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大地の系譜  作者: Melon
21/45

19

今回は説明が結構長いです、単調になってしまったら申し訳ないです(’’ノ

翌日


「あなたは、精霊術をどういうものだと思っているの?」

「えと、それは精霊の力を借りて、この世界に事象として自分の意思を発生させるもの、だっけ?」


 梗汰がそう答えると、

 瞳は首を振りながら、ふぅと息を吐いた。

「あなた、それは本とかに載っているのをそのまま言ってるだけじゃない」

「そうなんだ」


 梗汰は現在、術師館の精霊術師用の部屋に居る。

 瞳に精霊術の基礎から教えてもらっているところである。


「あなたの世界での常識にでもとらわれているんじゃないの?」

「でも、オレの居た世界には精霊術師とかなかったし、この世界の精霊術で急に使えるようになったからなぁ」


 嘘はついてない。


「仕方ないわね、精霊術師の家系の子供なら誰でも知っていることだけど、精霊術についての概念を教えてあげるわ」

「うっす」

「基本的な事は、あなたの言っていた事でも間違いではないけど、そうね、あなたは地属性だったわね。昨日あなたは岩を発生させたけれど、それはどうやって発生させたの?」


 え、自分の中ではあたりまえすぎて、考えてもみなかった。


「それは、地面から岩を突き出す感じで」

「それは合ってるようで間違っているわ。あなたはここに来る途中で鉄を出したそうね」

「はい」

「あの場所であれほどの量の鉄が採掘できると思っているの?」

「あっ」


 そう言われて気付いた。

 普通に石や岩を発生させるだけなら梗汰の説明でもわかる、地面を固めて突き出しただけだ。

 しかし、鉄となると話は違ってくる。石と鉄では組成式が違うのだ。

 あの場所で地面を隆起させて、それを基に石の柱や土の壁などを発生させるなら分かるが、それ以外のものを出したと言う事は、単に地面を弄るだけの力ではないということだ。


「いい?よく聞きなさいよ。精霊術って言うのは、この世界という一つの仕組みに、精霊の力を借りて介入し、自分の意思をその属性に合った事象として発生させることのことを言うの、この場合の”いし”とは意思であり意志でもある。強く思う心そのもの、梗汰が鉄を出したときは敵を阻もうと強く思った結果、その意思の発現にもっとも近い現象を起こせるのが、あの場合だと鉄だったと言うわけよ」


 そこまで言って一度話を止める。


「例えば、この場所に”火”を出すとしたら、この場所に”火”が在るという事象を自分の意思として出す、精霊術師が望めばそれが現実となるのよ。だから普通に発生する術以外の”火”とは別物と考えるの、自分の意思で出した火なのだから、自分を燃やさないように意識すればそうなるし、対象の武器だけを燃やしたいならそう強く意識するの」


 なるほど、オレは今まで普通の物理現象と考え当てはめていたけど、もっと自由度の高い別の現象と考えるのか。


「だけど、だからこそ本物の”火”より劣ることもあるの、溶鉱炉などで使われている”火”は鉄すら燃やし溶かす。でも術者の意思が弱かったり”鉄は燃やせない”と心のどこかで思ってしまったら、世界はそういう”火”を発生させるの、つまり不安定なのよ、精霊術術師の発生させる術は」


”燃えないと強く思って出した鉄は燃えないだろうから、それを燃やしたり防いだりするのは術師の腕の見せ所よね、意思とか技量とか”と付け加えた。


「なるほど・・・・・・」

「精霊術師同士の戦いでも、文字通りお互いの意思のぶつかり合いになるわね、そうね・・・例えば、風霊術師の発生させた風とか燃やすこともできるわ。より強い意志で相手の意思を上回るのよ」

「ほほぅ」


 風とか燃やせるのか・・・・・・想像できねーな。

 しかし、ようは自分自身の常識からでて考えないといけないわけか。極端に言えば、自分が燃やそうと思えば、それは概念であっても燃やせるということか。

なるほどなるほど。


 しかし、概念なんてものを燃やすとしたら、それにはどれほどの意志力が必要なのだろうか。


「自分の発生させた現象も、相手の精霊に操作を奪われたりするのよ」

「というと?」

「つまり、簡単に言うと、火霊術師同士の戦いだと、お互いに火の精霊の奪い合いになったりするわけよ、同じ精霊を使って世界に介入しているからね」

「なるほど」


 ふむ、イメージがそのまま力となる感じでいいのかな?大体は分かった・・・・・・かな?

 そうなると、オレはこの世界よりある意味不利で、ある意味有利なことになるな。


 つまり、物理現象としての事象を当たり前だと教えられてきた現在の梗汰には、前の世界での物理現象の限界が、この世界でも梗汰の常識となっており、それが及ぼす影響も自身の常識の枠をでない、つまりそれ以上の力を想像できない。

