神速のシン
南の地
シンが立っている場所は森であった。
魔界唯一の森林地帯。
ここを統べていたのは蜘蛛族の魔王 『シスル』
上半身は人間であり、下半身が蜘蛛となっている。
「アハハハハッ!!! まさかあんた一人でアタイ達と戦うつもりじゃないでしょうね?! アンタ死んだよ?」
シスルの後ろには300人の蜘蛛族が居る。
そして皆が不気味な笑みを浮かべていた。
常にポーカーフェイスで寡黙なシンはただシスルを見ていた。いやシスルの右手にある物を見ていた。
「おや? これが気になるのかい? こいつァこの森に迷い込んだ鳥でね、こうやって蜘蛛の糸でグルグルににして後でゆっくり頂くのさ! 生きたまま食べるのが一番美味いからねー! ヒッヒッヒッ!!!」
シスルに捕まっている鳥は綺麗な赤と黄色の毛色をした鳥であった。顔だけ出ており、苦悶の表情を浮かべている。
「アンタも同じようにしてじっくり食べてやるからね!」
シスルは口の涎を拭った。
そんなシンはというと冷たい目でシスルを睨みつけている。
目で殺してしまうのではないかと思うほど冷たい視線だ。
「なるほどな、俺はこう見えて動物が好きだ。俺はキレている。
早くその手を離せ。さも無くば斬り落とすぞ」
シンが脅すもシスルは全く気にすること無く笑っている。
「ヒッヒッヒッ!!! この距離で斬り落とすだって?! それじゃあ、動物好きのアンタに私の食事を見せてあげるよ!!! 美味そうだ!!! いただきま・・・・・・す?! ぎ、ぎゃーーーーッ!!!!!!」
食べようとしたその時、シスルの手は斬り落とされていた。
一瞬の出来事で何が起きたのか理解できない。
そしてシスルの後ろには糸に包まれた鳥を持つシンの姿があった。
「て、てめぇッ!!! な、何をしたッ?!!! あ、アタイの手をよくも!!!!!!」
シスルは狂乱していた。
何が起きたのかわからず、そして手を斬り落とされた。
訳がわからず錯乱している。
「何をしただと?普通に走って普通に斬っただけだ。貴様は何を寝ぼけた事を言っている。 一つ言い忘れていた。私の名はシン。四魔将が一人、神速のシンだ。死ね」
「神速のシンだとッ?!!!」
四魔将の名はもちろん全員知っていた。
しかし、シンの顔を見た事がなかったのだ。
それに、シスルは曲がりにも魔王である。
魔王たる自分が四魔将如きに遅れをとるとは思いもしなかった。
しかし今、目の前で起きてる事は・・・・・・虐殺であった。
目にも追えぬ速さで森を駆け巡り、蜘蛛族の首を斬り落とし続けているシン。
「な、なんだよこれ・・・・・・魔王以上じゃないか・・・・・・こんな化け物がいるなんて・・・・・・クソっ」
それがシスルの最後の言葉であった。
シスルは自分が斬られたことすら気付かずに死んだ。
痛みを感じずに死ねたのがせめてもの救いだろう。
蜘蛛族全滅。
文字通り、生き残りは無し。
300人全員の首が斬り落とされたのだ。
シンは蜘蛛族の亡骸の中心で立っていた。
そして手に持っている鳥の糸を解く。
シンはその鳥を見て僅かに目を見開いた。
「お前は・・・・・・フェニックスか?」
珍しい毛色だとは思っていたが、まさかフェニックスだとは思いもしなかった。
「なるほど、まだ幼体であったか。行く宛てがないなら、俺と共に来るか?」
「キュインッ!!!」
フェニックスはそう鳴くと、シンに身を委ねた。
「ふっ。行くか」
人前では笑顔を絶対に見せないシン。
こうして、シンも魔王の一人を瞬殺した。
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