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大地の系譜  作者: Melon
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26/45

24

 梗汰は体に違和感を感じ目を覚ました。


「か、体がうごかねぇ・・・・・・」


 体中のいたるところが痛むのを感じる。


「ぅ、筋肉痛か・・・・・・?」


 梗汰は昨日の瞳との戦いで激しく動いたせいで、筋肉痛を起こしていた。

 普段運動をしていない人が、マラソン大会で全力を出した翌日のような感じだ。


「痛てて、こりゃ辛いな。歩くのも嫌になる」


 梗汰はなんとかベッドから立ち上がり、普段の何倍もの時間をかけ着替えていると、

 ドンドン ドンドン

 梗汰の部屋の扉を叩く音が聞こえる。

 誰だ・・・人と会うのすら億劫に感じる。


「コータさーん、おはようございまーす。朝ですよー」

「サイラか、待ってくれ今ドア開けるから」


 梗汰はすぐさま着替えると、ノロノロと壁を伝い扉まで歩いた。

 部屋の扉を開ける。


「おはよーございまーす!」

「おは・・・・・・よぅっ!?」


 ”おはよう”を言う途中でサイラに腹部に突っ込まれ、そのまま抱きつかれた。


「ぅおっ、痛てて」

「あれ、どうかしたんですかコータさん?」


 サイラは抱きついた手を離し、心配そうに尋ねる。


「うん、ちょっと筋肉痛みたいなんだ。朝から体中が痛くてね」

「そうなんですかー、大変ですねー」


 そう言いながらサイラは、壁に手を当て体を支えている梗汰のわき腹を突付いた。

 ちょ、サイラさん何してんすか・・・・・・普通に、っつ、痛いんですけどおおおおお!


