お菓子作り
ゼノンの部屋にて
「ふむ。あのシンがな・・・・・・」
ゼノンはリリアやフレイからムム達への過保護ぶりを聞いていた。
「あのシンがここまで変わったのもあの子達のおかげであろう。だが、過保護過ぎるのも良くないと思うがな」
そう話すゼノンにフレイはクスッと笑っていた。
そんなフレイの様子を見ていたゼノンは首を傾げる。
「どうしたフレイ」
「いえ、どっちもどっちだなと思って」
「?」
実はムム達が森に行く時ゼノンは探知魔法を使い、ムム達の周りに危険な魔物が居ないか常に探っていたのだ。
危険な魔物がいた場合はすぐに助けに行けるようにと。
そんなゼノンがおかしくてフレイは笑っていたのだ。
「それにしても、あの2人は本当に魔法の才能が凄いですよ! 前の親は偉大な魔法使いだったのですか?」
リリアは2人の魔力量に驚いていた。
一般的な人間の大人の魔力量は100近くと言われている。
ファイヤー1発で10消費する為、10発撃てば魔力切れとなる。
トラリーは7歳にして既に100もあったのだ。
ちなみにムムは50。
7歳の子なら平均30程なのだ。
トラリーは約3倍以上あるしムムも既に超えている。
ちなみに四魔将はだいたい3〜5万ある。
ゼノンに至っては15万だ。
「いや、あの子達の親はむしろ平均以下の魔力量だった。もしかするとあの子らを回復した時に私の魔力が流れすぎたのかもしれぬな」
ムムやトラリーが怪我をした時にゼノンが回復した。
人間である二人の魔力に魔王であるゼノンの魔力が流れ込む。
それによって、2人は人間であるにも関わらず魔族の魔力になってしまったのかもしれないとゼノンは予想していた。
現に昔レイラを助けた時も回復魔法を使い、今では聖女と言われるほどになっていた。
彼女の魔力量も8千と人間にしては大きすぎる数値だったのだ。
この話を聞いた2人は納得した。
何故ならゼノンの魔力を貰ったから。
「そうなると2人の成長も楽しみですね!」
ゼノンの魔力を貰い、どこまで2人が成長するのか楽しみであった。
その頃ムムとライムはシリュウの元でお菓子作りをしていた。
シンの言葉もあって包丁は触らせて貰えなかったがシリュウのお手伝いをしている。
「ねぇねぇシリュウさん!!! これは何を作っているの?」
「なんだか僕みたいな形してるね!」
ライムは自分にそっくりなその白い塊を見つめている。
小麦粉を捏ね、丸い形を沢山作る。
「これは拙者の街でよく作ったお菓子である。後はこの丸くした物を少し平たくし、真ん中に穴を開ける。そうしたら油で揚げて砂糖をまぶせば完成である」
こんがりと焼け、甘い香りを放つその正体は、ドーナツであった。
「うわあぁーーー!!! 凄くいい匂いがするね!!! 早く食べたいねライム!!!」
「僕もお腹ぺこぺこだよ!!!早く食べたいねムム!!!」
「うむ!!! 今回はムム殿とライム殿も手伝ってくれたから最高の出来なのである!!!」
皆をシリュウの店に呼び、集まると店の中には食欲を
唆らせる香りを漂わせていた。
「なにこれッ?!!! 凄く美味そうなんだけど!!!」
「初めて見るお菓子ですね」
「なんじゃなんじゃ?! ムムが作ったのか?!
ご褒美に爺ちゃんが頭を撫でてやろう!」
「ムム、怪我はしなかったか?」
四魔将がそれぞれ感想を述べ、それに続いて他の者たちも寄ってきた。
「とてもいい香りがしますね」
「鍛治仕事の後に甘い物は最高だよ!!!」
「ムム、ライム、凄いよ!!! 美味しそうだね!!!」
「よく出来ているぞムムにライム。シリュウもムムに付き合ってくれて助かったぞ」
そして、ゼノンも褒める事を忘れなかった。
「なんのなんの! ムム殿とライム殿が手伝ってくれたおかげで拙者も楽しく料理が出来たのである」
「それじゃあ、いただきます!!!」
「「いただきまーす!!!」」
ムムの号令で皆もムムに続き、合掌した。
ムムは大満足だった。
みんなに褒められ美味しそうに食べてくれ、嬉しかった。
そんな、ムムの嬉しそうな顔を見てゼノンも思わず口元が緩む。
(ふっ。人間の子供は好奇心旺盛でなんでも挑戦するのだな。色々な事を学ばせる。これが子育ての一環なのかもしれぬな)
ゼノンは少しずつ子供の扱いについて学んでいた。
そして自分自身もムムと共に成長している。
ゼノンはそんな気がしたのだった。
ただし、足りないモノも感じている。
子供に絶対なくてはならない存在、、、
(母親か・・・・・・。)
そう。母親である。
特にムムには母親の温もりが必要だと感じていた。
いや、トラリーもそうだ。
気丈に振舞ってはいるが、まだ子供。
リリアが居るとはいえ彼女は母親にはなれない。
となると、母親を探す必要があるのかもしれない。
引いては自身も妻を娶る時が来たのかもしれない。
ゼノンは一人思いふけるのであった。
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