セレスの機転
レッドサウス学校とグリーンイースト学校の試合が終わり、少しすると次はいよいよ、ブルーノース学校の出番である。
相手は先程試合をしていた、グリーンイースト学校である。
疲労が溜まった状態では不公平な為、十分な休息を取ってからの試合となった。
ちなみに、この試合が終われば午前の部は終了となり
昼休憩となる。
アグレシア「皆さん。 この戦いに勝てば2勝です。さっきのように戦えば大丈夫。 私達は十分強い。 昨年同様優勝の栄光は我等が手に!」
アグレシアの激励に皆が声高らかに吠える。
作戦は1回戦同様の布陣で望む。
この布陣がブルーノース学校の鉄板であり、最も効率のいい
布陣だ。
会場に出るムム達。
トラリーとムムは会場に出るなり、すぐにゼノン達の方を見る。
ちゃんと見てくれているかの確認である。
しかし、何やら様子がおかしい。
ゼノン達の周りには人集りが出来ているのだ。
それを不思議に思った2人はシンやリリアに尋ねる。
ムム「ねーねー!リリアお姉ちゃん! なんかお父さん達の
周りにたくさん人がいるよ?」
トラリー「シン兄さん、何かあったのでしょうか?」
その言葉に2人もゼノン達を見る。
確かに、人集りが出来ている。
更には困った様子の父と母の姿も見える。
だが、周りのフレイやレイラの表情を見ると何やら笑っていたり喜んでいた。
それらから察するに、アクシデントではなさそうだ。
そう理解した2人はトラリー達に教えてあげる。
シン「安心しろトラリー、ムム。どうやら、悪い事は起きていないようだ。ちょっとしたハプニングか何かであろう。」
リリア「そうよ。 周りにいるバリアンやフレイも笑っているしね! それよりも今は試合に集中よ2人とも! 私達が居るからといって油断しちゃダメだからね?」
確かにその通りだ。
今は試合に集中しなければならない。
それに、リリアの言う通り、2人がいるからといって油断するなんて絶対にあってはならない。
自分達は学年の代表として選ばれたのだ。
自分達の出せる力は発揮しなければならない。
トラリーとムムは再び気合いを入れる。
その頃ゼノン達はというと。
メフィ「ちょっと! 子供達の試合が始まるのに見えないでしょ!!!」
ゼノン「悪いが席に座ってくれぬか?」
周りのファン達に手を妬いていた。
エリシア「確かにこれは他人事ではありませんね。」
フレイ「弟妹達の試合が見れませんね」
バリアン「ワシがどかしてやろうかのう?」
レイラ「バリアン様がやったら下手すると死んじゃいますよ!」
そんなファン達に困っていると救世主が現れた。
「ゼノン様とその御家族の方。宜しければ私の居る席で観ませんか?」
ゼノン達が声のする方を振り返るとそこに居たのはなんと
セレスだ。
セレスの言葉に甘え、その場を後にするゼノン達。
その間は、会場の警備員達がファンの人達を止めてくれていた。
セレスの後を続くゼノン達。
ゼノン「すまないセレス。助かったぞ。」
メフィ「本当に助かったわ。あれじゃあ、子供達の試合が見れないところだった」
セレスに救われ御礼を言う2人。
セレス「遠目から見ても凄い人集りでしたから。せっかくの
子供達の晴れ舞台です。ゆっくり見てあげてください。」
そういうとセレスはブルーノース学校の賓客席へと招いてくれた。
それに先程の席よりもよく見える。
ある意味あのファン達には感謝であった。
皆で席に座るとフレイを呼ぶ声が聞こえてくる。
クリス「フレイ先生! こちらにどうぞ!」
そう言って呼ぶのはシンとリリアの担任のクリス先生である。
あの一件以来、別人のように変わったクリスはフレイに夢中なのである。
フレイもそんなクリスを無下にすること無く微笑んでクリスの隣へと腰を下ろす。
フレイ「ありがとうございますクリス先生。こんな近くで見れて
有難いです」
クリス「なんのなんの! フレイ先生とその御家族なら言ってくれれば席を用意しましたのに! ささっ! フレイ先生の弟妹達の
勇姿を目に焼きつけるとしましょう! 御一緒に!」
選手のように張り切るクリスを見てフレイは思わず微笑んでしまった。
そんな光景を見てセレスも喜んでいる。
セレス「ゼノン様、フレイ先生には本当に感謝しています。
クリス先生は実力や知識的には問題は無いのですが、性格が
少し難がありましてね。でも、それもフレイ先生のおかげで改善されました。今ではブルーノース学校にはなくてはならない存在なんですよ。本当にありがとうございます。」
セレスは毎回御礼を言うと更に礼を言って返してくる。
物腰の低い優しい女性なのだ。
そんな彼女が校長だからこそ、全生徒に愛されているのだろう。
ゼノン「セレス・・・・・・お前は本当に大きくなってもその慈愛の心は変わらぬな。」
思わず感心するゼノン。
セレス「ゼノン様にそう言って頂けると私も嬉しいです」
ゼノン「そうだセレス、ちょっと耳を貸せ。お前にも伝えておかなければならない事がある」
突然のゼノンの言葉に驚くも、公には言えない事情があると察知したセレスはゼノンの言う通り耳をゼノンに向ける。
話の内容は『アビスヘルム』についてだ。
アビスヘルムを指示しているのは教皇で間違いないが、裏には
さらに上のものが居た。
その事を伝えるとセレスも驚きを隠せずにはいられなかった。
何しろ、この国の国王と教皇は横並びでツートップなのである。
その2人に上は存在しない。
だから、ゼノンも悩んでいた。
ゼノン「セレスよ、お前の方でも万が一アビスヘルムの名を耳にしたなら私に知らせてくれ。もちろん私も新たな情報を手にしたらお前に伝えよう。」
セレス「わかりました。この度は生徒達を守って下さりありがとうございます。」
ゼノン「なぁに、私の子達を守る為だ。お前が気にする必要は無い。さぁ、そろそろ試合が始まるだろう。お前の自慢の生徒たちを応援するとしよう。」
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