アビスヘルム・イン・アビス
不死の王は変装を故意に解いていた。
より一層相手を恐怖に陥れる為に。
不死の王「悪いですが一瞬で終わらせてもらいますね。
今日の人間達の試合にはゼノン様のご子息、ご息女が出場している。あなた方に構ってる暇などありませんので。」
その言葉はアビスヘルムのメンバーを瞬殺すると言うように聞こえてきた。
彼らは焦り、防衛本能からか、すぐ様行動にでる。
「こうなったら皆で一気にかかれ!!!」
アビスヘルムのメンバー達はヤケになって攻撃を加えた。
仮にも彼らはそこそこの戦闘力は持っている。
人間界の冒険者にはランクがあり、G〜Sまであるが
アビスヘルムのメンバーは皆がAかBクラスである。
だがそれでも相手が悪かった。
不死の王「せっかくですのであなた方の名に相応しい技で
終わらせてあげましょう。地獄の深淵」
ゼノンが過去にトラリーとムムの母親に使った技だ。
元々は不死の王の技であったがゼノンも創造魔法により
コレを完成させた。
地面は割れ、アビスヘルムのメンバーは何とか崖に掴まるも
奈落の底より湧き出てくる亡霊達に足を掴まれ地獄の更に底へと引きずり込まれていく。
全員を引きずり込むと割れた地面は元に戻り、何事も無かったかのような静けさが辺りを包み込む。
正に瞬殺であった。
不死の王「久しぶりの外でしたが、いやはや、なんともつまらない戦いでしょう。シリュウ殿やリリア嬢との戦いの方が断然楽しいですな---ささっ、ゼノン様の子供達の勇姿を見るとしましょう。」
仕事を終えた不死の王はその場を後にするのだった。
東の地下道
「ぐあぁッ!!!!!!」
「どうしたッ?!!!」
1番後ろを歩いていたアビスヘルムのメンバーが1人断末魔をあげる。
その者を見ると胸から槍の矛先が突き出していた。
シリュウ「貴殿らがムム嬢とトラリー殿を付け狙う者達か!」
突如現れた龍人族の男。
獣人族のほぼ頂点に位置すると言われている龍人族。
例え10人仲間がいようと戦力差は歴然だ。
もう40人いれば何とかなるかもしれなかったが・・・・・・。
そして、ここでもシリュウの無双が始まる。
シリュウの研ぎ澄まされた槍裁きは凄まじく、アビスヘルムのメンバーは次々に殺されていく。
全員が一撃の元に死んでいく。
遠くから魔法を放つもシリュウは口からも炎を飛ばして打ち消してきた。
いや、むしろ貫通して魔法使いを燃やし尽くしている。
人間の火魔法とシリュウの龍炎弾では威力の差がありすぎる。
その為、相殺どころか逆にやられてしまった。
シリュウ「残り5名であるな。八卦槍嵐!!!」
8連撃の槍撃が繰り出され西を任せされたアビスヘルムのメンバー
は壊滅した。
シリュウ「任務は成功であるな。ムム嬢は優しい女子である。
ムム嬢を狙うなど言語道断也。それでは、ムム嬢達の応援にいざ
参るぞ!」
こうしてシリュウも無事任務をこなし会場へと足を運ぶのだった。
南の地下道。
そこでは既にアビスヘルムが巨大な男と対峙していた。
アビスヘルムは実力者であるが故に、相手との力量も計れる。
つまり、バリアンと対峙するアビスヘルム達は絶望していた。
これっぽっちの人数で勝てるはずがない。
いや、何百人居ようが勝てる気がしなかった。
相手の力量も分からず突っ込んで殺されたらどれだけ楽か。
相手の強さがわかるが故に恐怖心は長く続く。
「こんな相手が居るなんて聞いてない・・・・・・死にたくない」
「引いても殺されるだけだぞ」
「いっそ、主を殺した方が可能性はあるんじゃないか?」
バリアン「お前達が我が孫達を狙いさえしなければ逃がしてやったものお。運が悪かったと後悔して去ね」
