お騒がせな妹だ。
ジャケットを羽織って、姿鏡の前に立った。
「よし。行くか」




