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母の怒り

ゼノンは探知魔法で人間を見つけた。

トラリーとムムが外で遊んでいる為、急ぎ駆けつける。

バリアンとレイラが付いているため、問題は無い筈だが

それでも心配は絶えなかった。

これが親心なのである。


更にメフィも今回はついて行くと、一緒に来ていた。




現場へ行くと、バリアン、レイラ、トラリー、ムムが

人間と対峙している。

トラリーとムムの前にレイラが立ち、さらにその前にバリアンが立ち塞がっていた。


「皆大丈夫だな?」



「はい、コイツらはなんでしょうか?」


ゼノンは人間の方を見ると一人鎖で繋がれボロボロに傷ついた者を見つけた。


前回レイラを追ってきたアホな隊長の副官だ。

彼は鎖に繋がれたまま、ゼノンと目が合うと謝っていた。


「す、すみませんゼノン様、貴方の事を聞かれ拷問され耐えていたのですが・・・・・・くっ!」



「謝る必要は無い。 おい、お前らは何をしにここまで来た?そしてその男は何故繋がれている?」


ゼノンが人間に話しかけると一人の男が出てきた。

馬に乗っており、他の者より身なりがいい。

恐らく偉い人間なのだろう。


「私の名はブレシャー男爵だ! 今回の件を預かっている最高責任者である! そして魔族のくせに気安く私に話しかけるんじゃない! でも、冥土の土産に教えてやろう!

前回来た隊長が事故死したと聞いてな、だが死体は現れなかった!そこで怪しいと踏んだ私はこの裏切り者を拷問し、口を割らせようとしたのだ! だがそれでも吐かないからコイツの目の前でコイツの手下の首を1人ずつ切ってやった! 最初の一人を切った瞬間にこいつは素直に吐いたさ!手間かけさせやがって!!! 私の貴重な時間を費やした罰として結局コイツの部下達は皆殺しにしたけどな!!! アッハッハッハッハッ!!!」


ブレシャー男爵は馬上から副官の男を蹴り出した。

子供達に見せていいものではない。


「レイラ、トラリーとムムを連れて下がっていてくれ」


レイラは頷き、二人の肩を掴み下がる。

すると「シュンッ!」


矢が子供達の足元に飛んできた。

一歩間違えれば子供達に刺さっていたのだ。


「・・・・・・おい貴様ら、一体なんの真似だ・・・・・・」


ゼノンは静かに殺意を向けていた。

ブレシャー男爵はゼノンの恐怖を感じ取ったのか一気に汗が吹き出している。


「う、うるさい! 勝手に動くな! 私が決める事だ! ではまず、私に楯突くとどうなるか見せねばならぬなっ!!!」


ブレシャー男爵は気味の悪い笑みを浮かべると剣を抜き

副官の胸を刺したのだ。




「なっ?!!!」


レイラは急いでムムとトラリーの目を手で覆い隠した。

こんなもの子供に見せられない。


ゼノンも後ろを振り向き、ムム達を見るとレイラが子供達を隠してくれていた。

それを見てホッとするゼノン。


バリアンは今にも殺しに行きそうな雰囲気を出している。

それはゼノンも同じであった。


「貴様らもこうなりたくなければ私に頭を垂れろ!」


ブレシャー男爵は調子に乗りすぎた。

そして後悔するには遅すぎるほど、怒らせてしまったのだ。


世界最強の魔王を・・・・・・。




「貴様ら、覚悟はできているな?」


ゼノンは更に殺気を放つと、それ以上の殺気を放つものが1人居た。

横を向くとそこには




「メフィ。」



メフィの顔は笑っていたが、目は完全に笑っていない。

そのままメフィは前へ進む。


「ねぇ、ゼノン・・・・・・私がやっていいかしら?」


目の笑ってない顔でゼノンの方を向くメフィ。

ゼノンはまるで自分に怒っているのかと錯覚するほど、

メフィはキレていた。


「あぁ、頼んだ」


止めてもどうせ行くだろうと思ったゼノンはメフィにこの場を預けた。




「ねぇあなた達、あなた達が矢を放った相手は私の大切な子供達なの。もし当たって怪我でもしたらどうするつもりだったのかしら? まさか殺そうだなんて思ってないわよね? そんな事を思っているとしたらあなた達・・・・・・死んだわよ」


