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ピエロのメイクは雨に滲む?

作者: しろかえで

今日の天気に押されて書きました。

 見間違うはずの無い背中のシルエット

 そのライトグレーのコートは薄ピンクの傘に飛び込んでディープブルーのハイヒールと連れだって駅の雑踏から離れていく。


 その二人を……

 オフホワイトでショートの編み上げレインブーツで追いかける私は白地ワンピの裾を汚す。


「これは何か事情があっての事!!」

 後を追いながら自分に言い聞かせる私をあざ笑うかのように

 傘の中の二人は睦まじく寄り添い、やがてマンションのエントランスの中へ


 閉じられた自動ドアの向うには大輪の花が活けられており、ホテルのエントランスホールを思わせる瀟洒な空間が広がっている。


 ここはきっと“相手のオンナ”の住まいなのだろう。

 遠目で傘の内なのでカシミアの光沢と分かるベージュのスタンドコートしか見る事は出来なかったが背中を流れるウェービーヘアはいかにも“カレ好み”で……どうあがいても私がなれなかった髪質だった。


 背中から抱き、髪に顔を埋めて“猫吸い”するのが習性のカレを……充分に満足させる事が出来ない私は、ベッドの上のみならずカレの言いなりになっている。

 それで良かった!私はカレを愛してるし

 カレとの事すべてが幸せだから……


 でもその幸せの器は

 実は穴が開いていて

 カレへの愛は無意味に駄々洩れていた……


 今、私はマンションの外で独りぼっち。

 強くなった雨が私の折り畳み傘を叩く。

 身を潜めている生垣から注がれた雨水が私のダウンの裾を濡らす。


 メッセージでカレのスマホを鳴らしてみようか

 いっそコールしてみようか

 それともこのまま見張り続けるべきか……


 容赦ない雨が私のカラダと思考の“温度”を奪って行く。


 そして今、この時に

 カレとあの女は

 お互いの体温を重ねて

 火を点け

 さらに熱く燃えている筈


 だって、さっき!!

 ジレッとしたカレがあのオンナに盛んに仕掛けていた“いつものボディタッチ”が遠目にも分かったから……


「ああ、カレから弄られる様を私もこんな風に晒していたんだ」という言葉が絶望を孕んで私の心に沈んでゆく。


 でもひょっとして

 もしかして

 あのオンナの方が

 本命?!!!

 いや、それより更に酷い

 カレがあのオンナに飼われているとか?……

 そうだとしたら……


 心の中にいくつもいくつも暗雲が立ち込めて、“見窄らしい探偵”の胸を潰す。


 だから私は傘を畳んで土砂降りの空を仰いだ。



 ピエロのメイクの目の上下の縦線は“目しい”の意味があると言う……


 だとすれば


 こんな雨くらいでは“ピエロ”のメイクは落ちやしない。


 それでも

 涙ぐらいは隠してくれるだろう

 そう、

 涙って

 予め描かれているものだから……


 傘と共にすべてを折り畳んだ私は

 土砂降りの中をゆらゆらと踊りながら

 家路に向かう。


 そしてきっと


 カレを待ち続けるのだろう。


 カレがこの道化に飽きるまでは





                          おしまい



私、しろかえでだって、こんなオトナ?のを書くんです!!


(因みに今日のお昼ごはんは“ぼっち”ちゃんのカレーメシでしたけど……)



ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!

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― 新着の感想 ―
[一言]  面白かったです。  服装や髪など、色も含めて丁寧に描写していてイメージ掴みやすいです。単純に「バッドエンド」ではまとめられない終わり方がいいですね。  人物の心の動きが切ないですね。 …
[一言] 『私』のほうが先に『カレ』の不誠実な道化に飽きることができればいいんだけどなあ。
[一言] いいじゃない! いい女じゃない! 小説だと・・・
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