 しかし、この世界では分からなかったり、まだ知られていない現象や知識、魔法が無い世界だからこそ発生する考え方、空想力などを梗汰は備えている。

 ゲームに登場する魔法がいい例だ。

 つまり前者に ――前の世界での常識にとらわれなければ、かなり自由度の高い術師となることが出来る。


 弟が持ってたゲームとか漫画に出てくるような力をイメージして派生させたりすれば、面白いことができそうだ。


 梗汰はさっそく思考にふけっていた。


「こら、ちゃんと聞きなさい、説明はまだ終わりじゃないわ」

「あ、はい」

「精霊術師の力は意思の強さで決定すると言ってもいいのだけれど、それでけじゃなくて、自分が操作できる精霊の数も影響してくるわけよ」

「つまり?」

「つまり!どれだけ強く思っても、自分の精霊を扱う技量が伴っていなければ意味が無いと言うわけよ」

「ふむ、ようは扱う技術と制御する意思が必要ってことか」

「そうそう」


 自分の言いたい事が理解してもらえたからだろうか、瞳は嬉しそうに微笑んだ。

 


「理解が早くて助かるわ、だいたいそんな感じだから、後は自分の腕を磨きなさいね」

「おー、ありがとねー」


 ふむ・・・・・・どうやら自分の力についての考えに、大幅な修正が必要そうだな。

 オレの力は”大地に属する物の質量と組成式を弄ることが出来る”そういう力という事にする。そういう力にすればいい。そう強く想う心が大切なはずだ!


 梗汰はテーブルに置いてあった本を手に取る。

 これの材質は木であるはず!なら!これも大地に属するモノと言っても過言ではない、はず!


 ふぅぅぅぅう


 梗汰は力を入れるように息を吐いた。


「梗汰?なにをしているの・・・・・・?」


 急に梗汰が本を持ちながら唸りだしたので、瞳は若干ひいていた。

 しかし、地の精霊が梗汰に集まるのを感じる。

 梗汰が本から手を離す。


 ドォン!


 本がぶつかったとは思えない音が部屋に響いた。

 本が落ちた部分の床板に穴が空いている。

 本は穴を空けたところで止まっていた、本には傷一つついていない。


「梗汰、あなた・・・・・・何をしたの?」


 梗汰は穴から本を軽く拾い上げると瞳に投げた。


「っひ」


 瞳は悲鳴を上げながらも反射的に本を受け取った。


 ――軽い!?

 なぜ?さっきは床に穴が空いたのに・・・・・・。


「梗汰、何をしたの?言いなさい」


 瞳の目は真剣だ。


「本も言うなれば地の属する物、本全体の質量を精霊を使って増加させたんだ、つまり精霊を重さとして発現させたと思ってくれ」

「・・・・・・!」


 絶句する瞳には気付かずに、梗汰は既に違うことを考えていた。


「精霊に重さを肩代わりさせれば、この逆のこともできそうだな。さすがに既に定まった物として作られている物の大きさは変えられないけど、これを応用すれば面白いことが出来そうだ」

「梗汰・・・・・・あなたは凄いことをするのね」

「ん?」

「そんな考え方は、今まで誰も考えもしなかったし、たとえ、それを見ても真似できるようなものじゃないわ」


 瞳の声は僅かに震えていた。


「それに・・・・・・昨日の岩の発生と比べて、精霊の編み方が格段に上手くなっているわ」

「ほんとか!」


 梗汰の中で自分の力に明確な方向性を与えたことで、精霊の捉え方も考え方も変り、それに伴って、少しずつ上達してきたとはいえ不安定だった精霊の動きが、今完全に安定した。力の方向性が今完全に定まったのだ。


「きょ、今日はもうこれでいいわね?一応、アメリア様にあなたの力のことを報告しておくわよ?もしかしたら近々仕事なんかがくるかもしれないから、ちゃんと構えておきなさいよ?」

「りょーかい、ありがとね不知火さん」


 梗汰と瞳は朝から話していたが、現在の時間は既にお昼に近い。


「ふぅ、ちょっと疲れたな、もうお昼近いしサイラのとこにでも行くかなぁ」

 

 梗汰は軽い調子で部屋から出て行った。

 その背中を瞳はじっと見ていた。


 あれほどのことを通常の術師ができるわけがない、熟練した精霊術師ならまだしも、梗汰から聞いた話によると、梗汰はまだ覚えたて。

 その状態であれほどの事象を発生させるのに必要な精霊を集め、なおかつ従わせた。瞳には、それがとても常人のできることとは思えなかった。

 何より、この世界の人とは、地の精霊術という力に対する考え方が違う、この世界の人では梗汰が見たものを見ても再現することは不可能に近いだろう、それだけ考えの違う世界から来たと言う事だ。

 つまり梗汰のあの力は梗汰だけのもの・・・・・・。


 そこまで考えると、嫌な考えを追い払うように瞳は首を振るった。


「ふぅ、何考えているんだろあたし、あれくらい熟練者なら似たようなことしても不思議でもないわ。

それにまだま私よりも術の編み方が下手だしね、うん、普通普通、ちょっと出来が良いだけだわ」


 そう呟くと、瞳はより効率のいい術の編み方について考える作業に移った。

 自らが戦うときのために、自分の技量を磨くのである。

 それがこの国の術師に与えられた義務なのだ。

 生活は約束されるが、戦争などの戦いなどには真っ先に駆り出される、この世界で、術師とはそういう存在なのだから。

 梗汰にもその時がくるだろう、いずれ。




 それにしても、梗汰がやったことは、重さという概念に手を加えたということに近い。

 その異常さに梗汰は気づいていない。

上手く纏めることができたか不安でならない・・・

変なとこがあったらすぐ修正しないとだー(’’ノ

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