メフィは右手を振りかざすと炎、水、風、土、雷の玉が

5つ出てきた。

それをブレシャー男爵や兵士達の足元に撃ち込む。



馬は驚き男爵は馬上から突き落とされ尻もちを着いていた。


落馬された事による恥からかブレシャー男爵の顔は真っ赤になっている。


「き、貴様ら!!! 私をここまで愚弄するとは!!! 絶対に許さん!!! お前の子供達をお前の目の前で殺してや・・・・・・ぶくぶくぶく?!!!!」


ブレシャーの頭を水の玉が覆い、話せなくなっていた。




「子供達の前でそんな汚い言葉使わないでちょうだい。レイラ! 今のうちに2人を連れて下がりなさい」


レイラはハッとなると「はいお母様!」と返事をし

3人でその場を後にした。




「ゼノン様、奥方様、ワシも腹が煮えくり返っている。この怒りを治めるにはアイツをこの手で殺すしかないようだ。よろしいでしょうか?」 



「ふむ。子供達の教育の為、ここは見逃そうとも思ったが娘の目がない今なら構わぬ。殺せ」


「私も良いわよ! 子供たちは無事だったし、あいつの苦しんでる顔見たらスッキリしたわ!」



「有難く!!!」


2人の言葉にバリアンはブレシャー男爵の元へ歩み寄る。


ブレシャー男爵の頭には未だに水の玉が覆い被さっており、もがき苦しんでいた。




バリアンは水の中に手を入れブレシャーの頭を鷲掴みにして自分の目線まで持ち上げる。

ミシミシと頭蓋骨は歪み更にもがき出す男爵。


「ワシの可愛い孫達をよくもやってくれたな・・・・・・去ね」


「ブシュッ!!!!!!」


水の玉は真っ赤に染まっていた。

そして首から下は、糸を切られた操り人形のように崩れ落ちる。


未だに赤く染った水の玉は浮かんでいたが、メフィが指を鳴らすと弾けた。



「ゼノン様、コイツらも殺していいのでしょうか?」


バリアンは男爵に着いてきた兵士達の方を振り向く。


兵士達は恐怖に溺れ、体の震えが止まらない者、

腰を抜かす者、更には失禁している者までいた。




「その者達は男爵に連れてこられた者達だ。殺る必要はあるまい」


ゼノンは見逃す事にした。

しかし、メフィは違った。


「ねぇ貴方?あの者達も矢を射たのよ?許していいの?それに、これでもう来ないとは限らないわ。ここで根絶やしにした方が後腐れなく、終われるんじゃない?」


恐ろしい事を言うメフィ。

ここまで子供達を好いていたのは驚きであった。


確かにこの人間達は命令とはいえ、子供達の足元へ矢を撃った。

親ならばここは許してはいけなのではないだろうか?

ゼノンはそう思い始め、そして・・・・・・




「バリアン・・・・・・殺れ」


バリアンに命令を下す。

皆殺しだ。

バリアンはゼノンの命令の元、意気揚々と拳を振るう。

まずは子供達に矢を射た前列の者達が一撃でなぎ倒された。

8人まとめて一撃で死んだのだ。


しかし、兵士達は反撃をして来なかった。

いや出来なかったのだ。

あまりにも力量差があり、やっても無意味だと気付いていた。


このまま全員が死ぬ。

兵士達はそう思っていた。

しかし、恐怖で動けず逃げられない。




その時だった。


「おーーーい!!! ちょっと待ってくれ!!!!!!」


遠くから数人の兵士を伴った男が止めに入ってきた。




「また新手か?」


「いや、バリアン待て」


ゼノンの言葉でバリアンはその手を止める。



その男はゼノンの前止まると下馬し、片膝をつき頭を下げた。


「ゼノン様お久しぶりです。ロベルトです。

この件はどうやらブレシャー男爵の単独行動のようです。

どうかここは私の顔を立て、手を引いては頂けませぬか?

お詫びも致します!」



この男は学校の校長セレス同様に孤児だった頃、盗賊まがいに殺されそうなところをゼノンが助けたのだ。


そんな男が今では第二位の爵位にまでなっていた。

孤児からの侯爵。生半可な道のりではなかっただろう。


「久しいなロベルト。だが遅かったようだ。もうその男爵とやらは殺してしまったぞ。」


ロベルトは首の無い死体を見つけた。

だが、顔色一つ変えることなくゼノンに向き直る。


「仕方ありませぬな。王の命令でもなく個人で勝手に動いたのですから。国には魔物に殺されたと伝えましょう。侯爵である私の発言なら皆も信用する筈です。」


ここでロベルトが処理してくれれば、新手が来る事はなくなるかもしれない。

ここは一つロベルトに任せようと思ったのだ。


「ふむ。私達もただ平穏に暮らしたいだけだ。お前に任せるとしよう。」


「有難く!!! ではこの兵達も私が回収して帰ります。いつでも私の領土へいらしてください。過去の恩返し、とまではいかないですが、それなりにおもてなしさせて頂きます」


人間界にはろくな貴族がいないがロベルトは善人であった。

しかも、侯爵にまでなっている為、コネクションは取っておいた方がいいだろうとゼノンは思った。


「うむ。ではさらばだ、ロベルトよ。」


ロベルトは兵と共に引き返す。

ゼノンは殺された副官を見ていた。


ゼノン「・・・・・・。」




こうして、バリアンの力、そしてロベルトの機転により

今回の件は闇に葬りさられた。




爵位の順位は

公爵>侯爵>伯爵>子爵>男爵>準男爵

です。

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