「さ、サイラさん、お願いやめてええええ」

「昨日私に心配を掛けた罰ですよー、ふふふ」


 サイラは更に体中を突付く。


「いて、いてて・・・・・・ホントに痛いんでマジ簡便!」

「仕方ないですねー」


 サイラは満足そうに、にやにや笑いを浮かべる。


「あはは・・・・・・、まぁとりあえず中入ろうか」


 梗汰はサイラを椅子に座らせ、自分はベッドに座る。


「んで、朝から一体どうしたんだ?なんか用があったり?」

「用がないと会っちゃいけないんですか?」


 サイラは相変わらずの笑顔を浮かべ続けている。

 っく、サイラめ・・・・・・分かってて言ってるな。

 身内にそんな事を言える訳がない。


「いやー、そんな訳ないだろ?来てくれて嬉しいけど、ちょっとビックリしちゃってね」

「嬉しいこと言ってくれますねー、じゃあ、これからは遠慮なく来ますね、合鍵も貰っておきます」


 ぅ・・・・・・なんだかサイラが怖く感じるぞ、逃げ場を失った感じだ。


「ま、まぁ程々にね・・・・・・」

「はい」


 良い顔をするなぁ。


「それで、用は無いって事でいいの?」

「ぁー、実は用が有って来たんです」

「それを先に言いなさい!」

「えへへ、すみません。えっとですね、瞳さんがコータさんのことを探していましたよ?」


 昨日の模擬戦関係の話だろうか。


「アイツがか、つかなんでオレんとこに直接来ないんだ・・・・・・」

「コータさんの部屋まで遠くて、行くのが面倒だったそうですよ。なので代わりに私が呼びに来ました。とりあえずみんなで一緒に朝ごはんを食べましょう!」

「めんどくさいからって、他人に御使いさせるのかいっ!何を考えているんだ・・・・・・アイツはバカか」

「バカで悪かったわね」

「・・・・・・え?」


 扉の方から誰かの声が聞こえた。というか不知火さんの声でした。


「・・・・・・」

「ええへー、実は一緒に来てたんですよー、びっくりしました?」

「・・・・・・びっくりした」


 なんで来てんすか、不知火さん。もはや寝起きドッキリレベルですよ。


「で、誰がバカですって?」

「うぅ・・・・・・え、と。もちろん・・・・・・オレのことです、はい」

「分かっていればいいわ」


 ふふん、と笑う。

 ・・・・・・っく、勝てない。


「こっちの用件は朝食の後にでも言うわ。とりあえずニーナの居るところまで行きましょ」

「行きましょー」

「ふー、こっちは寝起きだってのに・・・・・・」

「何か問題でも?」

「・・・・・・すぐに用意します」


 梗汰は顔を洗い、鞄に適当に荷物を詰め家を出た。




 筋肉痛で歩くのも辛い梗汰は、瞳に肩を借りて歩いている。


「いやー、不知火さんすみませんね。肩貸してもらっちゃったりして」

「うっさい、さっさと歩きなさい、・・・なんであたしがこんなことを」

「オレ一人だと歩くの辛くてさ、それにサイラじゃ背が足りないしね、はは。わるい・・・・・・」


 女性に肩を借りるなんて恥ずかしすぎる・・・・・・。

 我ながら情け無い。


「貸し一つだからね、覚えておきなさいよ」

「・・・・・・肝に銘じておきます。んで場所は?」

「王宮よ、アメリア様も同席すると仰っていたし」

「なるほど、んじゃそこまで頼むわ」

「うっさい、飛ばすわよ」

「・・・・・・すみません」




★


「遅すぎる、あまり俺を待たせるな。料理が冷めてしまうだろうが」


 ここは王宮のニーナとサイラの部屋、中央のテーブルには既に料理が置かれている。

 ニーナとアメリアは既に着席しており、梗汰達を待っている状態だ。


「コータ、なんで肩を借りて歩いているのだ?」


 ニーナさん、そこは出来ればスルーして欲しかった・・・・・・。


「あぁ、今オレ筋肉痛がやばくてね、歩くの辛いんだ。普通に歩いてたら時間がかかりそうだったから肩を借りたんだ。ここに着くのが遅れたのもその為だよ」

「女に肩を借りるとは情け無い奴だ」


 アメリアの言葉が刺さる。


「しかたねーだろ!痛いんだから」

「ふん」


 っく、鼻で笑いやがったな。


「そ、それにしても随分と大人数だな、まぁ賑やかなのは嫌いじゃないが」


 話題転換で話を逸らす。


「俺がここに居る理由は瞳から聞いていると思うが、俺もお前に用があってな、そして瞳の話とも関わってくる。まぁとりあえず食べてからにするぞ」

「そうか、では頂くか」

「うむ」

 

 アメリアが食べ始めると、それに続き他のみんなも食べ始めた。


「なあ、今日はそんな少なくていいのか?」


 もそもそと食べていたニーナに声を掛ける。


「コータ・・・・・・私は普段はあんなに食べないと言っただろう?」

「そだっけ?まぁいいや」

「よくない!まったく・・・姉さまからも何とか言ってやってください」

「そうだな。梗汰、あまり面白いからといってやりすぎると泣いてしまうから程々にな。ニーナは意外と泣き虫なんだ」

「そうなのか、了解した」

「姉さま!」

「ふふふ、冗談だ」

「まったく姉さまは!」 


 ほんとに賑やかだ、向こうの席ではサイラと不知火さんが何か話しをしているし。

 元の世界で家族で一緒に朝ごはんを食べてたのを思い出すな。


「そういえば梗汰、お前ロランからお金を貰ったそうだな、ロランから聞いたぞ」

「あ、そうだった。あんなにお金貰っちゃったから、後でもう一度お礼を言わないと」


 正直、硬貨ニ枚だけで足りたな。

 でもそのお陰で色々買うことができたから感謝感謝。


「それには及ばん、お前には給金を渡す、ロランから貰った分はアイツの気持だと思え」


 まぁもちろんその分の仕事はしてもらうがな、と付け加えた。


「仕事って?」


 戦闘とかやれって言われても無理だぞ。


「今お前が出来ることは瞳から聞いているからな、戦えなどとは言わない。お前の術は便利らしいと聞いた、道路や壁でも作ってもらう。まぁ力に慣れてきたら魔獣の駆除でもやってもらうがな」

「そうか、まぁそこまで細かい作業じゃなければ任せてくれ」

「そうさせてもらおう、俺の為に頑張って働け」

「りょーかい」


 まったく・・・態度の大きい人だ。

 まぁ偉いから何も言えないけどね、王だし・・・・・・。




 そして朝食が終わると


「さて、あたしからの用件を言いますね」


 ふむ、瞳からオレに用件とは一体なんだろ。

 やっぱ模擬戦についてのことか?


「アメリア様には言いましたが、梗汰には行ってもらうところがあります。新たな精霊術師の家系が誕生してしまったので、それを伝えに行かないといけません」

「めんどそうだな」

「梗汰、あなたに新たな精霊術師の血統が誕生することの異常さが分かる?」

「そんなに大変な事なのか?」


 異常?精霊術師は数が少ないが居るんだから、異常ってことはないだろうに。


「この世界での全ての精霊術師の血統は、全て把握され各々の家に所属しているわ。全ての精霊術師の祖先は、その属性を司る大精霊と繋がりを持つ者、つまり繋がりを持つモノ(コネクター)の血縁なのよ。それ以外で新たに精霊術師の血統が生まれるには大精霊の祝福を受けるしかないの。そしてそれはほぼ有りえない、大精霊の祝福を受ける人は500年に一度誕生するかどうかと言われているからね」


