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ゼノンの過去

魔界全ての魔王を倒した四魔将は、ジグマ城へと帰還した。



「皆ご苦労様でした。怪我もなく無事で何よりです」



代表としてフレイが皆に労いの言葉を投げかける。



「あの様な雑魚共ではかすり傷も追わぬがな」



「確かにゼノン様の特訓に比べると、本当にしょうもなかったわね! それよりもシンの肩に居るそれって・・・・・・」



そこでリリアはシンの肩に乗る鳥に目がいく。



「ん? フェニックスだ。可愛いだろ」



真顔でそう応えるシン。


「また珍しい生き物を拾ってきたわね」



「確かにフェニックスなんてまず、お目にかかれませんからね」



そう。フェニックスは幻獣種と呼ばれフェンリルの様に世界には数える程しか生息していないのだ。


一生かかっても見る事が叶わないともされている。



「ほう? そいつは強くなるのか?! 大きくなったら戦ってみたいものだ!!!」



バリアンに至っては珍しいとかは関係なく、ただ強い者を求めているといった感じであった。


だが、生き物好きのシンからしたら迷惑な事であり、たとえ仲間であろうとその行いを許すことは出来ない。



「この子を傷付けることは許さないぞ」



フェニックスの為なら戦うぞと言わんばかりに殺気を放つ。

そして、バリアンも不敵な笑みを浮かべている。


このままでは一触即発であり、危険と感じたリリアは仲裁する為、話題を変える。



「まぁまぁ! それよりもフレイ、宰相との話はどうなったの?!」



それにフレイも気がついた様子でリリアに答える。



「え、えぇ、めぼしい敵は粗方倒しましたので後はこの城の戦力でどうにかなりそうですとの事です」



「それじゃあ皆で!!!」



「はい、ゼノン様の元へ行きましょう!」



「ガッハッハッ!!! 人間界でゆっくり暮らすのもいいかもしれぬな!!!」


「俺はこの子と一緒に居られるならどこでもいい」



シンはというとフェニックスにゾッコンである。

普段クールな彼であるが、生き物を前にすると人格が変わるようだ。



「それでは準備が出来次第向かいましょう」




こうして四魔将もゼノンの元へ向かう準備が整ったのだった。






時は遡り、リリアが魔界へ戻った頃。



「ゼノン様、魔界の方へ戻らなくてもよろしいのですか?!」



魔王達が同盟を組んで攻めてきている事はエリシア達の耳にも入っていた。



「うむ。何も問題ない。魔王程度に四魔将が遅れをとること等、万に一つない」



ゼノンは何一つ心配することは無いとエリシアを宥めた。



「四魔将様達はそれほどにお強いのですか? 話には聞いた事があるのですが見たことなくて・・・・・・」



ゼノン「うむ。四魔将一人で一国は滅ぼせるであろうな。そしてこの世で唯一私に傷を付けることが出来るとしたら三大恐慌か四魔将くらいであろう」



三大恐慌と並ぶ程とは思いも知らず、皆が驚愕する。



「なんと?! という事はゼノン様ならその四魔将相手に傷を追わずに勝てるのですか?!」



シリュウは思わずゼノンの力を訊ねる。



「何度か特訓をしていたが私が傷を負ったことは無いな」



「さ、流石としか言い様がありませんね」



それにはレイラも驚きであり何も言えなかった。




「ゼノン様が暴虐の魔王じゃなくて良かったと心の底から思いました・・・・・・」



エリシアはゼノンの今の人格にホッとする。

もし、ゼノンが暴挙の限りを尽くしていたらこの世界はとっくに滅んでいたのだから。



「それでも若い頃は戦いに飢えていたがな・・・・・・」



「えっ?!!! ゼノン様の若い頃のお話聞きたい!!!」



「僕も聞きたいです!!! 何せ本にも若い頃のゼノン様の話は載っていませんからね!!!」



ゼノンの幼少期ともなると子供達も気になる様子。

そして、当然大人達も気になっていた。



「私の話等対して面白くも無いぞ?」


しかし皆の目が今か今かと待っていた。



(むっ?・・・・・・やれやれ)

「良いだろう。では少し話そう」


こうしてゼノンの過去の話が始まった。





ゼノンはごく普通の魔族の夫婦の間に産まれた。

しかし、ゼノンは産まれてすぐ膨大な魔力を持っていた。

一般的な成人魔族の持つ魔力が300程に対してゼノンは幼少期で既に5000あった。

そして成長すると共にどんどんと増え、今では15万程ある。

そんなゼノンであったが好戦的な魔族にしては、ゼノンは内気な性格であった。

戦いを好まずただ家族と平凡に過ごしていたのだ。


しかし、ゼノンが幼い頃の魔王達は残忍な者達ばかりで魔界全土で戦争は起きていた。


そしてその戦火はゼノンの住む地域にも広がった。


父親と母親も必死にゼノンを守ろうとしたが、一般魔族である彼等が敵うわけもなかった。

何せよりにもよって魔王本人がこの村を襲ってきたのだ。


ゼノンは父親と母親の遺体の前に跪く。

両親の死。死んだ人間を見るのは初めてであった。


しかし、血だらけの両親を見たゼノンは直ぐに理解する。

二人は死んでしまったのだと。

ゼノンは涙を流し絶望した。


魔王がゼノンも殺そうとするがゼノンは創造魔法を開花させ逆に魔王を一撃の下に殺してみせたのだ。



魔族は縦社会であり強い者の下に弱い者が付く。


魔王の配下達は皆がゼノンの配下になった。

この時ゼノンは僅か8歳。


ゼノンはそこから魔界にいた5人の魔王全てを殺した。


両親の死を忘れる為、がむしゃらに戦い殺し続けた。


しかし、魔王は次々に誕生する。

ゼノンは約500年間もの間、戦いに明け暮れる。


四魔将の内、リリアを除く他の3人は古参であり元々魔王となっていたがゼノンに敗れそのまま配下となった。


リリアは産まれてまだ間もなかったが炎の天性を持っており四魔将まですぐに登り詰めた。


そしてつい数ヶ月前にとうとうゼノンは疲れてしまったのだ。

何百年にも渡る戦乱の世で生き抜き、心は乾いていた。


戦う事しか出来ず恋愛すらまともにしてこなかったゼノン。


恋愛がしたいとは思わなかったが、戦争の事など考えずゆっくり過ごしたいと思っていた。


そこでライムと共に洞窟に来たのであった。

これが簡潔にまとめたゼノンの過去であった。




「つまらぬ話であろう」



しかしゼノンが皆の顔を見ると全員が号泣していた。



「ひっく・・・・・・ゼノン様はお若い頃から一人で戦っていたのですね・・・・・・」



「何千年も戦い続けて・・・・・・」



「それでこの力・・・・・・感服致しました」


「えぇーーーん!!!」



そんな時ムムがゼノンの頭を撫でてきた。



「ゼノン様・・・・・・辛かった? 今はムム達が居るからね・・・・・・」


泣きながらゼノンの頭を撫でるムム。


ゼノンは初めての体験に思わず笑をこぼした。



「ふっ、そうだなムム。今はお前達が家族だ」


「ゼ、ゼノン様が笑った?!!!」


初めて見るゼノンの笑顔。

いや、真顔以外の表情。


皆が驚く中、ゼノンの心は穏やかなものを感じていた。


そう。ゼノンは家族の温もりを感じるのであった。

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