ミレディの心の蟠り
長期休暇が終わった頃に学校対抗親善試合があるとの事で
旅行で楽しんだ分、訓練に励むムムとトラリー。
ムムの先生はレイラとフレイが。
そして、トラリーの先生はリリアとシンが受け持つ事になった。
レイラは聖魔法を教え、フレイは魔力操作を教える。
リリアは引き続き炎魔法を。シンは剣術を教える。
ちなみにバリアンはムムの遊び相手をやっている。
トラリーの筋トレもバリアンが面倒見ていた。
まだ長期休暇が終わるまで25日もある為、そんなに
焦らなくてもいいと伝えたが、2人がどうしてもと言うから
午後からだけ訓練を許した。
ムムの聖魔法のセンスは抜群でみるみるレイラの教えを吸い込む。
ただし、近接は教えていないため完全なサポートだけである。
ゼノン曰くムムにはまだ早いとの事と、シンやバリアンが
教えてくれない為である。
つまり過保護故の禁止であった。
訓練を始めて1週間が経った頃、昼を食べ午後の訓練にムムが励んでいるとザックスがやってきた。
「ムムお嬢様、門の前にムムお嬢様の御友人と名乗る2人の女の子が居ます。如何致しましょう?」
ザックスの2人という言葉にムムはピンと来た。
「わかった! ねぇねぇレイラお姉ちゃん、まだ訓練始めたばかりだけど行ってきていい?」
心配そうにそう話すムムにレイラは笑顔で答える。
「もちろんですよムムちゃん♪ 訓練よりも友達との交流の方が大事ですよ!」
レイラの言葉にムムは笑顔になり、御礼を言うとザックスと共に門へ向かう。そこにはやはり・・・
「やっぱりシンリーちゃんとミレディちゃんだ!!! どうしたの?」
門の前には学生服ではなく、私服のシンリーとミレディの姿があった。
「さっきたまたま、街でシンリーさんと会ったんですの。それでムムさんは何してるかな?って思って来ちゃいました!」
「まさかこんな大豪邸に住んでるなんてビックリしちゃった!!!」
確かにムムの家は他に類を見ない程の大豪邸である。
敷地も広く壁は堅牢。
まさに小さな城である。
「良かったらウチで遊ぼうよ!」
ムムの提案に喜ぶ2人。
ムムの言葉に甘えて家の中へ入れてもらう。
ちなみにライムやミノ、レオンにイヴは元の洞窟の方へ行き狩りや掃除をしている。
その為、ミレディ達にバレる心配はない。
家に入るとすぐにホールがあり正面の階段からゼノンとメフィが降りてくる。
「あっ、お、お邪魔します! ムムさんと仲良くさせてもらっているミレディと申します。本日は急にすみません!」
「はじめまして。ムムちゃんとお友達になったシンリーです。急に押し掛けてすみません」
緊張しながらもしっかりと挨拶をする2人。
そんな2人にゼノン達は優しい表情で答える。
「ふむ。私はムムの父、ゼノンと言う。2人がムムの友達か。ムムの友達ならいつでも歓迎しよう。ゆっくりして行きなさい。」
「あらあら、いらっしゃい♪ ムムの母のメフィーロよ♪
ムムと友達になってくれてありがとう♪ 後でムムの部屋におやつ持っていかせるわね♪」
そう話すと2人は再び階段を上り部屋へ戻った。
「かっこいい・・・・・・」
「キレイ・・・・・・」
2人はゼノンとメフィに見惚れていた。
そんな2人の手を取りムムの部屋へ行くとシンリーは部屋の広さに
驚いていた。
ミレディも少し驚いている。
「ここの部屋全部がムムちゃんのお部屋なの?! ひろーい・・・・・・」
「確かに広いですわね! さすがは公爵家の娘ですわ!」
「ムムにはよく分からない? この部屋にはあまり居ないの! いつもレイラお姉ちゃんとかリリアお姉ちゃんの部屋にいるから!」
「そ、そういえば、貴女はリリア様の妹でしたわね・・・・・・後で謝りに行ってもいいかしら?」
あの件以来、リリアとはタイミングが合わず会っていなかった。
いや、会わないように自然と避けていた。
自分の一番の憧れである先輩。
その先輩であるリリアの妹をいじめてしまったのだ。
嫌われるのは当たり前である。
そして、今日がそのタイミングだと思い、後で謝りに行こう。
そう思っていると扉のノック音が聞こえた。
入ってきたのはなんと・・・・・・
「リ、リリア様?・・・・・・」
「あっ!お菓子だ!!! リリアお姉ちゃんありがとう!」
「ふふっどういたしまして! あら? 貴女は確かあの時の?」
心の準備ができていない時に、急に現れるリリア。
ミレディの心臓は高鳴り、恐怖でブルブル震えている。
早く謝らなきゃ!頭ではそう思っていても、勇気が出ず
言葉を発する事すらできていない。
そんな自分に情けなく思ったのか唇を噛み締め下を俯くミレディ。
その光景を心配そうに見るムムとシンリー。
ムムがミレディに声を掛けようとしたその時、
ミレディは頭の上に暖かい感触を感じる。
その感触を確認する為に上を見るとそこには
リリアの手が乗っかっていた。
リリアの顔は以前とは違うとても優しい瞳でミレディを見ていた。
「この前はごめんね。まだ小さい貴女にキツく当たってしまったわね。今はこうしてムムの友達になってくれてありがとう。
これからもずっとムムと仲良くしてくれると私も嬉しいな。」
リリアの言葉に思わず涙が溢れる。
リリアが謝ることではない。
本来は自分が謝らなければいけない立場。
それなのに、リリアは自分を気遣ってくれた。
その優しさがミレディの心には深く刺さったのだ。
「ひっく、す、すみません・・・・・・ほ、本当なら私から、
謝りに行かなきゃ行けないのに・・・・・・リリア様、本当にごめんなさい・・・・・・」
今なら言える。
リリアへの恐怖は無くなり、自分の気持ちも固まった。
そう思いようやく謝罪する事ができた。
涙で顔は崩れるミレディ。
そんなミレディをリリアは優しく抱き締めてくれた。
その光景に思わずムムとシンリーも貰い泣きしてしまう。
皆で泣いた後はミレディの希望もあり、リリアも一緒に談笑した。
どうやら親善試合では1年代表として、ムムの他にミレディと
シンリーも参加するようだ。
1年の1位はムム、2位がミレディそして、3位がシンリーなのだ。
その報告にムムは大喜びしている。
「貴女達の事は私達が守るから安心してね! だって、皆
私の可愛い妹のお友達だもんね!」
リリアの言葉に目を輝かせるミレディとシンリー。
こうして、4人は最後は楽しく笑顔でバイバイしたのであった。
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