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大地の系譜  作者: Melon
19/45

17

 昼食を終えてから約30分後


 梗汰達は、アズールに案内され王宮から少し離れたところある、術師館と言う巨大な建物の一画にある、精霊術師が居るという部屋に案内された。

 さっそくアズールがドアをノックし、


「失礼します」


 どうやら鍵は開いているようだ。

 梗汰はアズールの後に続くように入る。

 その開けられた扉の隙間から梗汰が顔を出す。

 部屋の中はとても広く、部屋の中にも他の部屋への扉がいくつかあった。

 その他にも個人デスクと思われるものが数台、豪華なソファーなど様々な調度品などが置かれていた。


「中は意外と広いんだな」

「そうですねー」


 梗汰が視線を落とすと下にはサイラの頭が見えた。


「アズールよ、誰も居ないんじゃないか?」


 あの話し合いが終わってから、アズールを呼ぶ時の”さん”と言う敬称がなくなっていた。

 梗汰の中では”知らない人”から”友達”と言う枠組みに組み込まれ、すっかり遠慮がなくなっていた。


「ふむ、不在なのでしょうかね?」

「どうする?他の所にいくのか?」


 もし不在ならこれからどうするか、アズールが答えを出そうとした時、


「ちょっと待ちなさい!今行くから!」


 声が聞こえた。

 どうやら女性のようだ。

 ガタガタと扉を急いで開けるような音が聞こえる。


「ふぅー、来るなら予め来るって言っておきなさいよ!急にこられるなんて迷惑だわ」


 扉を開けるなり、その女性は心底面倒だ、と言う風に言った。


 その女性は、見た感じとても大人びた容姿で、黒い髪は方まで掛かる程度まで伸ばされており、ストレートでクセの全く無いその髪には、時折天使の輪が見える、顔立ちは綺麗なのだが、その細く切れ長の目は、見る人によってはキツイ性格に見えてしまうだろう。

 ・・・と言うか話し方からしてそんな気がするぞこの人。


「すみませんね、なにぶん急だったもので」

「まあいいわ、用件を言いなさい」

「はい、精霊術について教えてほしいという方が居まして」


 そういってアズールは梗汰の方を見る。


「あ、オレは稲葉梗汰って言います、よろし」

「あなた、精霊術を教えてとかふざけているの?」


 梗汰の言葉は、その女性の声によって遮られた。

 急な問答に梗汰は固まってしまう。


「え・・・・・・と」

「精霊術は血によってしか使えない魔法なのに、話を聞いただけで使える訳ないじゃない。今名前も聞いたけれど、そんな苗字の精霊術師の家系知らないし、時間の無駄だわ。さあ帰りなさい」


 普通の人からすればもっともな意見だ。


「あー・・・・・・オレは、なんつーか渡り人でさ、この世界にきてから精霊術が使えるようになったんだ」


 梗汰は驚いたようなその女性の表情を確認すると、自身の言葉を証明するかのように術を発動した。


「おりゃ」


 床板を突き破り、先の尖った岩が突き破って現れた。


「・・・・・・っ、その石が飛び出る時、確かに地の精霊の動きを感じたわ。どうやら本当のことみたいね、新たな地霊術師の家系の誕生ってわけね」


 そこまで言うと一度地面を見て、それからもう一度梗汰の事を見た。


「・・・・・・なんで渡り人がここにいるの?」


 梗汰の中でその答えは一つしかない。


「アメリアに捕獲された」


 その女性は、軽い頭痛を抑えるかのように頭に手をあてた。


「あの王様は・・・・・・また変なことに手をだして・・・・・・でも、あの人のやることなら仕方ないわね。まあいいわ、私の名前は、不知火しらぬい ひとみ。火霊術師の家に連なる者です」

「不知火さん、ね。よろしくな」

「ふぅ、ではさっそくだけど、あたしにあなたの現状と、今あたしに何を望むかを言いなさい」


 梗汰は、自分が現界してから今までの出来事を話しはじめた。


 自分が繋がりを持つモノコネクターであるという点を除いて。





「ふむ、渡り人が精霊術を使ったと言った話は聞かないけど、それが全てに当てはまるとも言えないですし・・・・・・今言った言葉が本当にあなたの言うとおりなら、あなたは地霊術師なのでしょうね」


 アメリアが納得したと言う事実と、先ほど梗汰が発生させた地霊術によって、通常在り得ない現象を許容できたようだ。

 

(ふー、信用してもらえたか。後は滞りなくコツとかを教えてもらえたらいいんだけどな)


「ですが、精霊術はその家系によって教えも力の使い方も異なると聞きます、私が教えるなんて、精霊の感じ方や、効率よく制御したり動かしたりする程度の、初歩ことだけになるわ、それでもいいの?」


 梗汰にとってはそれが一番知りたいことだ。


「それだけでも教えてもらえたら嬉しいです!」

「いいでしょう、ところであなた、歳は?」

「オレは21歳ですね」


 それを聞くと瞳は少し考悩むように顎に手をあて、ぼそぼそと何かを呟く。


「あたしの方が年下か・・・・・・それだと、こっちから呼び捨てはまずいかしら?だからと言って呼び捨てされるのも嫌だし・・・・・・でもこの場合はこっちが先生だから立場は上よね・・・・・・」

「へー、瞳さんは年下なんだ」

「そうよ、あたしは今年で18歳、よし、あたしは梗汰と呼ぶから、あたしの事は”不知火さん”と呼ぶのよ?」


 おい梗汰!ここで嘗められていいのか?いや、断じて否!ここのままの流れだと立場が一生変らない気がする!


「おい、それはさすがに」

「あたしは教える立場、あなたは教えを請う立場、なにか問題でも?」

「さすがに・・・・・・今日は疲れてるので明日からお願いしていいでしょうか?」


 梗汰の抗議はどこかに消滅した。


「ふふ、こういうのもなかなかいいわね」


 瞳は目を細めて満足そうに微笑んだ。

 梗汰はその言葉に悪寒を感じた。

 むしろ嫌な予感しかしない。


「では、また明日ここに来なさい、あたしが居る時間にくるのよ?」

「そんなの分かるかっ!」

「あら、あたしが居なかったら出直せばいいだけじゃない?何か問題でも?」

「・・・・・・ありません。ではまた明日」


 梗汰達がそのまま部屋から出ようとすると、


「ちょっと、梗汰まちなさい」

「・・・・・・なに?」

「床」

「ん?」

「床を直していきなさい」

「・・・・・・!」


 その後、梗汰は岩を消し、床を張替えるまで部屋から出してもらえなかった。

次の言葉のように短縮形で登場することもあります(’’ノ


地の精霊術→地霊術ちれいじゅつ

火の精霊術→火霊術かれいじゅつ

水の精霊術→水霊術すいれいじゅつ

風の精霊術→風霊術ふうれいじゅつ


地の精霊術師→地霊術師ちれいじゅつし

火の精霊術師→火霊術師かれいじゅつし

水の精霊術師→水霊術師すいれいじゅつし

風の精霊術師→風霊術師ふうれいじゅつし



【天使の輪】


つやのある髪。

白く光る艶が確認できる髪のこと。

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