掌返し
クリスに連れられ演習場へと着く。
中央には正方形の台座があり、幅10メートルはある。
更に結界魔法が張られており外への被害は出ないようにされている。
クリスは壇上へと上がるとフレイに指差し呼び付ける。
「おい助勤講師! さっさと上がってこい!
死亡事故を起こしては問題になるから殺さない程度にしてやる。
それ以外のルールは無しだ!!! おいソフィア!貴様が審判しろ!」
クリスに呼ばれた女の子はギリギリクリスの授業についていけていたSクラス3位の女の子だ。
ちなみに次期生徒会長候補でもある。
そんな彼女はクリスに指名され嫌々ながらも引き受ける。
「わ、わかりました。それではお互い殺すことの無いように・・・・・・始め!!!」
ソフィアの合図の元、クリスがすぐ様魔法を放つ。
「悪いが時間が惜しい。すぐに終わらせてやる!
氷の魔術師と恐れられた私の力を見せてやる!
氷槍5連撃!!!」
5つの氷の槍がクリスの頭上に現れ、一気に加速しフレイ
目掛けて飛んでくる。
「奇遇ですね。私も氷魔法が得意なんですよ?
氷極槍5連撃」
クリスの放つ槍よりも大きな氷の槍が出てきてクリスの槍とぶつかると、破壊しそのままクリスの元へと放たれる。
クリスは急いでその場を回避した。
「あ、ありえない。私と同じ氷属性で威力も貴様の方が上だと?!!! ありえん!!! 氷の金槌!」
「私も氷が得意なんですよ。氷の壁」
クリスの出した技はフレイの氷の壁に阻まれる。
それどころがヒビ一つ付けられなかった。
これがクリスの放った氷の壁なら簡単に砕けていただろう。
同じ技でもその練度が全然違う。
「ぐっ、こうなったら私の本気の技を見せてやる!!!
吹雪嵐!!!」
氷魔法でも中々の強さの魔法を放つセレス。
「凄いじゃないですか! 上位魔法吹雪嵐。ですが中級魔法の中の話です。氷剣雪崩」
何百本もの氷の剣が正に雪崩のようにクリスの技へと突き刺さる。
あっという間にクリスの技を破るもその勢いは止まらない。
いくつもの氷の剣がクリス目掛けて突き刺さる。
フレイの技の衝撃により辺りには白い煙がたっていた。
それほどの強い衝撃だったのだろう。
そしてフィールド内はフレイの技により、最早極寒であった。
そんな光景を外野で観ているシン達。
「ねぇシン・・・・・・死んだんじゃないかしら?」
フレイがいくら本気を出して居ないとはいえオーバーキルもいい所である。
傍目から見ればこの状況で生きていたら奇跡であった。
「流石にそんな事はしないだろう。お前じゃあるまい。」
しかし、キレたら1番怖いのはフレイである。
有り得るのかもしれないとシンは段々思うようになってきた。
ようやく煙が晴れるとそこに居たのは数多の氷の剣に磔にされたセレスの姿だ。
しかし、クリスの身体には1本も刺さっていない。
フレイの洗練された魔法操作により、直撃を避けたのだ。
しかし、クリスは泡を吹き気絶している。
これなら死んでも気付かなかったかもしれない。
「勝者! フレイ先生!!!」
ソフィアの終了の合図で生徒達皆が歓声をあげる。
フレイが勝ったことが余程嬉しかったのだろう。
フレイが壇上より降りると生徒達に囲まれ褒め称えられた。
そんな様子を後ろから見守るシンとリリア。
「久しぶりにスカッとしたわね!さすがは私達の姉さんね!」
「ふっ、そうだな。フレイのおかげで殺さずに済んだ。」
「流石にお父様達の悪口言われたら殺したくなるわよね!」
「あぁ、今後はフレイが教師をやればいいと思うが」
「それいいわね!!! 校長に掛け合ってみようよ!」
「だがあいつが優秀なのも間違いはない。やり方は間違っているがな。」
「何にせよ!これにて一件落着ね!!!」
フレイの氷が消え、クリスも目を覚ます。
「あ、ありえない・・・・・・私が助勤講師如きに手も足も出なかっただと?! それも同じ氷属性・・・・・・くっ!」
まだ受け入れられていないといった状況だ。
いや認めたくないのだろう。
自分に絶対の自信を持っていた。
何せ、この学校も首席で卒業し立ち止まることを知らなかった。
だが、それもたった今粉砕されたのだ。
蔑んでいた助勤講師相手に。
「では勝ったので私の言うことを一つ守って頂きますね。」
クリスの元へやってきたフレイはそう語り掛けた。
負ける事などありえないと思っていたが故になんでもいいと
了承してしまった。
だが後悔しても遅い。
証人が沢山いるのだ。
「今後は生徒の身になって接してください」
「・・・・・・それだけか? 私に辞めろと言わないのか?」
予想外の言葉に驚くクリス。
てっきり教師を辞めろと言ってくるもんだと思っていた。
「貴方が優秀なのはわかります。しかし、教え方に難があります。でも、それは生徒の身になって考えればわかる事です。
優秀な貴方なら出来るはずですよクリス先生」
フレイは微笑みながらそう話す。
「ズキューンッ!!!」
クリスは何か感じた事ない感情を持った。
フレイに諭され、笑顔を向けられると何故か心臓がトキメク。
今まで勉強一筋、教師一筋で生きてきたクリス。
女性に構ってる時間などもったいなかった。
だが、今のクリスは・・・・・・
「フレイ先生・・・・・・あの、これからも私の隣でご教授願ってもよろしいでしょうか?!
そして数々の無礼申し訳ありませんでした!」
いきなり態度の変わるクリス。
そんなクリスを見て不審に思うシン。
「なんだアイツはいきなり」
そんなシンにリリアはやれやれとニヤつく。
「シンは相変わらず鈍感ね! クリス先生はきっと
恋に落ちたのよ!フレイ姉さんにね!」
普段からポーカーフェイスのシンが驚愕する。
「なんだと?! 何故そうなる?! あのフレイに恋だと?!」
驚くシンに大笑いするリリア。
現にクリスは先程からフレイに夢中だった。
フレイに対して質問の嵐である。
そんなフレイも嫌な素振りなど見せず答えてあげている。
これもフレイの人格の良さのおかげだろう。
こうして、優秀ではあるものの嫌われ先生のクリスはフレイの
おかげで改心し今後はブルーノース学校に無くてはならない
人気の先生へと変貌するのだった。
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