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因果応報

自己紹介や先生の話が終わると今日はこれで解散となった。ホールに家族が待っているようでムムはシンリーと一緒に廊下を歩く。




「シンリーちゃんは男爵家って言うんだね! ムムは聞いた事ないからわからないなー」


「ムムちゃんも帰ったらご両親に聞いてみなよ! もしかしたら名のある貴族かも!」


シンリーは勘のいい子だ。


そんなこんなで話しながら歩いていると、何やら後ろからドタバタ走る音が聞こえた。


シンリーが振り返ると既にバケツいっぱいの水がたくさんかけられるところだった。

シンリーは急いでムムの前に立ち、ムムを守る。


「バッシャーンッ!!!!!!」


シンリーの盾も虚しく、2人はビショビショになってしまった。





そして、バケツを手にしているのは、


「おーっほっほっほっ!!! やっとその名に相応しい姿になったじゃない。あなたもあなたも、私と同じクラスに居ていい人間なんかじゃないのよ!わかったら早くこのクラスを去りなさい!」


よく見るとミレディ一行以外にも2人の男がバケツを持っていた。

5人でバケツに入った水をかけてきたのだ。


シンリーは悔し涙を流していた。

自分が水をかけられたのが悔しくて泣いてるのではない。

ムムにまで巻き込んでしまった。

それが悔しくて涙が溢れたのだ。


ムムはそんなシンリーの肩にそっと手を乗せる。


「シンリーちゃんありがとう。ムムを守ろうとしてくれたんだね」


「んーん、意味なかった。ごめんねムムちゃん・・・・・・

私なんかと仲良くしたせいでムムちゃんにまで・・・・・・」




そんな2人の姿を見ていたミレディはまたもイライラし始めた。


「なに友情ごっこみたいな事をやっているの?そういうのシラケるから辞めていただけるかしら?」



「なんてこんな酷いことするの?ムム達が貴女に何か嫌な事した?!」


ムムには何故ミレディがこんな事をするのか理解できなかった。いや、理解出来るはずがなかった。

なぜなら・・・・・・


「そんなの、楽しいからに決まってるじゃない! あなた達みたいな爵位無しの、身の程知らずに現実を教えてあげるのが楽しいからよ!」


「そ、そんなの酷い・・・・・・。」


シンリーが口を開いたことによりまたしてもミレディは

怒りだした。


「誰が話していいと言ったのよ? 下等な人間が勝手に口を開くんじゃないわよ!!!」


ミレディは魔法でまたバケツの水を1杯に入れる。

そして、あろう事かまたかけてきたのだ。



かけたはずだった。しかし、




「じゅうぅぅ」




かけたはずの水は何故か蒸発していた。




「あなた達何をやっているの」


ミレディ達は後ろを振り向くとそこにはリリアとシンの姿が!


2人の表情は鬼気迫るものであった。

しかし、ミレディはお構い無しに2人に話しかける。


「これはこれは! 学校始まって以来の天才兄姉のシン様とリリア様!!! 私達はあなた達の大ファンです!!! すみません、お見苦しいモノをお見せしてしまって。

この下等なモノ達が男爵や平民の分際でこの伯爵たる

私の機嫌を損ねて来たんです!」


ミレディの取り巻き達も2人に駆け寄る。


「なんて美しいんだリリア様!」

「シン様!私あなたの大ファンです!」




「さぁ、こんな者達は放っておいて、あちらへ一緒に行きましょう!」


シンに手を差し伸べるミレディ。

しかし、




「バチンッ!!!」


シンはミレディの手を振り払った。

あまりの事に放心状態のミレディ。




「おい貴様ら、この子は俺の『妹』だぞ。何をしたか分かっているのか?---殺すぞ。」


シンは軽く殺気を放つ。

ミレディ含む5人は腰が抜けその場に倒れ込む。

シンのあまりにも冷たい視線。その目を見ているだけで

ミレディ達は呼吸が苦しくなる。

何かに押し潰されそうな感覚に陥っていた。



更に追い打ちとばかりにリリアがミレディの前にしゃがみこむ。



「それにね、私達『オルレア家』は公爵家よ。大事な妹をこんな目に遭わせるなんて、二度と私達に話しかけないで。そして次また同じ事をしたら---わかってるわよね?」


リリアが脅すとミレディはとうとう失禁してしまった。

ミレディはただ何度も頷く事しかできない。

これ以上怒らせれば殺される。

そう思う程の殺気だった。


実際はシンもリリアも抑えてはいたが、それでも小さな子には大ダメージだ。




リリアはムムとシンリーに近付くと魔法で服や髪を乾かした。


「ありがとうリリアお姉ちゃん!!!」


「ごめんねムム、私達がもう少し早く来ていれば・・・・・」


「すまなかったムム。俺達がいながら・・・・・・」


2人はだいぶ落ち込んでいた。

ゼノンに言われ、ムムとトラリーを見守るのが彼等の務め。

それなのにこの失態。

何より大事な妹をこんな目に遭わせてしまった。


しかし、ムムは笑顔だった。

この状況でも一切涙を流さなかった。


ムムの前の家庭は酷く、それに比べたらムムにとって屁でもなかったのだ。

ただ、大切な友達が虐められているのはムムもさすがに

傷ついた。


「んーん!シンお兄ちゃんもリリアお姉ちゃんも助けに来てくれた! ありがとう!」


「貴女は本当に強い子ね。それじゃあ、お父様達の

元へい行きましょう」




4人がこの場を去るとようやくミレディ達はまともに呼吸をする事ができた。


虐めていた相手の方が爵位も上で、憧れの2人の先輩の妹で、魔力も遥かに上。

何一つ勝てない相手に、あんな悪態をついてしまった。


ミレディは取り返しのつかない事をしてしまった事に気付き冷や汗が止まらなかった。


何より周りのものたちが、


「あ、あなたのせいで嫌われちゃったわよ!」

「あんたなんかと一緒に居なきゃよかった!」

「本当だよ!お前のせいでリリア様に嫌われたじゃねーか!」

「こんな奴放っておいて、ムム様とシンリーちゃんに謝りに行こうぜ!!!」




友達まで失った。

いや、元々ミレディは友達とは思っていなかった。

だが向こうが一方的に自分を慕っている。そう思っていたのだ。

しかし、違った。


言葉の通り、全てを失ったのだ。


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