精霊王
翌日、ゼノンは一人外に出ていた。
後ろにはフレイが控えている。
「すぐに戻ってくる。それまで皆を頼んだぞ」
「かしこまりました。ゼノン様と精霊王様の帰り、楽しみにお待ちしております」
「ふっ。 待っていろ」
ゼノンは転移でその場を消え、残されたフレイはどこか寂しげな表情をしている。
すると後ろから---
「フレイ!!!」
リリアだ。
「ゼノン様は行ってしまわれたのね」
頷くフレイ。
「ゼノン様の妻候補って一体誰なのかしらねー?」
「ふふっ、本当に気になりますね・・・・・・ゼノン様・・・・・・」
2人は空を見上げゼノンの帰りを待った。
ゼノンが転移した場所は自然豊かな大地だった。
川のせせらぎの音、小鳥の歌声。
まさに楽園のような場所であった。
「あら?ゼノンじゃない! 久しぶりね」
ゼノンが振り返るとそこには金髪の長髪で雪のような白い肌をした美しい女性が立っていた。
人間とは思えないほど整った顔。
そして、スリムな体型に豊満な胸。
まさに非の打ち所のない完璧な女性だった。
「久しぶりだなメルフィーロ。息災であったか」
ゼノンとメルフィーロ。
ここに世界最高峰の美男美女が揃った。
「えぇ、貴方も元気そうね! あとメフィと呼んで頂戴!」
メルフィーロは確かに人間とは思えない美貌の持ち主であった。
なぜなら、彼女は人間ではない。
『精霊王 メルフィーロ』
それが彼女の異名であった。
しかし、今ではその名は、おとぎ話となっており誰も存在を信じていない。
何故なら、彼女が居るこの場所は異空間なのだ。
普通の者では見つけることすら出来ない。
ゼノンはその膨大な魔力で時空に穴を開けた時にたまたま、この場所を見つけていた。
つまり、ゼノン並の力が無ければこの場に来る事は不可能なのである。
「それで! 久しぶりに来たゼノンは私に何か用があって来たのでしょう?」
賢いメフィに余計な言い回しは必要ないと思い直球で尋ねる。
「メフィ、私と婚姻の契りを結び、この地から出ないか?」
いきなりの告白に固まるメフィ。
瞬きせず放心状態である。
「?・・・・・・メフィ、私と共に来い」
ゼノンはメフィに手を出した。
メフィはやっと我に返り今度は顔を真っ赤にしている。
「・・・・・・遅いわよゼノン・・・・・・私はずっと貴方を待っていたのよ?」
照れながらもゼノンのその手を掴む。
「キャッ!!!」
ゼノンは掴んだメフィの手を引っ張り、自分の胸へ抱き抱えた。
高鳴るメフィの心臓。
荒くなるその吐息。
メフィの頭はパンクしそうだった。
「ゼ、ゼノン・・・・・・?」
「メフィよ、私に好きという感情は今まで無かった。色々あり、今は人間の子供と暮らしているのだが、そこである事に気付いたのだ。妻について考えたらメフィ、お前の顔しか浮かばなかった。私は遥昔からお前の事を好いていたのかもしれぬ・・・・・・そして、今なら言える。メフィ---お前が好きだ。私の妻となり共に歩んではくれぬか?」
ゼノンの告白にただただ頷くメフィ。
愛してる相手に、こんな近距離で囁かれ、抱き着かれてはメフィも頭が回らなかった。
「・・・・・・ゼ、ゼノン、貴方を一生支え、共に歩むことを誓うわ---私も貴方が好きよ」
ゼノンとメルフィーロは婚姻の契り交わし、そのまま唇を重ねた。
2人は川辺に座り、過去の経緯を話していた。
「なるほどね、それで母親が必要になり私を尋ねてきたわけね! つまり、その子達と出会わなければ貴方は一生私の元へ来なかったのかしら?」
メフィは拗ねたのか意地の悪い顔でゼノンを問い詰める。
「遅かれ早かれお前への愛にはいつか気付いていたさ。それが今だったというだけだ。俺が愛する女はお前以外有り得ぬからな」
意地悪のつもりで言ったのに、ゼノンは本音で話して来た為、逆にメフィが顔を真っ赤にした。
「ちょっと!!! そんなに何回も言わないでよ・・・・・・恥ずかしいわよ・・・・・・」
ゼノンはメフィの肩を掴み自分の元へ寄せる。
「すまなかったなメフィ。いきなり押し掛け、
いきなり告白してしまったな」
「そんなの全然気にしないで! むしろ嬉しかったのよ。ようやく貴方と結ばれて! いきなりの子持ちになるのは予想外だったけどね!!! でも安心して! 私は精霊王であって精霊達の母でもあるの。きっと上手くやれるわ」
ゼノンは前から思っていた事がある。
メフィと一緒にいると温かい。
まるで自然そのものに包まれてるような感覚になり
居心地がいい。
精霊王だからでは無い。これがメフィの人格だからだ。
そういった事でゼノンはメフィに惹かれていた。
「ここを空けても平気なのか?」
「えぇ、大丈夫よ!私が居なくてもここの子達が自然を守る。私の子供達はとても強いのよ」
それを聞いて安心した。
こうして2人は夫婦となりゼノンの家へ共に帰るのだった。
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