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大地の系譜  作者: Melon
30/45

28

読んでくださってありがとうございます(’’ノ

「着いたな」

「そうね」


 梗汰達を乗せた馬車は、目的の場所に辿りついた。あたりは薄暗く、既に夕方である。

 馬車から降りると、自分達の馬車に繋がれている馬が目に入った。


(やっぱり角生えてる・・・・・・色も黒いし、なんか怖いぞ)


「なぁ、あの馬っぽいのの速度凄くなかったか?アズールが連れてたやつとは見た目も違うし、速度も全然違ったぞ」

「当たり前でしょ。普通の馬じゃないわ、あれは魔獣よ」

「え?」


 魔獣・・・・・・?あの時の狼と一緒なのか?

 梗汰は思わず軽く後ずさりする。


「何を考えてるのが分からないけど、あれは魔獣であって魔物ではないわよ。ある程度知能のある賢い魔獣なのよ」

「そうなんだ。なんて言う魔獣なんだ?」

「”ユニコル”、魔源マナによって身体能力が向上している馬よ。角に吸収した魔源が溜め込まれているの、そして自分の身に危険が迫ると、角から魔源を開放して外敵に襲い掛かったり逃げたりするわ」

「へー、凄いんだな」


 よく見るとつぶらな目をしている。

 なんだか無性に撫でたくなったぞ・・・・・・。


「ちょっと触っても平気かな?」


 確認するように瞳を見る。

 瞳は仕方ないと言った感じでため息を付く。


「大丈夫よ。ユニコルは敵意の無い者にはとても懐くの、でも数が少ないからとても高価だから傷つけないでよね」

「もちろん傷つけたりなんてしないよ、そんなに高価なのか?」

「そうよ。ユニコルはその性質上角に魔源が溜まる。ユニコルの角は魔具の良質な材料になるのよ。そのため昔乱獲されて、今では数がかなり少ないの。野生のユニコルは今ではもうまったく見ないわね。だから僅かに残ったユニコルは大切にされて高価で取引されているの。因みに毛が白いのが雄で、黒いのが雌よ」

「へー、そうなんだ。ちょっと撫でてくる」


 馬車を引いていたユニコルは白と黒、つがいなのかな?

 梗汰が近づくと黒い方が擦り寄ってきた。

 

(これは・・・・・・とても可愛いな!)


 近寄ってきた黒のユニコルを撫でる。すると気持よさそうに梗汰に頭を擦り付けた。

 白い方も軽く撫でる。


「もういいでしょ?早く行くわよ」


 瞳から催促の声が掛かる。


「わかったよ」


 名残惜しいが仕方ない、また後で堪能するか。

 またね、と声を掛け最後に一撫でする。


 そして、今更ながら目的地を確認する。


「おー、まさに辺境の地の館って感じだな」


 昔のホラーゲームに出てきた洋館みたいだ。

 ゾンビとか出てこないよな・・・・・・。


 門から少し離れたところに立派な館が見える。だがそれは、お世辞にも綺麗とは言えなく、言い方を変えると歴史を感じさせる・・・・・・つまりボロい。

 門も古いが、重厚な造りだ。

 森に囲まれたその館の周囲には、植物以外の物は見えない。

 一番近い村でも一時間はかかる。立地条件は最悪と言っていいだろう。


「なんでこんな偏狭の地で話し合いなんてしてるんだ?大きな町とかの部屋とか借りてやればいいのに」

「どの精霊術師の家にも関係の無い場所だからよ。誰かの影響が強い領域で話し合っても公平な話し合いにならないわ。だからこんな人里はなれた場所を選んで専用の建物を建てたのよ」

