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4話 入学試験

1章完結まで毎日21時更新です!よろしくお願いします!

 入学試験。

 これをクリアしないことには始まらない。


 しかし両親ともこれは全く心配していなかった。

 アンジェラのような神童が通らないはずがない。

 むしろ、その力を発揮しすぎてアンドリューではなくアンジェラが成り変わっているのではと疑われる方を心配していた。


 アンジェラは「くれぐれも普通の子供のように受け答えしてね」と普通の子供にはされない言い含められウィーストンに向かった。




 この国、バービカン王国で1年に生まれる貴族男子の数は準貴族(準男爵、ナイト爵、ジェントリと呼ばれる地主階級)を合わせても約3万5千人。

 その中でエイルズベリーに入学できるのはたった70人。


 その狭き門になぜボンクラな父アンジェイが入学できたのかといえば、彼の父と祖父が卒業生で、入学にあたって寄付金を山のように積んだからである。

 当時は血統と金で入学できたのだが時代は変わり、残念ながら今は通用しない。


 ただ、試験といっても5歳に筆記試験をしてもあまり意味がない。

 従って入試は面接のみで、校長と9つある寮の寮監が審査をする。




 アンジェラとアンジェイ、マリアナは校門の前で馬車を降りた。


 バービカン王国で最も古く300年以上続く、歴史と伝統ある寄宿学校(パブリック・スクール)・エイルズベリー校。

 3人はその重厚な門を潜り、指定された建物の部屋を目指した。


 「ほらアンジェ……アンドリュー。そっちの建物が数学棟、こっちが美術棟、その奥が文学棟だ」


 敷地内には見るからに歴史を感じさせる校舎がいくつも見えた。


 「授業を受ける教室が学校の中のあちこちにあるのですか?」

 「あぁ。でも移動時間は5分しかない。入り口に近いこの辺りから一番奥の社会科棟まで行くのは全力で走ってもギリギリ間に合わない」

 「間に合わないんですのね」


 マリアナがふふふと笑い、つられてアンジェラ、アンジェイも笑った。


 (あぁ、ここに入学したらこんなふうにお父様やお母様とお話できなくなってしまうのね……)


 アンジェラは少し寂しくなった。




 試験が行われる部屋に着くと、ちょうど前の人の試験が終わり出てくるところだった。

 アンジェラと同じように両親に付き添われた男の子は顔を真っ青にし、手足はプルプルと震えていて、見ていて可哀想になるくらいだった。


 (中でいったい何が……?)


 アンジェラが気になって去っていく男の子の背中を見ていると名前が呼ばれ、部屋に入るよう促された。


 父に教えられたように、扉を3回ノックして「どうぞ」と返事があってから入室。

 アンジェラはきちんと淑女の礼ではなく、腰を45度に折り、両手を握り右腕は胸の下に、左腕は背中に回す男性の礼をした。

 父も隣で同じように、母はスカートを両手で少し持ち上げ軽く腰を折る淑女の礼をしてから顔を上げた。


 椅子には勧められてから座る。


 対面には一番年配の白髪の男性__校長先生が座っており、その左右に5人ずつ年齢も国籍もバラバラであろう寮監たちが座っていた。


 受験生を見定める厳しい22の瞳に、それだけで大抵の子供は手足が震えだす。

 逆になんてことなく座っているような子は状況や空気が分かっていないニブニブな子供だ。もちろん落ちる。


 受かる子は緊張や恐怖を抑えつけることができる子供だ。

 アンジェラはそのどちらでもなかった。


 教師らを見つめ返すその瞳は好奇心に満ちあふれていた。

 彼らは一様に驚き、そして喜んだ。


 面白い受験生がきた、と。


 「それでは面接を始めます。まずは自己紹介をお願いします」


 校長の隣に座った優しそうな40代くらいの教師が進行役のようだ。


 「はい。アランドル伯爵家の長男、アンドリュー・アランドル、5歳です」


 喋り方も男の子らしく事前に矯正した。


 「何が好きですか?」

 「本を読むことが好きです」

 「何か得意なことはありますか?」

 「虫の名前を30言えます」


 これはアンドリューが得意なことだ。

 もちろん聞かれればアンジェラも答えられる。

 しかし本当は虫は苦手だ。触るのなどもってのほかだった。


 「我が校に入って何をしたいですか?」

 「たくさん勉強して、たくさん図書室の本を読みたいです。お友達も作りたいです」


 ここまでは家で練習したとおりの問答だった。


 「では次にお話を聞いてもらいます。内容を覚えてください」


 これも出題されると聞いて対策してきたものだ。


 「昔々あるところにおじいさん2人とおばあさん2人がいました。おじいさんたちは山へ芝刈りや竹を取りさまざまなことに使い、おばあさんたちは川へ洗濯に行ったり__」

 「家で料理を作っていました。そこに帰ってきた3人はそれぞれ手に何かを持っていました。一人は芝刈りで使った鎌、一人は背丈9センチくらいの子供、一人は大きな桃だった。__」


 アンジェラは先生の声に被せるように続きを話し出し、さらに続けようとしたところを慌てて制止された。


 「ちょっ、ちょっと待った。君、このお話全部覚えてるの?」

 「はい」


 小さな子供にはあることだ。気に入った本を親に繰り返し読んでもらったりして暗誦できるようになることは。


 「それじゃあ公平じゃないから別のお話にしよう」

 「昔々、一人の女性がいました。その人はかわいい子どもを授かりたいと思っていました。けれども、願いはいっこうに叶いませんでした。心から強く願っても、叶いませんでした。日々を過ごすうち__」

 「ついにいてもたってもいられなくなって、魔法使いのおばあさんのところへ行きました」


 これにもアンジェラは先生より先に暗誦してしまった。


 「これも覚えているの?」

 「はい。おにい……妹と何度か一緒に読んだので」

 「何度か……。何回か読んだだけで完璧に覚えてしまう?」

 「はい。これくらい簡単なお話なら覚えます」

 「そうか……。ここにある話は他には『3センチ修道士』と『ライオンとウサギ』『長靴をはいた犬』なんだけど」

 「全て覚えています」

 「そうか。それじゃあこの試験は飛ばして次にいこうか」


 次には簡単な国語の問題で言葉の意味を聞かれたり、口頭での計算問題など多角的に能力を測られた。


 「それじゃあ最後にまたいくつか質問するね」


 といって、これまでテストの進行役をしていた男性が校長の隣に座るもう一人の男性に目配せした。



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