ギャルになって告白を
「なぁ、お前ってギャルになりたいか?」
「別に……」
歩美は点字が印字されている特注の海外文学を読んでいた。
「でもさぁ、俺ギャル好きだぜ」
「…………だからなに? 手の感覚に集中したいんだけど」
「あのなぁ、そういうところだぞ! お前に友達が少ないのは! この本の虫が!」
思わずこちらが気圧されてしまいそうなほど睨み付けてきた。
「な、なんだよ」
歩美は眉をひそめる。「私は虫じゃない……」
思わずずっこけそうになる。こいつ、なにかずれてるんだよな。
「おっ、坂本じゃん!」
生徒指導とバチバチに喧嘩しまくっている、金髪ツインテールの柏原が笑顔を振り撒きながらやって来た。
「そう言えばミミンパズル、やってる?」
「ああ、もちろん」
ミミンパズルとは女子中高生の間でも爆発的人気がある対戦型パズルゲーム。昔で言うぷよ◯よみたいな感じ。
「じゃあ、ID交換して。家に帰ったら対戦リンク送りたいからさ」
「ああ。いいぜ」
一通り交換作業を終わらせると、柏原はまた笑顔を見せながら去っていった。
「ゲーム、好きなんだね」
「ん? ああ、まあ」
「ちょっと疑問なんだけど、なんで私と友達なんかやっているの? 話が合うゲーム好きの子とたくさん遊べばいいじゃん」
「そりゃあ、お前のことが好きだからな。それだけだ」
俺がそう言うと、歩美の顔面が真っ赤に染まった。
それを見て、なんでそんな変な顔をするのだろうと首をかしげてしまう。
*****
帰宅してから、ベッドに寝転んでパズルゲームを柏原と電話をしながら和気あいあいとやっていた。
「ねぇ、坂本」
「ん?」
「好きな人とかいるの?」
「いねぇけど」
「じゃあさ、私と付き合ってよ」
「んー、考えとくわ」
「なにそれ~」
それから一時間後。ゲーム画面を閉じた。
「恋人か。いらねぇかな」
人間として、好きとか嫌いという感情はある。
――例えば、歩美のことは友人として好きだったり。
でも、恋人とか、恋愛感情ってよく分からないんだよな。
*****
翌日。雑多なクラスに一輪の花がやって来た。
坂本は目を疑った。
金髪で毛先がカールしている、スカートも短めの女子――柏原ではない。
歩美だ。
坂本の目の前にやって来て、驚愕の一言を発したのだ。
「昨日の告白の件だけど……いいよ。付き合おうよ」
正直、意味が分からなかった。