「あー、なるほどね」


 だからこんな誰も寄り付かないような場所でやるのか。


「話し合いの期間中は各家の責任者と、その同行者はこの建物で過すことになるわ。めんどうだから揉め事は起こさないでよね?」

「オレは子供かっ!ちゃんと節度ある行動を心がけますよ」 

「なら結構、付いて来なさい」


 瞳は門を開けさっさと敷地の中へ入って行った。


「ちょ、まって!」


 梗汰も慌てて付いて行く。


 馬車は館の裏手にまわっていった。おそらく裏手に馬小屋みたいな場所があるのだろう。


 少し歩くと館の入り口に着いた。


「門から館までが無駄に遠いなぁ」

「うるさいわねぇ、さっさと入るわよ」


 瞳は入り口の扉を開ける。


「おぉ、結構綺麗じゃん」


 古ぼけた外観と比べて、館の内装は豪華でとても清潔に保たれていた。


「埃一つ落ちてないじゃん」

「当たり前でしょ、ちゃんと住み込みの管理人が掃除をしているもの」

「そっか、管理人以外は普段は使ってないんだ。さすがに色々と不自由しそうだしね。」

「そうね。集まりのときだけしか来ないと思うわ」


 梗汰達は館の奥へと進んで行き、ある部屋の前まで行くと足を止めた。


「ここよ、多分私の家の者が来ているわ。・・・・・・お父さんがね」


 扉にはプレートが付いており、そこには”不知火家”と銘打たれている。

 瞳は軽くノックをし中に入った。

 そして扉は梗汰の目の前でゆっくりと閉まる。


 すごい勢いで扉が開いた。

 

「なんで入ってこないのよ!」

「え、いやオレは不知火家じゃないし、入っちゃだめな雰囲気かなーと」

「そんなの気にしないでさっさと来なさい!」

「ちょっ、引っ張んなって!どんな顔して会っていいか分かんないんだよ!全然しらねー人だもん、緊張するだろ!」

「うるさいわね、一体何しに来たのよ。ほら、入るわよ!」


 瞳に引っ張られるようにして中に引き込まれる。


「ほらっ、つれて来たわよお父さん。この人が新たな地属性の血統よ」

「ふむ」


 その部屋の中央に一人の男が座っていた。

 歳は50代後半ほどだろうか、瞳と一緒の黒い髪は後ろに向けて固められてオールバックになっている。身についている着物の様な物が、気難しい親父という雰囲気を漂わせている。


「こ、こんにちわっす」

「ふふ、楽にするといい」


 落ちつた声でその人は言う。


「えーと、不知火さんのお父様ですよね?」

「いかにも、私の名は不知火至焔しえん。不知火家の現頭首と言う事になっている。君のことは瞳から連絡があったよ。稲葉梗汰君、だね。君は渡り人で、地属性の精霊術の力が発現したらしいね」

「はい、その通りです」

「聞いてはいたが俄かには信じられない話だ。ちょっと見せてもらえないか?」

「あ、はい、わかりました」


 梗汰は鞄からルービックキューブを取り出す。


(力を見せるって、これでいいのかな?さすがにこの床をぶち抜くのはね・・・・・・)


 カタタタタタタ、カタン

 梗汰の手の上で、完成まであとわずかだったルービックキューブの各面が急速に動き、各面が綺麗に揃った。その速度は以前より格段に早くなっている。


「ふむ、確かに地の精霊の動きを感じる。どうやら間違いないようだ。君の事を話すのは会議の後半になるだろう、それまでは不知火家の部屋に居ると良い」

「分かりました。ありがとうございます」

「うむ、この屋敷には部屋は沢山あるが、各家の人数分しか部屋は用意されていない。その他の部屋は掃除もされてなく、とても住める状況ではないだろう。そして君の部屋は当然ならが用意されていない、だから瞳の部屋かこの部屋で過すことになるが、どうする?」

「ちょっとお父さん・・・・・・普通年頃の娘の部屋に男を泊まらせる?」


 瞳はとても冷たい目で至焔を見ている。

 

「そうか?お前なら気にしないと思っていたのだが」

「はぁ・・・・・・そうね。あたしは別に気にはしないけど、私の部屋にする?」


 瞳は軽くため息をつき、梗汰に目を向ける。


(普通に考えたら、年頃の娘である不知火さんとの相部屋はありえないけど、いきなりその親と一緒の部屋というのはさすがにキツイ、というか初対面の知り合いの親と、一緒の部屋とか無理だろ・・・・・・)


