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自慢の子供

リリアとシンに話してから1週間が経った。


今日で2人との生活も、一旦お別れである。


最初の頃はムムが泣き喚き大変であった。

しかし、1年も経たないうちにまた会える事が分かるとようやく落ち着きを取り戻した。


昨日は2人の見送り会という事もあり、シリュウがご馳走を作り皆で盛大なパーティを開いたのだ。




そして、見送り当日。

リリアとシンを見送るため、皆が集まる。


「それでは行ってまいります!」


「トラリー、練習は怠るなよ?ムム、体に気をつけるんだぞ。」



トラリーは元気よく返事をするが、やはりムムは泣いていた。そしてバリアンに宥められている。


やっと家族となり前以上に親密になれたのだ。

悲しむのも当然である。




「うむ。では行くぞ」


皆に見送られながらゼノンの転移で王都へ旅立つ。





学校へ着き、シンとリリアは編入試験を受ける。

一般試験よりも難しいとされているが、二人の実力なら心配する事は無い。


そして、2人の力ではやはり余裕だったのか、すぐに入学する事が出来た。



試験が終わりホッとしていると、ゼノンは何故か校長に呼ばれ校長室に向かう事になった。




リリアとシンは学校の手続きのため、別行動だ。




何故、校長自らなのかは疑問に思っていたが、会ってその理由が分かった。


中に入るといかにも校長という感じの歳を召した女性が座っている。


そして、見覚えのある顔であった。




「やはり、ゼノン様でしたね。お久しぶりです」



「セレスか。久しぶりだな。あの時の小さな女子おなごがここまで成長するとはな」



ゼノンとセレスは顔馴染みであった。

セレスがまだ小さい頃、人間国では戦争の激しさが増していたのだ。


セレスの小さな街も戦火に包まれ、両親を無くした。

そんな時、ゼノンがたまたまその村でセレスを見つけると人間の孤児院に送り届けたのだ。



時折、人間界に来るとセレスの元へ顔を出して魔法も教えてあげた。

そういう事もあり、セレスとは長い付き合いになる。



元々セレスも素質があり、学生になると彼女の名は瞬く間に広がり成人するとすぐに校長の座についた。




「確か『烈風のセレス』だったか?」



風魔法を得意としていたため、ついた異名だ。

久しぶりに聞く懐かしい異名に恥を持っていたのか



「やめてくださいゼノン様。その異名は若かりし頃ですよ? 今はただのおばあちゃん先生です」



確かにセレスもだいぶ歳を重ねていた。

初めてあったのが7歳くらいであり、今では70を超えている。



「ふむ。しかし息災で何よりだ。して呼ばれた理由はなんだ?」



「いえ、とても優秀な若者が2人編入試験に来たと聞きましてね。少し覗いたら保護者席に貴方の姿が見えたのです。あの2人は貴方の子供ですか?」


「うむ。私の自慢の子供だ。そして来年にはもう2人入る。贔屓はしなくて良いが少し目をかけてやってくれると助かる」



「やはりそうでしたか。美男美女が入って来たと既に噂になっていますよ。 ゼノン様、貴方には多大な恩があります。いつか返したいと思っていました。そしてようやく返せる時が今この時。ゼノン様の子供達は私が責任持って預かります」




セレスは人間であるが魔族であるゼノンは尊敬していた。

自分の師匠であり、命の恩人だ。

そんなゼノンの頼み。聞かない訳にはいかなかった。

何よりこの時をずっと心待ちにしていたのだ。



「ふっ、そんな昔の事気にする必要はない。

子供達の事、よろしく頼んだぞ」



そうしてゼノンは部屋を後にし、リリアとシンの元へ向かう。




「お父様! 校長室では何を?!」



リリアがすぐ様駆け寄ってくる。

リリアはなんでも気になるタイプだ。



「うむ。ここの校長は私の顔馴染みでな。少し話をしてきた」



「流石は父上、顔が広いのですね」



「たまたまだ。お前達も手続きは終えたのか?」



「はいっ!!! 明日から制服を着て学校へ行きます! クラスはG〜Sクラスまであるようで、私もシンもSクラスでした!」



(2人の力なら当たり前であろうな。しかし、父親ならここは褒めるべきだとメフィが言っていたか?)



ゼノンはメフィに予め、2人が試験を合格した際のやり取りを言われていたのだ。


ゼノンはそれを思い出し2人を褒める。


するとリリアはとても喜んだ。

シンはポーカーフェイスであり表情は変わらなかったが

御礼を言ってきた。

メフィの言う通りである。



(私もまだまだ父親の勉強が足りぬな。)



そこでゼノンは父親らしい事をしようと2人にご褒美として人間界のレストランへ連れて行った。


2人は人間界の食事は初めてだった様だが気に入っていた。

しかし、シリュウの料理と比べるとやはり物足りなさがある。


2人に当分贅沢出来るだけの金貨を渡しそろそろ、家に帰る事にした。



「2人とも、この件を引き受けてくれて本当に助かった。大型連休の際には家に帰ってくるのだぞ?無理だけはするな」



「はい!お父様! 今日一日見て回ったけどとても楽しめそうでした!」


「トラリーとムムがいつ来てもいいように万全の準備をしてお待ちしています」



「それではしばしのお別れだ」



こうしてリリアとシンの学校生活が始まった。







リリアとシンが王都へ行った次の日



トラリーはバリアンの元で訓練をしていた。


「良いかトラリー、魔法は強力だ。だがな魔力が無くなれば頼れるのは己の拳だけだ。そして技術だ。剣を振れ、拳を突き出せ! お前には素質がある。やれるな?」


トラリーは元気よく返事をすると筋トレやランニング、素振りを繰り返していた。


トラリーの日課は午前中にバリアンの元で体力作り

午後からはフレイの元で魔力操作等を行う。


人間はどちらかというと魔力が少ない為、剣術や武術を鍛えるものが多いのだ。




ムムにはまだ筋トレは厳しい為、レイラと聖魔法の練習をして、午後からはライム達と元気に遊び回っている。


フェンリルのレオンとミノタウルスのミノも新顔のフェニックスのイヴを連れて、魔物を狩ったりして訓練をしていた。




「皆にはやるべき事があるのに、私には何も無いな」



ゼノンは困っていた。

自分のやりたい事、やるべき事が無いのだ。

父親としてムム達に、父親らしい所を見せたいが何もすることがなかった。



「それはしょうがないわよ。私達は何百年も生きてきた。やりたい事なんてほとんどやってきたわけだしね!」



メフィの言う通りだった。

この500年で自分のやりたい事は、ほとんどやっていたのだ。

今更何かしたいとも思えなかった。

金を稼ぐ為に仕事をするというのも、金は腐るほどある為

やる必要は無い。




「そういえば、来年からトラリーとムムも学校へ行くのよね?私達はどうするの?」


唐突にメフィは聞いてきた。


「うむ。我等も人間の国へ行き、そこで皆と暮らすのが良いと思ったのだがどうだろうか?」



「いいんじゃないかしら? ただ、エリシア、フィルル辺りはのこるんじゃないかしら。シリュウはわからないけど」



「早めに聞いておいた方がいいかもしれぬな。・・・・・・何か来る。人間か?それもかなりの数だな」



二人で会話をしていると突如、嵐の予感が、、、



平和な時も束の間、またしても人間達がよからぬ事を考え、ゼノン達の元へやってきたのだ。

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