 まじかよ、繋がりを持つモノ(コネクター)の数が少ないってことは知っていたが、そのことについて考えたことは無かったからな、まさかそこまでとは・・・・・・。


「でもオレは渡り人だし・・・・・・」

「それなのよ、今までも渡り人は何人も確認されているけど、その中で精霊術が使えたという事実は無いわ。あなたはありえない前例を作ってしまったの」


 うげ、繋がりを持つモノ(コネクター)ってもう言い出せる状況じゃないぞ・・・・・・。


「そ、そうなのか」

「そうなの、あなたは・・・・・・」


 そこで瞳は一呼吸入れる。


「あなたは、新たな地属性の血統。”大地の系譜”としてこの世界に生まれた。だから来てもらうわよ。精霊術師の会合に、そこには今存在している精霊術師の各血統のトップが集まるわ。そこであなたの精霊術が認められれば、新たな地属性の家系に稲葉家が追加されることになるわ」


 瞳の顔は真剣だ、事の重大さが伝わってくる。


「もう連絡は送っているから、行かないという選択肢は無いわよ?」

「そうか、なら行かなくちゃいけないな。いつ行くんだ?」

「五日後よ、それまでに準備しておきなさい」


 五日後か、意外と早いんだな。

(つか偉い人ばっかの会合にオレ一人面接とかシャレにならんぞ・・・・・・)

 就職の面接の比ではないプレッシャーが襲い掛かることだろう。

 それを思うと今から胃がキリキリと痛む感じすら覚える。


「そこで、だ。俺からの話と言うのもそれに関係している」


 そこでアメリアが話に入ってきた。


「オレは現在お前の事をニーナの、つまり俺の血縁の知り合いと言う事で扱っている。お前が正式に精霊術師と認められたならば、お前が、渡り人が俺個人に雇われている事を家臣に伝える」

「それはいつなんだ?」

「今から二十日後に国の記念日の祭りがある、国成記念日だ。その日に発表する予定だ」


 いつの間にかホントに大事になっちまったな。

 国を挙げての祭りで発表とか、こっちも緊張するってレベルじゃねーぞ。


「だからな、瞳」


 アメリアは声を低くして言う。


「はい」

「梗汰をそっちでどうにかしよう、などとは考えるなよ?魔法を使えるのは精霊術師だけだはないからな」


 彼女はこう言っているのだ。梗汰をこの国に帰さないつもりなら、容赦はしない。

 アメリアはどうあっても梗汰を手元に置くつもりのようだ。

 彼女からは凄まじいプレッシャーを感じる。 



「分かっております。梗汰は国成記念日までには、梗汰を連れて帰ることを誓います」


 瞳は背中に嫌な汗を感じていた。


「よかろう」


 アメリアからのプレッシャーが収まった。


「その言葉、違(たが)えるでないぞ」

「承知しました」


 そしてアメリアは梗汰を見る。


「梗汰」

「なんだ?」

「お前は、向こうでお前を試そうと様々な事態が起こるはずだ。お前はこの国の者だ。決して甞められるなよ」

「了解した」


 そこでもう一度瞳を見る。


「瞳、梗汰の事を頼んだぞ」

「承知しました」

「うむ、では俺はここで失礼するとしよう」


 アメリアは席を立ち、扉を開け出て行った。

 

「ふぅ、アメリアは凄いな、今のは本当に王って感じがしたよ」

「お姉さまは豪快だが、類稀(たぐいまれ)なる知性を持っている。だからこそ他の兄弟を置いて王になることができたのだ」

「なるほど」

「私には王族の血は入っていないから関係はなかったが、お姉さまは小さい頃から王になるための教育をされていたそうだ」


 アメリアの父が前王、母方の血縁にニーナが入っている。

 よってニーナには王位継承権はない。


「たしか小さい頃に会ったことが有ったんだっけ?」

「うむ、私が小さい頃に何度か会う機会があってな。その度に面白い話を聞かせてもらったり、珍しいものを見せてもらったものだ。お姉さまには色々と教えてもらったよ、勉強では分からないことをな、この世の面白さを」

「そうか、それは良かったな」

「うむ!」


 ニーナは嬉しそうにアメリアのことを語る。

 小さい頃、ニーナには友達が居ないとアメリアが言っていた。その中で滅多に会えないアメリアと遊んだ記憶は、強烈な印象をもってるだろう。


(ニーナはアメリアに憧れているのかもな、あの自由な性格の姉を)


 だから性格や話し方も似ているのかもしれない。

 うん、家族の仲が良いのは良いことだ。


「私にはコータさんが教えてくれましたー」


 いつの間にか梗汰の後ろに居たサイラが背中に抱きついた。


「・・・・・・まったく」

「えへへー」


 サイラは笑って誤魔化そうとする。

 まぁ、もうしばらくはこのままでいいか。


「ふふ、サイラとコータは本当に仲が良いな。本当の兄弟のようだ」


 ニーナも笑いながら梗汰達を見ている。


「まあね、家族のようなもんだからな」




 その後も30分ほど他愛も無い話をし、朝食の場はお開きとなった。



 

 そして


 さて、どうやって自分の部屋まで戻るか・・・・・・。

 自室までの距離をどうするか本気で悩んでいた。

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