「オレはできれば瞳さんの所がいいですね。知り合いと一緒だと安心できるし」

「はっはっは、正直な男だな梗汰君は、そういうわけで瞳はそれでいいかな?」


 至焔は豪快に笑う。


(普通は娘の心配とかしないか・・・・・・、なんか色々と凄い人だな)


「まったく、あなたも遠慮ってものがないわね・・・・・・まあいいわ。変なことしたら燃やすし」


 ッボ

 瞳の指先に火が灯る。

 それは急激に勢いを増し、火の玉となって指の上に浮かぶ。

 ボンッ

 指先の火の玉は急激に体積を増し ――そして消えた。


(こっわ・・・・・・)


「あ、あはは・・・・・・そんなことするわけ無いじゃないですか」


(つーか人を簡単に消し炭にする力を持って分かってる奴に、変なことをするやつなんていないだろ・・・・・・)


「瞳も冗談はそれくらいにしなさい。まぁ今日はゆっくり休め、ガルダンからここまでは結構遠かっただろう、風呂場は部屋に付いている。自由に使うと良い、梗汰君の分の夕食も部屋に運ぶように言っておこう」

「そうね、今日はもう休むとするわ。また明日ね」

「ありがとうございます!では失礼しました」




 梗汰と瞳は部屋を出て、隣の部屋へと移動する。

 梗汰はさっさと荷物を置き、風呂場へ直行しようとしが、

 ボンッ

 風呂場の扉に手を伸ばそうとした瞬間、梗汰の目の前に火の壁が現れた。


「ひぃいいいいい、な、何すんだよ!危ないだろ!!」


 すぐさま振り向き、瞳に抗議する。

 尋常じゃないくらいビックリしたわ!


「ちょっと、あたしが先に決まっているでしょ、あなたは後よ」

「んなっ、こういうのは早いもん勝ちだろ!」

「ふんっ」


 瞳の指から火の玉が発生した。


(ぅ、そっちがその気なら)


 梗汰は床に手で触れようとして  ――その場から飛びのいた。 

 梗汰が触ろうとした床が発火したのだ。

 慌ててその場から離れる、発火した床を確認するが、そこには焦げ後すら残っていない。


「あぶねえええええ」

「梗汰の地霊術は発動が遅いわね。そんなんじゃダメよ?ただでさえ地霊術師は術を使うための媒介が必要なのに」


 バタン

 梗汰が扉の前から離れた隙に、瞳は風呂場に入り扉を閉めてしまった。


「ちょ!」


 梗汰は扉を必死に叩く。


「うるさいわね。あたしはもう裸だから、今扉を開けたら消し炭にするわよ?」

「ずるい・・・・・・」


 梗汰は扉の前で崩れ落ちる。

 扉の向こうでは衣擦れの音がする。


(うぅ、オレのリラックスタイムが・・・・・・一番風呂が)


「あなたのベッドは無いのだから、今の時間を使って自分で寝床でも作れば?」


 梗汰はベッドを見る。とても豪華なベッドだ。王宮のニーナの部屋とタメをはるレベルかもしれない。

 そしてベッドは一つしかなかった。


「仕方ない、このソファーで寝るか」


 梗汰はソファーに即席のベッドを作る。


「うんうん、我ながら良い出来だ。女性は風呂の時間長そうだし、ちょっと横になって待つか」


 ソファーに横になり毛布を被る。

 座っていたとはいえ長旅で疲労が溜まっていた梗汰は、急な睡魔に襲われた。


(あ、これ多分寝るな。あと 1 ふん ・・・・・・)





「梗汰、出たわよ。ってもう寝ちゃったのね」


 瞳はバスタオルを体に巻きつけただけの状態で風呂場から出てきた。

 もう一枚のタオルで髪の毛を乾かしながらベッドに座る。


「ふふ、疲れていたのね。夕食の時間までゆっくり寝るといいわ」


 瞳はバスローブに着替え、部屋から出る。


「ふぅ、夕食の時間は少し遅らせてもらいましょうかね」

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