壁中に血肉が飛び散る。
バリアンの身体は敵の返り血で赤く染っていた。
そこにいるのは血で体を赤く染めた鬼が1人。
10人のアビスヘルムはバリアンの手で全滅。
東西に続き南も全滅した。
残るは北のみ。
そして北に居るのはもちろん・・・・・・
「おい! お前ら応答しろッ!!!」
北のメンバーが他のメンバーに通信するも応答は無い。
明らかな異常事態。
だが途中で任務を放棄する訳にはいかない。
何せ後ろにはあの御方が控えている。
「行くしかねぇだろ」「あぁ。全てはあの御方の為に・・・・・・」
ゼノン「お前らの陰謀が叶う事はないぞ。」
「ッ?!!!」
突如現れるゼノン。
ゼノン「我が子達を狙う者には死あるのみ。心臓は我が手中に」
ゼノンの両手に2つの心臓が現れる。
取られた2人は急に変な違和感に襲われた。
そして、ゼノンの掴む内蔵の様なものを見て、自分の心臓だと理解する。
「ブシュッ!!!」
その場に倒れる2名のメンバー。
バリアンと同じく感じ取るメンバー達。
しかし、恐怖が極限状態になるとどうなるか。
それは、ただ目の前に迫る死を黙って受け入れるのだ。
何をしても意味が無い。
相手に勝つ確率は0だ。
アビスヘルムのメンバー8名はただただ、その場に立ち尽くすのみ。
それ程、自分達とゼノンの間には差が開き過ぎていた。
ゼノン「うむ。お前達はよく分かっているようだな。
お前らの潔さに免じて痛み無くして殺してやろう。
死への祝福」
7名は痛みどころか天にも昇る快楽を感じ死んでいった。
そう7名である。
残った1名は唖然としていた。
何故自分は生かされたのか。
瞬時に理解した。
情報が欲しいからだ。
ゼノン「お前を問いただしても死ぬ事は分かっている。『解呪』
これで話してもお前が呪いで死ぬ事は無い。お前の上は何者だ?」
「ほ、本当か? おの御方の名前はサーベラス・イグドレア。
『教皇様』だ。」
ゼノン「やはりな。」
ゼノンは予測していた。
どうやらレッドサウス学校に教皇の孫が在学中らしい。
つまり、孫の学校を勝利させたいが故に他校の名のある者を
排除しようとしたのだろう。
たったそれだけの為に。
ゼノン「貴様の仲間は何人いる?」
「我々でさえ数は把握していない。アビスヘルムの首領にも
会った事すらないんだ。幹部である私でさえ・・・・・・。」
ゼノン「では、アビスヘルムの首領の指示ではなく教皇の指示で
動いているということか?」
「あぁ、幹部である我等は直接教皇に指示を出され、
我ら幹部が部下達に、教皇の司令内容を伝える。」
ゼノン(何かが引っかかるな・・・・・・。もしや・・・・・・)
ゼノンは何かに気づいた。
確信はないがそうであった場合、教皇を殺した所で終わりはしないだろう。
ゼノンが色々と考えているとアビスヘルムの最後の生き残りである彼が口を開いた。
「さぁ、俺が知っている事は全て話した。呪いで死ぬ事は無い。
だが、お前の手で殺すんだろ?」
この男は分かっていた。
ゼノンは呪いで死ぬ事は無いと安堵させることによって情報を
聞き出そうとしていたが、それを知った上でこの男は情報を
話してくれたようだ。
ゼノン「あぁ。貴様らを生かしておくことはできん。
せめて一撃であの世へ逝かせてやる。さらばだ」
「くっ、すまない。レイラ・・・・・・」
「ザシュッ!!!!!!」
胸を斬られ血を吹き出す男。
そのまま彼は倒れた。
最後に口にしたレイラとは一体どのレイラだったのか。
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