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護る者

「本当に!ありがとうございました!!!」



男の子はゼノンにお辞儀する。


先程まで互いに死んだと思っていた為、二人で泣くだけ泣いて、落ち着いた頃を見計らいゼノンに連れられ部屋へと戻った。



そして部屋に戻って早々に男の子はゼノンに御礼を言ったのだ。

ムムとの再開を喜ぶあまり、御礼を言うのを忘れていたから。



「ふむ。気にするな。対した事はしておらぬ」



ゼノンにとっては、散歩をしたようなもの。

その言葉に兄もホッとしていた。


そんな中、ふとムムは思い出しかのようにゼノンへ訊ねる。



「あっ、ゼノン様、お父さんとお母さんもいましたか?」



ゼノンは考えた。


(ふむ。どうしたものか・・・・・・。)


実際は殺してしまったが、その事をこんな幼子に伝えるのは酷であろうと。

いくらあんな親でも親は親だ。

人間というのはよく分からない。


その為、ゼノンは嘘をつくことにした。



「お前達の両親は既に街を出ていたようだ。居たのはお前の兄だけだ」



その言葉を聞きムムはどこか複雑な表情をしている。

悲しくは無いのだろう。

それも当然のはず。実の親に売られかけたのだから。



ゼノンは男の子に耳打ちをする。



「ムムにはお前が死んだ事は伏せておけ。この歳で抱えられるような話ではなかろう」



男の子は、はっと目を見開き「!!!危うく話してしまうところでした。ありがとうございます。」

と小声で返事をした。



続けて男の子は、



「あ、あのムムとは妹の名前ですか?」



先程から聞くムムという言葉を不思議に思っていたのだろう。



「あぁそうだ。駄目だったか?」



勝手に妹に名付けたことを不服に思ってしまったのだろうか?

ゼノンはそう思ったが、どうやら違う様子。




「い、いえ!!! ただ・・・・・・羨ましいなと・・・・・・」



恥ずかしそうにそう話す兄。


自分にも名前が無く、妹には新たにムムと言う名があり羨ましくなり目を伏せていた。


そんな様子の兄に対してムムが提案する。




「ならにーにもゼノン様に名前を付けてもらったらいいよ! ゼノン様! いい?」




ゼノンはいきなりの提案に困惑していた。

だがその話しをした後の男の子は目をキラキラさせてゼノンを見ていた。


「ふむ。妹だけ付けて兄に付けない訳にはいかぬな。

では・・・・・・トラリーはどうだろうか」



「ト、トラリー?」



「うむ。守る者、守護者を意味する。その名に相応しく妹を守ってやるといい」



ゼノンは続けて名前の由来を説明する。

まさか、2人も名付けることになるとは思いもしなかった。


だが、結果として2人とも大変気に入ってくれたようだ。



「守護者、トラリー・・・・・・ありがとうございます!!! この名に相応しい男になってみせます!」



「ふむ。ではまず肉を付けろ。飯を喰らえ。男になるのはそれからだ。ライム頼む」



ムムもそうだが、トラリーも骨と皮のみだ。

栄養失調にも陥っている。


まずは食って肉をつけてもらわなければ始まらない。

ライムはゼノンの指示で厨房へと向かう。



「はーい!!! トラリーよろしくね!!! 僕の名前ライム!!! 家事に料理に何でもするよ!」



「あぁ! よろしくライム!」



「そしてこの子がミノタウルスのミノだよ!」



喋れないミノタウルスの代わりに自己紹介をしてあげるムム



トラリー「あ、あぁ、よろしくミノさん!」


巨大なその見た目に、そして初めて見る魔物に圧倒されながらも苦笑いで答える。


ミノさんは「ブモォッ!!!」と笑って返事をしてくれた。




食事の時間になるとやはりトラリーも涙を流していた。

まともな食事は初めてのようだ。

ちなみに素材はミノタウルスが狩りに行ってくれた物を調理した。





そして、食事を終えるとゼノンは二人に口を開いた。



「トラリー、そしてムムよ。二人は無事に合流できた。しかし両親は家を出て行った。お前達はどうしたい?」




いきなりの今後の方針を聞かれ、トラリーは困った。

ムムはもちろんトラリーもまだ子供。

子供の二人では明日は愚か今日を生きるのも危うい。



だが、このままここで世話になってもいいものなのかと不安になっていたのだ。


トラリーがずっと悩んでるのを不思議に思いゼノンが口を開く。

 


「ふむ。ここに居たければいつまでも居るが良い。そしてお前達が出たい時に出て行けば良い。子供が気を遣う必要はない」



その言葉にトラリーは目を輝かせ「どうか僕達をここに住まわせてください!!!」と答える。



「うむ。よかろう」



子供が一人増えたところで変わりはあるまい。

ゼノンはそう思い了承する。



トラリーとムムは二人で喜び、何故かライムとミノも喜んでいた。



(ふむ。ゆっくりしようと思って、この地に来たが二人の子守りをする事になるとはな)




「トラリーよ、今日は一先ず休むが良い。明日からは私がお前の魔法適正や武器の使い方を教えてやろう」



この世界にはそれぞれ魔法適正が一つ授けられる。

それを知らなければ、魔法を極めることは出来ない。



「はいっ!!! ありがとうございます!!!」



そんなゼノンの言葉にムムも羨ましいと思ったのか




「ずるいっ!!! 私も魔法の勉強したい!!!」


「ふむ。まだ早い気もするがムムがやりたいのなら一緒に教えてやろう」



「やったーーー!!! 明日はお勉強だね!」



喜ぶムムにライムも自慢をしたいのかエッヘンと自慢げに、



「僕も魔法は使えるんだよ! 僕も教えてあげるね!」



「すごいねライムは!!! ありがとう!!!」



そしてムムとトラリーはお風呂に入った。

トラリーも初めてのお風呂に感動していたようだ。

お風呂なんて金持ちしか入れないのだから当然と言えば当然である。



二人の髪をまた、ゼノンがドライで乾かしてあげた。

ゼノンがムムの髪の毛を乾かしているとムムが急に



「なんだかゼノン様はお父さんみたい!!! 優しいお父さん!!!」



いきなりの言葉に驚く。

ゼノン自身も産まれて間もなく父を失った為、記憶があまり無かった。


(ふむ。父親か・・・・・・我が父、、


ゼノンはムムの言葉に少しながら自分の両親を思い出す。

あの悲劇の一日を。


ゼノンが魔王へと生まれ変わったあの日の事を。

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