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そして精霊術師の会合への出発当日。
梗汰達は王都の門の前に居た。
「と言うか、ついて行く気満々のところ悪いのだけれど、あなたはお留守番よ。サイラちゃん」
「・・・・・・!」
サイラは”なんで!”と言った顔をする。
リュックサックの様な背負うタイプの鞄をパンパンに膨らませ、サイラは馬車の隣に立っている。
(本当に着いて来る気だったのね・・・・・・)
「で、でも!私が付いていかないとコータさんが何をしでかすかっ」
「っておい、子供かオレは」
ズビシッ
思わずサイラの頭にチョップをいれる。
「っきゃ、コータさん!背が縮んだらどうしてくれるんですか」
「乙女の頭にチョップとは感心しないぞ、コータ」
「・・・・・・う」
ニーナが脇でニヤニヤしながら見ている。
「まぁ、それは置いといて。サイラよ、君が着いていくのは無理だろう」
「なんでですか?」
「これからコータが行くところは精霊術師の会合だからな、精霊術師以外は参加できないんじゃないか?」
そう言ってニーナは確認するように瞳の方を見る。
「そうね、道中は一緒に居たとしても、目的地まで一緒に居ることは出来ないわ」
「そんなー」
サイラは哀しそうな顔をして梗汰を見る。
・・・そんな目でオレを見ないでくれ、”もちろんいいよ!”っておもわず言いそうになる。
甘いぞオレ、ここはきっぱりダメと言わないと!
「ごめんよサイラ、わるいけど今回は留守番を頼む」
「むー仕方ないですね、今回は諦めます」
サイラも分かってくれたようだ。
ん、サイラが両腕を伸ばしてる、なんだ?
「んー」
「?」
「んんー!」
「えーと、なに?」
「ん"-!!」
サイラは相変わらず手を伸ばしてこっちを見ている。
心なしか不機嫌オーラが出てる気がする。
「コータ、気付いてないのか?」
ニーナが有り得ないといった表情で梗汰を見る。
「本当は気付いているんでしょ?」
瞳もジト目で梗汰を見ている。
・・・・・・もちろん気付いておりますとも。でも、でもな!恥ずかしいだろ!
「恥ずかしいんだよ!ちょっとお前等向こう向いてろ!」
「それが人にお願いする態度なのか?コータ」
「ちゃんとお願いしなさいよ」
「・・・・・・向こうを向いていてください、お願いします」
っく、こいつ等、いい性格してやがる。
「最初からそう言えばいいのよ」
瞳とニーナは後ろを向いた。
「んーんー」
「分かったよサイラ」
梗汰は両手を広げているサイラを向かい合う。梗汰はサイラの身長に合わせるように軽くしゃがみ、抱き合った。お互いの顔がすぐ横に見える距離だ。サイラが強く抱きついてくる。
「すぐに帰ってきてくださいね」
「うん、できるだけそうするよ」
梗汰が離れようとすると一瞬だけ、また強く力がこめられた。
このまま手を離したくない、そう思ってしまう。
「さぁサイラ、オレはもう行くよ。手を離しておくれ」
「・・・・・・仕方ないですね」
サイラがゆっくりと梗汰の体から手を離した。
「うんうん、なかなか感動的だな」
「そうね、こう見ると本当の兄妹にしか見えないわ」
「え?」
声のしたほうを向くと、瞳と目が合った。
・・・・・・え?
後ろを向いていたはずの瞳とニーナは、二人揃って仲良くこっちを見ていた。
え、なんでこっち見てるの?オレのお願いはどこに行っちゃったの?
「・・・・・・いつから見てた?というかなんで見てたの?」
「そんなの、最初から見てたに決まっている」
「最初は面白そうだったから見てたけど、なかなか感動的だったわ」
「・・・・・・そっすか」
もうどうでもいいや・・・・・・このまま消え去りたい。
「そう落ち込まないの、そんな顔しているとサイラも悲しむわ」
そうさせた本人が言わないでくれ・・・。
しかし瞳の言うとおり悲しい顔をするわけにもいかないな。
「そうだな、オレの笑顔を披露するときがきたか」
ニコッ
どうだオレのスマイルは?
「・・・・・・きもい」
「変な顔です」
「正直それは無いわ」
「・・・・・・泣いていいかな」
オレのライフはもう0ですよ・・・・・・、もう口撃しないでください。
「冗談よ、もう出発するからさっさと馬車に乗りなさい、荷物はそれだけね?」
瞳は梗汰を馬車に乗るように促す。
梗汰の持っている荷物は、鞄に入っている着替えと食料とルービックキューブ等。
あまり大荷物にしたくなかったので鞄一つに纏めたのだ。
「準備は出来ているようね、今回は特別にアメリア様から通行証を発行してもらったから、王都への出入りに時間はとられないわ」
「それは良かった」
瞳は馬車に乗り込む。
馬車にはガラス窓がついており、そこから外の様子が見られるようになっている。
(というか、この馬車えらく豪華だな、馬もなんかレベルが高い気がする。と言うか普通の馬じゃねーぞコレ、オレの知らない何かだ・・・・・・角生えてるし)
角の生えた馬のような何かにひかれている馬車には、梗汰と瞳、そして精霊術師の会合から派遣された御者の三人というメンバーが乗っている。
梗汰も馬車に乗り込もうとすると、
「そうだ、コータこれを持っていけ」
ニーナは布に包まれた物を梗汰に差し出してきた。
なんだろ?
「なんだこれは?」
「それはな、私とサイラで今朝作った弁当だ。ありがたく食べるんだぞ」
おぉ、そいつは嬉しい。
「ありがとうサイラ!嬉しいよ」
「いえいえー」
ニーナの隣に立っているサイラの頭をぽんぽんと叩く。
「・・・・・・私も一緒に作ったんだが」
「あはは、冗談だよ。ニーナもありがとな」
「うむ」
「じゃあ行ってくるよ、またなー。サイラを頼んだぞニーナ」
「うむ、任された。またな」
「・・・・・・あ」
梗汰が馬車に乗り込むと、サイラから悲しそうな声が上がった。
うぅ・・・・・・別れとは辛いものだ。
梗汰は窓から顔を出しニーナとサイラにむけて手を振る。
サイラ達も手を振りかえしているのが見える。
「コータさーん、ちゃんと戻ってきてくださいよ」
「オレが戻るまでいい子にしてろよ~」
「では行ってくるわよ」
瞳は反対側の窓から軽く手をひらひらさせている。
そして二人が見守る中、馬車は動き出す。
サイラは馬車が見えなくなるまで、その場で手を振っていた。
★
門から出た馬車は、もう見えない。
「ふぅ、行ったか、ではサイラ、私達も戻るか」
「・・・・・・そうですね」
サイラは寂しそうに言葉を返す。
「そう落ち込むな、今生の別れではないんだ。またすぐ会える。サイラも梗汰が行っている間は勉強を頑張るんだぞ」
「そうでした、ニーナさん教えてくださいね!」
「うむ、任せておけ」
二人は話しながら王宮へと戻っていった。




